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阪神がセを制したのに盛り上がりに欠けた?東京五輪が行われた1964年の日本シリーズを振り返る

2019 8/28 11:00本松俊之
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変則的な日程の影響は?

2020年は東京五輪とパラリンピック開催の影響もあって、野球やソフトボールのメイン会場となる横浜スタジアムは6月9日~8月23日まで、男子・女子のサッカーが行われる札幌ドームは6月16日~8月16日まで使用できない。また、五輪期間中は大会組織委員会に貸し出すため、神宮球場も7月6日~9月13日まで使用できなくなる。各球場を本拠地とするチームは、その間の対応を迫られる。

DeNAは東京ドームやZOZOマリン、日本ハムは那覇や静岡、ヤクルトは東京ドームと松山でゲームを主催することになった。ちなみに、DeNAとヤクルトが主催試合を東京ドームで開催するのは初めてのことだ。

交流戦を含めたシーズン試合数は例年と変わらないものの、変則的な日程がペナントレースに与える影響が気になるところ。

64年のセ・リーグはし烈な戦いに

前回、東京五輪が開催された1964年はどうだったのだろう。

プロ野球は2月解禁のキャンプを1月に前倒し、ペナントレースの開幕も当時140試合行われるセ・リーグが3月20日(前年は4月13日)、150試合行われるパ・リーグが3月14日(前年は4月6日)とし、オリンピックの開会式が行われる10月10日までに日本シリーズを終わらせるよう日程を組み(前年の日本シリーズの第7戦は11月4日)、全面的に五輪へ協力する体制を敷いた。しかし、収入増のために試合数を増やしていたことで日程は過密とならざるを得なかった。

この年セ・リーグを制した阪神と大洋(現DeNA)との優勝争いはし烈を極めた。9月26日の直接対決は、ダブルヘッダーで1勝すれば60年以来2度目の優勝だった大洋がまさかの連敗。この日で大洋は全日程を終了し、阪神は残り3試合。2勝すれば阪神が優勝、2敗すれば大洋が優勝という状況になった。

29日、阪神は国鉄(現ヤクルト)に勝ち、優勝まであと1勝となる。30日、最終戦となる中日とのダブルヘッダー第1試合に勝利して、2リーグ制移行後では2年ぶり2度目の優勝を決めた。

日本シリーズの観客動員は苦戦

本来、26日に開幕する予定だった日本シリーズの日程は大幅に変更。9月19日、すでにパ・リーグを制していた南海(現ソフトバンク)と阪神の初戦は、10月1日にずれ込んだ。阪神からすれば、優勝の翌日という慌ただしさだった。この時点では、もし第7戦までもつれたとしても開会式前日の9日には終了できるスケジュールだったが、雨の影響もあって第7戦は10月10日になった。

もともと、初のナイター開催となっていたこの年の日本シリーズ。五輪の開会式は13時半からとなっていたため、なんとか五輪のじゃまをすることなく日本シリーズを開催することができた。

ところが、観客動員は苦戦。関西同士のチームの戦いは御堂筋シリーズと言われ話題となり、南海の本拠地・大阪球場は3試合ともほぼ満員。しかし、甲子園ではスタンドに空席が目立ち、阪神の優勝がかかった第6戦でようやく25,000人を越えるも、他3試合は2万人割れ、特に日本一を決める大一番・第7戦の15,172人は、日本シリーズ最終戦の観客数としては歴代最少となった。

1964年日本シリーズ入場者数ⒸSPAIA

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五輪にその理由を求めることはできるだろうが、当時のプロ野球が巨人1強だったことも背景にはありそうだ。巨人は2リーグ制となった初年度の50年こそ優勝を逃したが、51年から3連覇(いずれも日本一)、55年からは5連覇(55年のみ日本一)、61年と63年(いずれも日本一)もリーグ優勝を果たしている。

58年には長嶋茂雄が立教大学から入団し、大活躍。62年に王貞治が本塁打王となり、ON時代が到来。五輪翌年の65年からは空前絶後の9連覇(すべて日本一)という黄金時代を迎えようとしていた。1960年に巨人の観客動員が150万を突破すると、63年には200万人台。セ・リーグ6球団の観客動員のうち1/3以上が巨人の主催試合だった。

一方、阪神は62年に初めて100万人を超え64年にも再び100万超えを果たしたが、巨人の半分以下の動員しかできていない。そして、巨人戦以外の甲子園もめったに満員になることはなかった。

1960年代のセ・パ、巨人、阪神、南海の入場者数と2018年の比較ⒸSPAIA

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セ・リーグに大きく水をあけられたパ・リーグ。南海の主催試合の入場者数は63年が72万、優勝した64年は64万人にとどまっていた。この年は30試合総当りだったので、主催試合は75試合。一試合あたりの入場者は9,000人にも届いていない。

巨人戦はほぼ全試合が日本テレビ系列の全国ネットで中継されていて、日本中で数多くのファンを獲得していた。巨人が登場しない日本シリーズへの関心は高まらず、まして五輪と重なるとあって盛り上がりに欠けたのも無理のないことだった。

2020年のプロ野球はどうなる

当時とは違っている今回の状況。巨人頼みの時代は過去のものになり、フランチャイズも分散された。多くのファンが各地の野球場に駆けつける。2018年の入場者数をみると巨人も300万を超えるファンを主催試合に集めてはいるが、阪神との差はさほどない。

セ・リーグの巨人への依存率も大きく減り、両リーグともに猛追。ソフトバンクの入場数は64年と比較すると4倍近くになっている。こうした変化は、プロ野球にとって追い風となるかもしれない。

2020年は変則的な日程になる。前回の五輪時と違うのは、夏場の勝負どころで中断期間があるところ。果たしてこれがどれほど影響があるのか?

また、侍ジャパンが活躍すれば、ファンの関心もさらに高まるに違いない。来年のプロ野球が五輪に負けないくらい盛り上がることを期待したい。