7月13日、ニエテスと5度目の防衛戦
プロボクシングのWBO(世界ボクシング機構)スーパーフライ級王者・井岡一翔(33=志成)が7月13日に、東京・大田区総合体育館で同級1位ドニー・ニエテス(40=フィリピン)と5度目の防衛戦に臨む。
ニエテスは2007年に奪ったWBOミニマム級王座を皮切りに、WBOライトフライ級、IBF(国際ボクシング連盟)フライ級、WBOスーパーフライ級と4階級制覇した元王者。2018年の大晦日にマカオで井岡と戦ったWBOスーパーフライ級王座決定戦を2-1の判定で制し、すぐに王座返上。空位になった王座決定戦でアストン・パリクテ(フィリピン)を破った井岡が、ニエテスの後を追うように4階級制覇した経緯がある。
戦績は43勝(23KO)1敗6分けで、唯一の敗戦は最初に世界タイトルを獲得する前の2004年。40歳でピークは過ぎており、スピードはないが、約18年間無敗の経験豊富な右ボクサーだ。
井岡がかねてから希望していたIBF同級王者ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)との統一戦は新型コロナウイルスの感染拡大で流れ、アンカハスは今年2月にフェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)に判定負けして無冠となった。統一戦へのレールを敷き直し、早期に実現するためにはニエテスにKOでリベンジして強さをアピールする必要がある。
パウンド・フォー・パウンドから名前が消えた井岡
2020年の大晦日に無敗の田中恒成を倒して評価を上げた井岡も33歳。田中戦直後には、世界で最も権威があるとされるアメリカのボクシング誌「ザ・リング」のパウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキングで10位にランクされたが、2021年9月のフランシスコ・ロドリゲス・ジュニア(メキシコ)、同年大晦日の福永亮次との防衛戦はいずれも判定決着で、PFPからも名前が消えた。
最近は村田諒太がゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)と激闘を繰り広げ、井上尚弥はバンタム級で3団体統一に成功。PFPランキングも1位にアップし、「世界最強」と認められた。盛り上がるボクシング界の中で、日本人唯一の4階級王者は「蚊帳の外」だった。
井岡と井上の対戦を期待する声もあり、井上が対戦を望む気持ちを匂わせたこともあったが、井岡は興味を示していない。今回の試合で存在感を示すには、単なる勝利ではなく内容が求められることは明らかだ。
KOか明確な判定勝ちがノルマ
4階級制覇したボクサー同士の一戦。前回はジャッジ一人が井岡を支持したように、見方の分かれる技術戦だった。ニエテスは50戦のキャリアで6度も引き分けていることからも分かる通り微妙な判定が多く「負けにくい」ボクサーだ。
相手のペースにつき合うと前回と同じような展開になる可能性も十分あり、微妙な判定で井岡が勝ったとしてもファンは納得しないだろう。ノックアウト、もしくはダウンを奪って明確な判定勝ちがノルマとなる。
武尊との「THE MATCH」を制したキックボクシングの那須川天心がボクシング転向を表明し、最近のボクシング界は話題に事欠かない。日本人最多の世界戦19勝を誇る井岡が、もう一度ファンを振り向かせるような熱いファイトを見せられれば統一戦への気運も盛り上がるはずだ。
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