井上尚弥ら参戦の「LEGEND」11日ゴング
2月11日(木)、コロナ禍の日本を盛り上げようと、ボクシングのチャリティーイベント「LEGEND」が代々木第一体育館で開催される。
プロボクシングの現WBAバンタム級スーパー&IBF同級王者の井上尚弥と15連続KOの日本記録を持つ元世界フライ級王者・比嘉大吾の一戦がメインイベント。他にも元世界王者の八重樫東、内山高志ら、そうそうたるボクサーの参戦が決定している。
イベントの中で特に注目したいのがトッププロVSトップアマの試合だ。LEGENDには、プロボクサーのみならず、2021年開催予定の東京オリンピックに出場するトップアマの3人も参戦する。対戦カードは以下の通りだ。
東京オリンピックのボクシング競技で63㎏級代表の成松大介はプロの世界ランカーである平岡アンディ(大橋ジム)と、69㎏級代表の岡沢セオンは期待のホープ佐々木尽(八王子中屋)と、75㎏級日本代表の森脇唯人はスーパーウェルター級で世界タイトル挑戦経験がある井上武志(ワールドスポーツ)と対戦する。
通常では交わることのないトッププロとトップアマの一戦がいよいよ実現するのだ。
プロとアマでは競技性が大違いのボクシング
一般的に日本国内のスポーツは、アマチュアの上にプロがあるイメージを持つことが多い。しかし、ボクシング競技に限ってはその構図が必ずしも当てはまらない。
プロボクシングとアマチュアボクシングは2つの拳で打ちあう点においてはルールが共通だが、ラウンド数や採点ポイントに違いがあり、その競技性が大きく異なる。まったく別の競技と言っても過言ではない。
プロボクシングはC級・B級・A級・世界タイトルマッチなど試合のレベルに応じてラウンド数は違うものの、最長12ラウンドと長丁場の試合展開となる。1試合が3分3ラウンドのアマチュアボクシングより、はるかに長時間の試合となり試合運びのテンポが全く異なる。
陸上競技に例えると、長期決戦のプロボクシングは長距離走、短期決戦のアマチュアボクシングは短距離走とも言え、求められる身体的能力も大きく変わる。プロなら1ラウンドは様子を見ることも多いが、アマチュアにそんな時間的余裕はない。
また、各ラウンドの採点ポイントも、プロは相手に与えたダメージを重視するが、アマチュアはきれいな有効打数を評価するなど、試合の勝敗において求められる技術的ポイントも大きく異なるのである。
LEGENDではアマ有利?
陸上競技で短距離選手が長距離選手に長距離走で勝つことが困難なのと同じように、長距離選手が短距離選手に勝つことも困難であろう。そのことは、プロボクシングやアマチュアボクシングにおいてもあてはまる。
現WBA世界ミドル級スーパー王者の村田諒太に勝利したことがある元世界王者アッサン・エンダムは、2016年のリオデジャネイロオリンピックを目指してアマチュアボクシングに復帰したが、オリンピックで初戦敗退している。
また、プロボクシング主要4団体すべてで世界ミニマム級王者となった高山勝成もアマチュアボクシングでは全国大会にすら届かず、地方のブロック大会で敗退した。
プロボクシングの世界王者クラスでも、アマチュアボクシングのルールに適応して勝ち進むのは困難なのだ。
今回開催されるLEGENDは、試合時間が3分3ラウンドのヘッドキアあり、グローブもダメージを与えにくいものを使用し、アマチュアボクシングの試合ルールに近い内容で行われる。トップアマ有利と言っても決して過言ではない。
とはいえ、プロにはプロ、アマにはアマの良さがあり、どちらが上とも決めがたい。3分3ラウンドでのハイテンポな試合で、トッププロがどれだけトップアマに食い下れるのか見ものである。
《ライタープロフィール》
近藤広貴
高校時代にボクシングを始め、全国高校総体3位、東農大時代に全日本選手権3位などの成績を残す。競技引退後は早稲田大学大学院にてスポーツ科学を学ぶ。現在は母校の教員としてボクシング部の指導やスポーツに関する研究を行う傍ら、執筆活動を行っている。
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