盗塁王争いに新顔が!
本塁打を打つパワーと同様に次の塁を奪うスピードはプロ野球における魅力のひとつだろう。
試合中、次の塁を狙うケースはたくさんある。一塁走者が次打者の安打で三塁を陥れることと、長打で一気にホームヘと還ってくることもそうだ。次の塁を狙う意識とスピードが重要なポイントとなる。
そして盗塁だ。四球や安打で出塁した後に盗塁が成功すれば、たちまちチャンスは拡大し、結果的に長打を放ったのと同じような意味合いとなる。
盗塁王のタイトルが存在していることもあり、数だけがクローズアップされがちだが、安打と打率を計算するように、成功率にも着目しなくてはならない。
さて、今シーズンにおける両リーグの盗塁数を見ると、毎年の常連に加え新顔が名を連ねている。盗塁成功率も同時に見ていきたい。
新人の近本光司が盗塁王争いに
まずはセ・リーグ。大島洋平(中日)が11盗塁を決めて単独トップ。それを1つ差で盗塁王争いの常連でもある山田哲人(ヤクルト)、新人の近本光司(阪神)が追う形となっている。
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山田は3度、大島は1度盗塁王を獲得しており、上位に名を連ねても不思議ではない。やはり、ひときわ目立つ存在なのが近本だろう。
ドラフト1位のルーキーは開幕スタメンでスタートすると、一時的に不振でベンチスタートもあったが、すでにスタメンへと復帰しており、打率は3割を超えている。さらには10盗塁をマーク。社会人時代から俊足が売りではあったが、プロの世界でも同様に魅せているのは心強い。
また、ここまでの盗塁数10個に対し、失敗は4つで成功率は71.4%。盗塁の損益分岐点は3回に2回(成功率66.7%)成功することと言われており、それを上回っている。チームにとって大きな存在となっていることは間違いないだろう。
さらにすごいのは山田である。ここまで盗塁失敗が一つもなく、盗塁成功率はなんと100%。盗塁王に輝いた昨シーズンも33盗塁に対し、失敗はわずか4つで盗塁成功率89.2%を誇っていた。今シーズンだけの「まぐれ」では決してないのである。
通算でも145盗塁に対し、失敗は21。生涯の盗塁成功率は87.3%。200盗塁以上の通算成功率でトップの西川遥輝(日本ハム)が86.9%となっており、それをも上回っていることからもそのすごさはよくわかる。
周東佑京が盗塁成功率100%
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パ・リーグに目を移すと、金子侑司(西武)が15盗塁でダントツのトップとなっている。失敗もわずかに1度だけで盗塁成功率は93.8%。2016年の盗塁王が3年ぶりのタイトルへ向け、開幕からエンジン全開だ。
6個差となる9盗塁で2位につけているのが中村奨吾(ロッテ)と周東佑京(ソフトバンク)の2人。中村は昨シーズン39盗塁(失敗15)をマークし、盗塁王争いに名を連ねるようになった。それまでのキャリアハイは11盗塁(2017年)だっただけにまさに生まれ変わったかのよう。
しかし、盗塁成功率は昨シーズンが72.2%、今シーズンは75%と悪い数字ではないが山田や金子と比べると少し劣っている。
そして周東である。周東はプロ2年目の今シーズン開幕直前に支配下登録を勝ち取ったばかりの新人的存在だ。にもかかわらず、ここまで盗塁失敗がなく、成功率は100%を誇っている。
昨シーズンはファームで27盗塁(失敗4)を記録し、盗塁王を獲得。その足は折り紙付きだった。もちろん、ファームということで一軍に比べると盗塁阻止のレベルが下がるが、盗塁成功率87.1%は立派な数字。その武器を一軍でも最大限に発揮している。
争いの常連でもある西川はここまで6盗塁(失敗2)と西川にしては少し物足りない。実績のある選手だけにここから盛り返してくる可能性は十分にあるが、はたしてどうか。
このようにセ・パ両リーグとも盗塁ランキングは常連に加えて新顔が割って入りつつある。また、盗塁成功率100%を誇る選手も存在している。盗塁数だけでなく、その顔ぶれや成功率に目を向けるのも面白い。
※数字は2019年5月8日終了時点