東京五輪ボクシング日本代表は全選手が初戦突破
東京オリンピックのボクシング競技が7月24日、東京都墨田区の両国国技館にて始まった。今大会は男子4選手、女子2選手の計6選手が日本代表として出場している。
7月24日の初戦では、女子フェザー級代表の入江聖奈がヤミレト・ソロサルノ(エルサルバドル)に5―0のフルマークで圧勝し、日本人女子選手のオリンピック初勝利を掴み取ったほか、男子ウェルター級代表の岡沢セオンも過去に敗れた経験のあるクリシャン・ビカス(インド)に5―0で判定勝ちし2回戦に進出した。
また、25日には女子フライ級の並木月海がキャセリン・ナンジリ(ウガンダ)に5―0、男子ライト級の成松大介もフィストン・ムバヤムルンバ(コンゴ)に5―0の判定勝ち(成松はケガのため2回戦を棄権)。
さらに26日にはプロボクシングで3階級制覇した田中恒成の兄で、男子フライ級の田中亮明がリオデジャネイロオリンピック銀メダリストのヨエル・フィノルリバス(ベネズエラ)に5―0の判定勝ち、ミドル級の森脇唯人もサイードシャヒン・ムーサビ(イラン)に3―2の判定勝ちと全6選手が初戦を突破した。
好調なスタートダッシュを切ったボクシング日本代表には、今後の更なる活躍とメダル獲得に期待がかかる。今大会を迎えるにあたり、これまでに日本国内ではボクシング力向上のために様々な取り組みがなされてきた。
ジュニア世代育成による選手層の拡大、底上げ
一昔前の国内アマチュアボクシング競技は、高校生から公式戦に参加することが一般的だった。しかし、近年はジュニア世代(中学生以下)の育成のために様々な全国大会が開催されるようになったことも、国内選手層の底上げにつながっている。
2008年からは、日本プロボクシング協会がジュニア世代の育成を目的に全国U-15ジュニアボクシング大会(現ジュニア・チャンピオンズリーグ全国大会)を開催している。また、2012年からは日本ボクシング連盟も全日本アンダージュニアボクシング大会を開催しており、プロ・アマ競技団体問わずジュニア世代からの育成の場が設けられてきた。
ジュニア世代を対象とした大会からは、現WBAスーパー&IBF世界バンタム級王者・井上尚弥やアマチュアボクサーとして世界ユース選手権(17歳18歳対象の世界選手権)で金メダルを獲得した堤兄弟(堤駿人・堤麗斗)らを輩出しており、ジュニア大会を経験してきた選手の活躍も著しい。
このようなジュニア世代の全国大会開催により、国内選手層が底上げされ、一段と国内のボクシング競技力が高まっているのだ。
自国開催による「ホームアドバンテージ」も後押し
また、今大会が東京で開催されている点も日本選手活躍の追い風となるだろう。スポーツでは、しばしばアウェイよりもホームタウンで競技を行う方が有利とする「ホームアドバンテージ」が指摘されている。
自国開催の大会は、他国への移動による心身の疲れや生活環境の違いによるストレスを受けることなく、慣れた場所での競技実施ができるためパフォーマンスを落とすことなく競技に取り組める。
事実、過去3大会のオリンピックボクシング競技(2008年北京、2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロ)においても、開催国は1つ以上の金メダル獲得を果たしている。ちなみに前回1964年東京オリンピックではバンタム級の桜井孝雄が金メダルに輝いた。
これから先、更なる強敵との戦いがボクシング日本代表選手を待ち受ける。これまでの国内選手強化に加え、オリンピックを自国で迎えられる地の利も日本代表選手の活躍を大きく後押しするはずだ。今後のボクシング日本代表選手の活躍から目が離せない。
《ライタープロフィール》
近藤広貴
高校時代にボクシングを始め、全国高校総体3位、東農大時代に全日本選手権3位などの成績を残す。競技引退後は早稲田大学大学院にてスポーツ科学を学ぶ。現在は母校の教員としてボクシング部の指導やスポーツに関する研究を行う傍ら、執筆活動を行っている。
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