「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

ボクシング五輪存続で金メダルを期待される「アマのモンスター」

2019 6/2 07:00田村崇仁
ロンドン五輪で金メダルを獲得した村田諒太Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

「選手ファースト」の救済案

五輪存続か、除外か―。

古代五輪で紀元前7世紀から実施され、近代五輪では1904年の第3回セントルイス大会で初採用となった伝統競技のボクシングは、2020年東京五輪でも実施競技として存続することが決まった。

国際オリンピック委員会(IOC)が5月22日の理事会で「選手ファースト」の救済案を固め、組織運営や多額の負債がある財政、レフェリーに問題を抱えている統括団体の国際ボクシング協会(AIBA)には、IOC承認団体の資格停止処分を科す見通しだ。6月の総会で正式承認される。

東京五輪の33競技で唯一対象外となっていたチケットの抽選申し込みに向けても、今後、価格や販売方法を含めて大会組織委員会と急ピッチで調整に入る。

発端は審判員らの不正疑惑

そもそもなぜ、ボクシングはこれほど問題が大きくなったのか。国内でもボクシングは昨年、日本連盟の山根明前会長が助成金の不正流用や審判問題、過去の反社会的勢力との交際などが発覚して大騒動になった。

国際統括団体のAIBAに関する問題は、2016年リオデジャネイロ五輪まで事態はさかのぼる。五輪期間中、複数のレフェリーや採点担当のジャッジが必要な水準にないとして大会から排除される事態に発展したのだ。フランスの報道ではAIBA内部の調査報告書やメールから、フランス人の事務局長(当時)や審判員に不正の疑いを示す内容が見つかった。フランス選手が不正判定で恩恵を受けた可能性も出ている。

事態を重くみたIOCは財政やガバナンス(組織統治)の透明性に問題があるとして、AIBAに分配金を停止したり、資格停止の可能性を突きつけたりと度重なる警告を発信。抜本的な改革を求めてきたが、AIBAは昨年11月、米財務省から「麻薬売買に関わる犯罪者」と指摘されるラヒモフ氏(ウズベキスタン)を新会長に選出した。

今年3月にラヒモフ会長が退任を表明し、会長代行にムスタサン副会長(モロッコ)を選出したが、調査の結果、不信感はまだ完全にぬぐえず、不正の疑惑がある審判や採点の問題でもIOCが満足できる抜本的な改革には至らなかった。

AIBAに代わり特別チームで準備

AIBAの改革を検証した調査委員会の最終報告を受け、IOCは「選手救済」を最優先すると判断。外部の別団体に五輪の準備や運営は委任せず、AIBAに代わってIOC委員で国際体操連盟会長の渡辺守成氏が座長を務める「スペシャル・タスクフォース」(特別作業部会)が主導する異例の態勢となった。

IOCのバッハ会長は記者会見で「選手たちの五輪に出たいという夢を保障したい」と述べ、プロボクシングの統括団体と連携する考えも示した。

FIGの渡辺会長は人工知能(AI)を取り入れた審判の革新的な改革を実施しており、バッハ会長はこの点も「経験と実績があり、組織委とも協力できる人材」と大いに期待する。今後の改革ではAIの活用、選手数の男女比率なども検討課題になりそうだ。

ロンドン金・村田諒太も「よかった」

ボクシングは2020年7月25日から8月9日まで両国国技館で行われる。当初の予定通り、男子8階級、女子5階級を実施し、選手の出場枠も286人で変更はないが、実施階級や各階級の出場枠は男女平等の観点を踏まえ、特別作業部会で検討する。6月末までに実施階級を含む予選方式を決定する方針だ。予選期間は来年1~5月、テスト大会は今年10月を見込んでいる。

五輪ボクシング日本人メダリスト表ⒸSPAIA

ⒸSPAIA


五輪ボクシングの歴史をひもとくと、1964年東京五輪のバンタム級で桜井孝雄が日本選手初の金メダルを獲得。女子が初めて実施された2012年ロンドン五輪では男子ミドル級の村田諒太が日本勢で48年ぶりの五輪王者に輝いた。現在、プロで活躍する村田は「東京五輪を目指している選手達もホッとしていると思います。良かった」などとコメントした。

東京五輪は堤駿斗やプロの高山勝成ら有力

さて東京五輪はどんな日本選手が出てくるのか―。

プロボクシングの元ミニマム級世界王者で36歳の高山勝成(名古屋産大)は東京五輪出場を目指す期待の1人。プロで世界主要4団体制覇を果たしたが、アマチュアでは昨秋に登録を認められたばかりだ。

アマチュア界には「アマのモンスター」と呼ばれ、東京五輪でメダル最有力と期待される19歳の堤駿斗(東洋大)がいる。千葉・習志野高時代に日本選手で初めて2016年世界ユース選手権フライ級を制し、17年にはバンタム級で全日本選手権なども制してきた逸材だ。その実力と才能は、世界戦で衝撃の2回TKO勝ちを収めたWBA・IBF世界バンタム級王者の井上尚弥も認めている。

女子は和田まどかに期待

ロンドン五輪から採用された女子は当時、お笑いコンビ南海キャンディーズのしずちゃん、山崎静代の挑戦で話題になったが、五輪の壁は高かった。

東京で期待されるのは昨年11月の世界選手権ライトフライ級で銅メダルの和田まどか(福井県スポーツ協会)。極真空手で日本一となった経験もあり、高校時代にボクシングの道へ。歴史的なメダル1号への機運も高まりそうだ。

おすすめの記事