12月13日、有明アリーナでバトラーと統一戦
プロボクシングのWBA・WBC・IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(29=大橋)が13日、横浜市内で会見し、WBO王者ポール・バトラー(33=イギリス)と12月13日に東京・有明アリーナで4団体統一戦を行うことを発表した。WBAスーパー王座は8度目、IBF王座は6度目、WBC王座は初めての防衛戦となる。
4団体統一王者は過去8人おり、井上が勝てば史上9人目、アジア人では初の快挙。井上は「日本ボクシング界の歴史を変えていきたい。そのために残り2カ月やれることをやり、100パーセントの状態でリングに上がりたい」と引き締まった表情で話した。
バトラーはイギリス出身で、11月で34歳になる。2014年にスチュアート・ホールを判定で下してIBFバンタム級王座を獲得。すぐに王座返上して1階級下のスーパーフライ級で2階級制覇を狙ったが失敗し、バンタム級に復帰した。2018年には、井上が2回で倒したエマヌエル・ロドリゲスに判定負け。2022年4月にジョナス・スルタンに判定勝ちしてWBOバンタム級王座に就いた。
戦績は34勝(15KO)2敗。オーソドックスのボクサータイプでパンチ力はそれほどない。井上は「バトラーはまとまった選手で穴がない。少しずつ弱らせていき、仕留めるイメージを持っている」と中盤あたりでKOするイメージができていることを示唆した。
田中恒成とのスパーリングも予定
5階級制覇王者のノニト・ドネアをたった2回でノックアウトした井上にとって、バトラーは幾分、格下の相手だ。ただ、実力差のある相手がディフェンスにウェイトを置いた戦い方をすれば手こずることもある。
昨年12月の試合ではアラン・ディパエンのタフネスに手を焼き、8回までラウンドを重ねた。心身ともに最高のコンディションで上がれるかどうか、井上の場合は相手より自分との戦いだろう。
そういう意味では、勝てば手に入る4本目のベルトは最高のニンジンだ。WBA王者だったジェイミー・マクドネルを1回で倒して、初めてバンタム級のタイトルを奪ったのが2018年5月。あれから4年以上が経過した。
コロナ禍で思ったようにマッチメイクできない状況もあり、予想以上に時間がかかったが、ようやく4団体統一が手の届くところまで来たのだ。「過去最大のモチベーションで挑める。自分自身に期待して12月13日に向かいたい」と高ぶる胸の内を隠さない。
すでにスパーリングを開始しており、今後はフィリピンからスパーリングパートナーを呼ぶ予定。今月末には走り込みキャンプに入り、その後はスーパーフライ級で4階級制覇を狙う田中恒成とのスパーリングも予定されている。井上は「あと2カ月でやれることは何かを考えるのが楽しみ」と自らのスキルアップに取り組めることに喜びを感じている様子だった。
「dTV」と「ひかりTV」で生配信
会見にはNTTドコモの前田義晃副社長も出席し、今回の試合を映像配信サービス「dTV」と「ひかりTV」で生配信すると発表した。近年のボクシング中継はテレビではなく、動画配信が増えており、前回のドネア戦はAmazonプライム・ビデオで配信初日として史上1位の視聴数を記録している。
昨年12月のディパエン戦は、ひかりTVでペイ・パー・ビュー(PPV)方式(3960円)にて配信されたが、今回は月額550円のサブスク会員なら視聴可能。前田副社長は「井上選手は日本を代表するアスリート。少しでも多くの方にご覧いただきたい。ご一緒させていただくことで事業としての成長にもつながる」と意図を説明した。
東京五輪のバレーボール会場として使用された有明アリーナでプロボクシングの興行が開催されるのは初めてだが、360度カメラなどで演出も考えているという。所属ジムの大橋秀行会長も「PPVという選択肢もあったが、幅広く観ていただくためにサブスクで観やすくなった」と歓迎の意向を示した。
日本にとどまらず、世界が注目する4団体統一戦。井上は「バンタム級での最終章であり、スーパーバンタム級へのスタート。ゴールではなくあくまで通過点だと思っている」と言い切った。4団体統一の次は4階級制覇。日本が誇るスーパースターの物語はまだまだ終わらない。
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