6月19日ラスベガス「ザ・シアター」で防衛戦
プロボクシングのWBAスーパー&IBF世界バンタム級王者・井上尚弥が6月19日にラスベガスの「ザ・シアター」でマイケル・ダスマリナス(フィリピン)と防衛戦を行うことがトップランク社より正式発表された。
WBAが5度目、IBFが3度目の防衛戦。権威あるボクシング専門誌「ザ・リング」のパウンド・フォー・パウンドランキングで2位に入る井上の次戦には、海外でも大きな注目と期待が寄せられている。
井上のプロモーターであるトップランク社のボブ・アラム氏は「これまで井上をより高いレベルに押し上げようと強敵を用意してきたが、全てのテストを見事にクリアしてきた」と褒めちぎっている。
ボクシング界屈指のプロモーターを唸らせるほどの評価を得ている井上と戦うマイケル・ダスマリナスはフィリピン出身の28歳。33戦30勝(20KO)2敗1分けとKO率6割を超えるサウスポーで、IBFバンタム級1位にランクされている。
世界的な知名度は低いものの、フィリピン国内では「ネクスト・パッキャオ」と呼ばれるほど期待されている選手。IBFは一定期間内にランキング1位選手の挑戦を受ける指名試合を行わないと王座を剥奪することもあり、井上が目指す4団体統一に向けて避けては通れない相手だ。
ダスマリナスの強烈な左フックは要注意
かつて山中慎介や井上の弟・拓真のスパーリングパートナーとして来日したこともあり、井上の勝利予想が圧倒的だが、ダスマリナスは決して侮れる相手ではない。
身長は170cmと井上尚弥(身長165cm)と比べてやや高く、好戦的なサウスポー。フットワークも使うボクサーファイターだが、不意に放つ左フックは強烈だ。過去の試合ではワンパンチでダウンを奪ったこともあり、井上とてまともに顎にもらえば立っていられる保証はない。
井上はサウスポーは苦手ではないと公言しているが、試合で戦うのは2018年10月のWBSS1回戦で戦ったパヤノ戦以来。1ラウンド、わずか70秒で終わらせた試合内容から見ても不安要素とまでは言えないものの、当然対策は必要になる。
2008年に不利の予想を覆して6階級制覇のスーパースター・デラホーヤから勝利を挙げたマニー・パッキャオの例もある。何が起きるか分からないボクシングで、人生をかけて勝負にくる「ネクスト・パッキャオ」との試合は楽観視できない。
勝てば4団体統一へ前進
とはいえ、井上の優位は不動だ。数々の強敵を倒して20戦全勝(17KO)と8割5分のKO率を誇る「モンスター」に死角は見当たらない。
これに勝てば4団体統一に大きく近付く。オリンピックを2度制しドネアをも完封したWBAレギュラー王者ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)と、井上との対戦が流れたWBO王者ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)が8月に統一戦を行い、その勝者と井上が対戦する可能性がある。さらに弟の拓真に勝利したWBC王者ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)との統一戦も見えてくる。
ボクシング史に名を残す井上の野望はまだ道半ば。今度はどんなKOシーンを見せてくれるのか。今から試合が待ち遠しい。
《ライタープロフィール》
近藤広貴
高校時代にボクシングを始め、全国高校総体3位、東農大時代に全日本選手権3位などの成績を残す。競技引退後は早稲田大学大学院にてスポーツ科学を学ぶ。現在は母校の教員としてボクシング部の指導やスポーツに関する研究を行う傍ら、執筆活動を行っている。
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