「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

ボクシング田中亮明が銅メダル「恒成の兄」から堂々のメダリストへ

2021 8/6 11:00SPAIA編集部
ボディブローをヒットする田中亮明,Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

男子フライ級では1960年ローマ五輪の田辺清以来61年ぶり

東京五輪ボクシング男子フライ級の田中亮明(27)が銅メダルを獲得した。4日の準決勝で2019年世界選手権5位のカルロ・パアラム(フィリピン)に0-5の判定負け。決勝進出は逃したものの、女子フェザー級で金メダルに輝いた入江聖奈、女子フライ級で銅メダルを獲得した並木月海に続く今大会3人目、男子フライ級では1960年ローマ五輪の田辺清以来61年ぶりのメダル獲得となった。

サウスポースタイルの田中は、足を使うパアラムを追って積極的にパンチを出しながら前進。しかし、クリーンヒットは少なく、明確なポイントを奪えないまま3ラウンドを消化した。勝てば銀メダル以上が確定したが、惜しくも準決勝敗退となった。

とはいえ、十分に胸を張れる銅メダルだ。初戦でリオ五輪のフライ級銀メダリスト、ジョエル・フィノル(ベネズエラ)を撃破。2回戦でリオ五輪同級銅メダリストの胡建関(中国)、準々決勝ではリオ五輪ライトフライ級銀メダリストのユベルヘン・マルティネス(コロンビア)と実力者を相次いで破り、準決勝まで勝ち上がった。

高校時代は井上尚弥に4戦全敗

これまで田中亮明に常について回ったのが、弟・田中恒成の存在だ。2歳下の恒成は亮明と同じ中京高校時代にインターハイ、国体など4冠に輝きプロ転向。国内最速記録のプロ5戦目で世界ミニマム級王座を奪取し、その後も無敗のままフライ級まで3階級を制覇した。

昨年大晦日に4階級制覇を狙って世界スーパーフライ級王者の井岡一翔に挑戦したが、8回TKO負け。それでもスピード満点のパンチで見せ場を作り、堂々の戦いぶりで名を上げた。

ボクシングのエリート街道を突き進む弟に対して、亮明はアマチュアを貫いた。高校時代は後にプロの世界王者となる井上尚弥と4度戦い、全て敗北。駒澤大学に進んでからも国体や全日本選手権を制するなど実績を上げたが、リオ五輪出場は逃した。

それでも諦めることなく、地道なトレーニングを継続。長くアマチュアで戦ううち、いつの間にか収めた白星は100を超えた。

ボクシング史に新たな1ページ、弟・恒成も祝福

ようやく迎えた大舞台。積み重ねた努力と味わってきた悔しさを一発一発のパンチに込めた。その姿を見てきたからこそ周囲も賛辞を惜しまない。

東京五輪に向けて兄のサポートをしてきた恒成は、自身のツイッターで「喜びも、感動も、悔しさも、勝ちも、負けも、カッコ良すぎる戦いの数々も、応援した人達の想いも、色んなモノが、想いが詰まっている、応援してる僕たちにとって、田中亮明の『たった一つの最高の銅メダル』です。感動をありがとう」と兄の快挙を喜んだ。

2012年ロンドン五輪バンタム級銅メダリストの清水聡も「田中亮明選手銅メダルおめでとう!!大会通してナイスファイトだった!試合前の合宿から調整から長期間、大変だったと思います。お疲れ様でした!」とツイート。

今大会の男子ライト級に出場し、初戦突破しながらケガのため棄権した成松大介も「亮明勝つことはできなかったけど、気合い入ってて良い試合だった。銅メダル獲得!!相手は打ち終わり狙うのが非常に上手くて強かった。試合お疲れ様!」と我が事のように喜んだ。

誰もが祝福する銅メダル。そこに至る道のりが険しかったからこそ、その喜びも大きい。「田中恒成の兄」ではなく、田中亮明が一人のボクサーとして、ボクシング史に新たな歴史を刻んだ。

【関連記事】
入江聖奈が金メダル!これまで日本ボクシングのメダルが少なかった理由
東京五輪ボクシングで日本のメダルラッシュなるか?地道なジュニア育成で競技力底上げ
ボクシングのオリンピック日本人メダリスト一覧、注目の3選手も紹介