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井岡一翔の防衛濃厚、ボクシング日本人対決で番狂わせが少ない理由

井岡一翔,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

統一戦中止で代役挑戦者・福永亮次とV4戦

プロボクシングのWBO(世界ボクシング機構)スーパーフライ級王者・井岡一翔(32=志成)が31日、東京・大田区総合体育館で同級6位・福永亮次(角海老宝石)と4度目の防衛戦に臨む。

井岡はかねてから希望していたIBF王者ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)との統一戦が一度は決まりながら、新型コロナウイルスの変異種オミクロン株の感染拡大にともない外国人の新規入国が原則禁止となったため中止。急遽、代役挑戦者に浮上した福永との防衛戦が決まった。

日本人男子ボクサーで唯一の4階級制覇を達成している井岡は、これが10度目の大晦日のリング。勝てば、あの井上尚弥をも上回る世界戦19勝目で、自身が持つ歴代1位の記録を更新することになる。アマチュア時代を含め、長いキャリアを誇る安定王者にとって、今回は通過点に過ぎない。

35歳で巡ってきた世界初挑戦に燃える福永

期せずして大チャンスが転がり込んできた福永はサウスポーのボクサーファイター。プロデビューは27歳になる直前と遅く、しかも判定負けだった。

そこからジムを移籍しながら地道にキャリアを積み、日本、東洋太平洋、WBOアジアパシフィックのスーパーフライ級のベルトを持つ3冠王者に就いた(いずれも返上)。戦績は15勝(14KO)4敗とKO率は高いが、一発の破壊力というよりは連打で倒すパンチャーだ。その風貌と好戦的なサウスポースタイルから「リトル・パッキャオ」の異名を持つ。

すでに35歳だけに、勝っても負けても最初で最後の世界挑戦となる可能性が高い。アンカハス戦が流れた井岡に比べると、福永の方がモチベーションは高いだろう。大工の仕事が立て込んでいたが、取引先にも理解を得てトレーニングに集中。代打で大晦日に逆転ホームランを放てば、日本男子最年長の世界王座初奪取という劇的ドラマとなる。

ただ、テクニックでは井岡が一枚も二枚も上。福永はディフェンスに難があり、井岡のショートパンチを浴びて中盤以降にレフェリーストップとなる展開が予想される。大番狂わせが起こる可能性はあるのだろうか。

井岡はモチベーションを保てるか

日本人同士の世界戦は王者が順当勝ちすることが多い。お互いのホームリングで長距離移動もなく、食事や気候などの不安もない。互いにベストコンディションで戦えるため、実力差がそのまま結果につながるのだ。

数少ない番狂わせで思い起こされるのは、2004年6月28日に行われたWBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ。当時8度の防衛に成功していた安定王者・徳山昌守が川嶋勝重にまさかの1回TKO負けを喫した。

徳山は前年に川嶋に判定勝ちで防衛しており、2度目の対戦だった。一度勝った相手に油断があったのか、あれよあれよという間にダウンを奪われ、わずか107秒で王座陥落した。

井岡にとって最も怖いのは相手ではなく、自分ではないか。待望のアンカハス戦が流れて気持ちを入れ直すのは、簡単なようで難しい。井上尚弥は楽勝と見られていたアラン・ディパエンを8回まで倒し切れなかった要因として、相手のタフネスとともに格下相手にモチベーションを上げる難しさを強調していた。

相手が強ければ強いほど自然と気持ちは引き締まるが、その逆もまた然りだ。ボクシングに「絶対」がないことは歴史が証明している。裏を返せば、心身ともに万全の状態でリングに上がりさえすれば、井岡が望むビッグマッチに駒を進めることは難しくないだろう。

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