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入江聖奈が金メダル!これまで日本ボクシングのメダルが少なかった理由

2021 8/4 06:00SPAIA編集部
入江聖奈,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

桜井孝雄、村田諒太に続く3人目、女子では初の快挙

東京五輪ボクシングの女子フェザー級に出場した入江聖奈(日体大)が金メダルを獲得した。

3日の決勝では2019年世界選手権で優勝したネスティー・ペテシオ(フィリピン)と対戦。フットワークを使いながら速い左ジャブとカウンターを効果的に当ててポイントを奪い、5-0の判定勝ちを収めた。

日本人選手としては1964年東京五輪男子バンタム級の桜井孝雄、2012年ロンドン五輪男子ミドル級の村田諒太に続く3人目。ロンドン五輪から正式種目に採用された女子では初の快挙となった。

鳥取県出身の入江は、小学生時代にボクシング漫画「がんばれ元気」を読んでボクシングのキャリアをスタート。2018年の世界ユース選手権で銅メダルを獲得し、翌2019年の世界選手権では準々決勝に進出していた。

判定が告げられた瞬間、跳び上がって喜び、涙ぐんだ入江は、自身のツイッターで「金メダル獲れました。3ラウンド目から記憶がなくて、今でも信じられません。今大会のために本当に沢山の方々にご協力していただきました。一般の方々にも交通規制などでご迷惑をおかけしたと思います。こんなにも幸せな気持ちを味わえたのは、皆様のおかげです。本当にありがとうございました」と書き込んだ。

プロの世界王者・高山勝成でも東京五輪出場できず

日本のボクシング界はプロの人気に比べると、アマチュアが注目されることは少なかった。金メダルに輝いた桜井や村田だけでなく、1960年ローマ五輪のフライ級で銅メダルを獲得した田辺清や1968年メキシコ五輪のバンタム級で銅メダルの森岡栄治、2012年ロンドン五輪バンタム級銅メダルの清水聡らメダリスト全員が、その後プロに転向している。

他のスポーツならアマチュアが、より高いレベルのプロを目指すのは自然な流れかも知れないが、ボクシングの場合、プロ「転向」と表現するように少しニュアンスが違う。3分3ラウンドで軽いパンチでもポイントになるアマチュアと、世界戦なら12ラウンド戦い、観客を喜ばせるノックアウトが求められるプロでは異なる部分が多い。

実際、プロの4団体で世界ミニマム級王者となった高山勝成が、今回の東京五輪出場を目指してアマチュアの試合に出場したが、国内予選で敗退。プロの世界王者でも五輪でメダル獲得どころか、出場することさえできなかった。

高山のような打たれても打ち返すスタイルのボクサーは、3ラウンドしかないアマチュアでは本領を発揮する前に試合が終わってしまうのだ。同じボクシングとはいえ、それくらいアマチュアとプロでは違いがある。

並木月海と田中亮明もメダル確定

日本の誇る世界バンタム級王者・井上尚弥も高校時代にインターハイや国体などアマチュア7冠に輝いたが、2012年ロンドン五輪の予選で敗れると、あっさりプロ転向した。

実力のあるボクサーは五輪でのメダルに固執せず、限られた現役生活で大金を稼げる可能性のあるプロに転向する例が多い。脳や体へのダメージを考えると長く続けることが難しいスポーツである点も、プロ転向を急がせる理由のひとつかも知れない。

裏を返せば、それだけ五輪のメダルには価値がある。今大会では女子フライ級の並木月海(自衛隊体育学校)も準決勝進出を決めており、銅メダル以上が確定。男子フライ級の田中亮明(中京高校教諭)も同じく準決勝進出して銅メダル以上を決めている。

27歳で五輪初出場となった田中は、プロで3階級制覇した田中恒成の兄。弟は昨年の大晦日に4階級制覇を狙って井岡一翔と激闘を繰り広げた末にKO負けし、真正面から打ち合った潔い戦いぶりで男を上げたが、兄はアマチュアひと筋でトレーニングを重ね、メダルをつかむところまで来た。

東京五輪には男子4人、女子2人の6選手が出場し、そのうち3選手がメダル獲得。その背景には、中学生以下のジュニア育成目的の大会を開くなど、ボクシング界をあげた地道な取り組みがある。これまで日の当たらなかったアマチュアボクシング界が、空前の活況を呈している。

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