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B3東京エクセレンス・石田剛規ヘッドコーチ独白「選手の長所を信じてこそ」

2019 4/7 07:00高須基一朗
石田剛規,Ⓒ高須基一朗
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Ⓒモッツ出版株式会社

レギュラーシーズン32勝4敗で独走V

バスケットボールのB3リーグでレギュラーシーズンを制した東京エクセレンス・石田剛規ヘッドコーチに独占インタビューした。B3リーグはファーストステージ→レギュラーシーズン→ファイナルステージと3部制の通年スケジュールで、3シリーズ通算で勝ち点の多い1チームがB2最下位チームとの入替戦に臨み、勝利すればB2昇格となる。現在、ファイナルステージを戦う石田HCに意気込みや選手との接し方などを聞いた。

―まずはレギュラーシーズン1位でのフィニッシュおめでとうございます。

石田剛規ヘッドコーチ(以下、石田HC):ありがとうございます。

―32勝4敗と素晴らしい結果であったと思うのですが、振り返っていかがですか?順調にレギュラーシーズンを終えた感じですか?

石田HC:順調…結果を見れば首位独走していますけれども、その前のファーストステージで1敗したことが、振り返ると悔やまれますね…。更に得失点差で首位を逃したので、個人的には大きなことであって、どの試合も一戦一戦を丁寧に戦わないといけないのだなと思いましたね。

―そのファーストステージの1敗は、現段階で振り返ると何が原因だったと感じますか?

石田HC:1戦目、越谷さんに勝って、連戦の2戦目で越谷さんに力負けしたんですね。チームとしての強度の部分で負けてしまって、試合終盤まで対応できずに終わってしまいました。やはり、その時に覚悟だったり、勇気だったりが欠けていたのも感じました。選手の力を信じて、出し切れる状況をつくれなかったので、それも敗因かと思います。

―とはいえファーストステージにレギュラーシーズンを終えて、このままファイナルステージも順当に勝ち星を重ねていけば、もう一つ上(B2)へ昇格する明るい未来像は見え始めていると思うのですが、いかがですか?

石田HC: そんなに簡単に結果が残せるとは思っていません。越谷さんにファーストステージで1度負けて、マイナス0.5ポイントついており、この0.5ポイントに危機感を持っています。レギュラーシーズン優勝していても、ファイナルステージの結果次第ではひっくり返る可能性もないわけではないので、レギュラーシーズンを独走できたのは大きいのですけどもう終わったことなので、選手含め我々も気を引き締めて戦っていかなければならないです。

それと各チームもファイナルステージで全てをかけて戦ってくるのは当たり前ですし、気持ちを切り替えてくるチームに対して、我々は気持ちを切らさないで戦うべきかなとも感じています。

雰囲気の良さは「チームの文化」

―今シーズンは試合を拝見させていただいていると、ベンチでの選手たちのモチベーションや雰囲気が非常に良いと感じます。HCとのコミュニケーションもしっかり取れて統率がとれていると見受けられますが、実際はどうですか?

石田HC:チームに関しては、今年から始まったことではないです。私が選手としてエクセレンスに入団した当初NBDL時代から、ベンチの雰囲気は良いと感じていています。

プロのチームだと味方の活躍だとか、勝利を喜ぶのは当たり前ですけど、どこかでそれを妬ましく思ってしまう選手も中にはいると思うのですが、(東京エクセレンスでは)全選手が試合に勝つことに集中して準備が出来ています。味方の活躍を心から喜べる選手が揃っているっていう、すごく良い環境が続いていると思いますね。今年つくれたというよりは、「チームの文化」としてコミュニケーションに長けたチーム力が根付いています。

―エクセレンスさんは、チーム全選手とヘッドコーチの垣根を越えて、HCをいじるような、目線の高さが一緒という言い方が良いですかね…距離感がものすごく近いと感じますが、そのあたりはどうですか?

石田HC:そうですかね(笑)。当人なんで正直わからないですけども、もともと(このチームで)選手でやってきたので、今どんなことを感じているか、試合に出られなかったら、試合で失敗したら、僕にも想像がつくので、そのあたりは意識して選手たちに伝える努力はしています。それが同じ目線になっていれば本望ですね。

―個別に選手ごとに話術を変えたり、HCとしてテクニックがあったりしますか?

石田HC:そこまで話術を巧みに使って器用に話せるタイプではないですけど、その都度タイミングで対応に迫られて、どういった表情でベンチに帰ってきて、悔しいだろうから次はやってくれるだろうとか、それを判断して、とにかく積極的に話しかけるようにしています。やっぱり感じるんで…感じる分、選手を交代するときに責任の重さを本当に感じますね。

自分だったら40分間コートに立っていたいですからね。どの選手もコートから下げられた時にはもっと出たかった思うので、それが表情に出る選手と出ない選手といますけど、だからそれは皆同じで、交代はたくさんしますけどその時に感じたことをそのまま包み隠さずに話しています。

―今の話だと、早めに交代を告げるタイミングが多いのか?それともギリギリまで粘る、もう一度ワンチャンス与えるのか?そのあたりは、どうですか?

石田HC:試合前に想定の話で、交代を告げることを説明しているのですが、試合になると直感を信じて、割とその場で対応が多くて、あまり決めつけずに判断するようにしています。なので、どちらの選択肢も有り得るという感じですかね。

―臨機応変でバリエーションが多いということですね!

石田HC:どうなんでしょう、他のBリーグのチームによってはローテーションも決まっていて、誰が何点を取ったら交代と決めているようなところもあるでしょうけど、我々のチームは、どの選手が出ても活躍できるんですよね。毎試合、誰かがヒーローになれるような存在が多いです。何事も決めきらずに、チーム状況に合わせた判断があればいいと感じています。

「大切なのは選手のバスケット人生」

―2018-2019レギュラーシーズンで成長した選手というと、どなたを挙げますか?

石田HC:何人かいるんで…成長したっていうと、そこで止まっているように思えてしまうので、今も成長して続けているんだろうなって思える選手としては、田口選手と佐野選手ですね。キャプテンと副キャプテンで頑張ってくれていますし、いろいろと考えることがこれまで以上に多くなったシーズンだと思うんですよね。

試合中でも練習でも、何をしゃべるのか、どういった姿勢でバスケットと向き合うべきなのか、プレッシャーがある分、ダメだった時もあると思うんですけど、その経験があったからプロとして生きていくために何が必要なのかを学べて、成長してくれているんだろうなと思います。今以上にこれから成長してくれたらいいなとも感じています。

―仮にB3からB2となると環境もガラッと変わると思いますが、どうですか?

石田HC:去年もそうなんですけど、このチームでヘッドコーチをしていて思うことは、選手たちが目指すところはここで結果を残すことがゴールではなくて、もちろん優勝すること、勝つことは大切ですけど、B2にとどまらず、B1の選手を目指すべきであり、それを目標にしなくてはいけないと思うんです。だから選手たちは、どれだけ高い目標を持つかが大切であり、それを考えるコーチであるべきだと思っています。

なので、B2も大切ですけど、選手たちがどういったバスケット人生を送るべきなのかも大切だと思っています。彼らのプレイング・タイムをコントロールすることになるので、僕がある意味で彼らの人生を決めてしまうかもしれないってことを感じていて、先ほど距離感の話がありましたが、それほど近くなる必要性は感じていなくて、もちろん仲が悪いわけじゃないですけど、どういったらプロとして生きていけるのかの道筋を常に考えていますね。

―素晴らしい!それがチームの原動力ですね。今シーズンのファイナルでも快進撃が続くことを期待しています。シーズン優勝が確定したら、また是非とも取材インタビューをお願いします。

石田HC:ぜひともよろしくお願いします。ありがとうございます。

石田剛規(いしだ・たかき)1982年9月25日生まれ。慶応義塾大学バスケットボール部→2005年~2009年までトヨタ自動車アルバルク所属。2009年にバスケットボールを題材にした山下智久主演ドラマ「ブザービーター」(フジテレビ系列)で俳優デビュー。翌2010年にクラブチーム・エクセレンスで選手復帰。2013年~2017年はNBDLの東京エクセレンスでプレー。2017年から東京エクセレンスのヘッドコーチに就任。