「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

阪神・矢野監督×SPAIA③「シーズン開幕へ良いイメージしかない」

2019 2/2 15:00SPAIA編集部
矢野監督2人,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA


阪神タイガースの矢野燿大監督がSPAIA編集部を訪れ、株式会社グラッドキューブ代表取締役CEOの金島弘樹と対談した。進行役は矢野監督をよく知る市川いずみフリーアナ。監督就任にまつわる裏話から今季への意気込み、プライベートに至るまで濃密な対談を全5回でお届けする。第3回はデータ活用法やチーム内競争について。


《対談シリーズ》
阪神・矢野監督×SPAIA①「監督要請を受けた時、金本監督に会いに行きました」
阪神・矢野監督×SPAIA②「勝っても負けてもファンに感謝を伝えたい」

ARやAIでケガ防止できれば「凄いこと」

金島弘樹(以下、金島):SPAIAを立ち上げたきっかけはスポーツに貢献したいのと、アメリカに出張したときに向こうのベースボールに衝撃を受けたんです。日本ではOBの方が感覚とか経験で話をされることが多いですが、向こうだとStatcast(スタットキャスト)など細かいデータがあって意思決定されていました。

それが面白いかどうかは置いといて、スポーツはデータの時代に移行してると思ったんです。グラッドキューブは分析オタクになろうというのが理念としてあります。そこでスポーツデータを人工知能で分析していこうと思いました。矢野監督は近未来の野球について、データあるいはAIを含めてどのように考えていますか?

矢野燿大(以下、矢野):数値化されると分かりやすいですね。トラックマンとか、セイバーメトリクスとか、野手も投手もデータ分析して数値化されます。

金島:アマチュアやプロの球団の方ともお話させていただくのですが、小学校から中学、高校、大学、社会人、プロも含めてケガで潰れるほどもったいないことはない。子供の頃にどうやってケアするか、投手なら球数制限とか、投げ方とか。これからは投球フォームを撮影して進化させるためにどうすればいいのか開発できる時代になりました。

スイングをスマホで撮って体重移動やタイミングの取り方が変わってきてる、メンタルやフィジカルがどう変化してるか見ながらどうしたらいいのかをAR(拡張現実)とAIを使ってやっていけるという話をしたら、それは面白いという話になったんです。プロ選手のケガを防ぐためにも、データを活用していくことは阪神タイガースとして将来的にやっていきたいですか?

矢野:そこまで話したことはありませんが、選手は興味あると思います。小中学校は指導者がやっていくべきでしょう。プロになれば自分たちがチョイスして、必要な時に金島さんのところに行って参考にするとかでしょうね。

金島:もし選手時代にそういうものがあったら監督はデータを取りに行きたかったですか?

矢野:投手の方が多いかも知れません。同じように投げててもケガに近付くような投げ方をしてるとか理解できてないと思います。

弘樹さん,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

金島:投手がケガしそうだと分かることはないんですか?

矢野:投げ方で「今ので(ケガを)やったな」というのは分かりますが、その前段階でこれ以上やったらケガするとかは分かりません。逆にそういうのが分析できれば凄いこと。肘や肩に不安を感じてる中で、無理していくべきなのか、登録抹消するか判断材料になります。

打者は形を昔に戻すのは難しいんです。打った時の映像は残してるので何回も見ますが、その時の自分と今の自分は変化してますからね。年齢だったり、体つきだったり、目だったり、メンタル的にも昔の自分に戻るのはしんどい。新しい自分をつかみにいこうと思うと前向きになれるけど、戻ろうと思うとあの時できたのになんででけへんねんと自分に対するダメ出しが多くなるんです。イチローもあれだけ打ってても打撃フォームめちゃ変わってるでしょう。同じことはできないんです。

金島:例えばメジャートップレベルの投手で回転数を2700出すと分かっても投げ方が分からない。1センチ前で投げるとバランスが全部変わる。骨格、筋肉の柔軟性まで見て、こういう投げ方がいいというトレーナーの代わりになるものがあれば選手の補助になると思います。

矢野:春季キャンプに来てもらう相澤君(ベースボールメディカルセンター代表)が動作解析をやってるんです。腱のトレーニングや、正しい体の使い方とか、フィジカル的なことに長けてます。僕も他のコーチも分からないですけど、上本が体は小さいのにホームランを打てるのは腱をうまく使えてるからなんです。選手は感覚でやってますけどね。

「野口の打席では“打つな”と思ってました」

市川いずみ(以下、市川):キャンプと言えば、秋季キャンプは自主性に任せて練習時間も長くなかったですね。90点とおっしゃってましたが、手応えはどうでしたか?

矢野:どうでしょうね。初めてやから分からんけど、僕が頭ごなしに言うとコーチのモチベーションが上がらないので、コーチにもどんな練習をしたいのか聞いて、出てきたのを一回やってみようというのが秋のキャンプでした。時間が短かったり、改善せなあかん部分もありましたけど、コーチもやりがいも持ってくれるやろし、選手もこうやりたいというのを言ってくれたらというキャンプにしたくて。だから時間が短くて甘いと評価されるかも知れませんけど、否定するつもりはありません。ただ、自分の意思で振った100本と、振っとけよと言われて振った100本には差があるんです。長時間やれば安心するけど、自信があってスパッとやめる選手の方が凄い。

市川:怖くてやめられないと思います。

矢野:僕も怖くてやめられへんタイプでした。あいつ、まだやってるとか考えて。究極は「もう帰ります」と帰って結果を出したら、それほど凄いことはないと思います。

だから我の強い選手が出てきてほしいんです。試合に出ずに優勝しても嬉しくない。自分が出ることを考えないとあかんのに、周りに合わせて周りの責任にしてしまう。我の強い選手が競争心をメラメラと燃やして、その中から出てくる選手を使いたいです。プレーやメンタルの特徴をどんどん出してほしいし、仲良くする必要はないと思います。ライバルを蹴落としてでも出たいというのが、溢れ出てる方がいいでしょう。

市川:監督の現役時代にはどうでしたか?

矢野:思ってましたよ。(正捕手を争った)野口の打席では「打つな、打つな」とか、捕手だと「打たれろ、打たれろ」と思いながら見てました。そんなことで性格の良い悪いはない。同じタイガースのユニフォームを着てるけど、養うものもあるし、僕も試合に出たいから。

高校野球とはそういうところが違いますね。そこは一緒にすると難しい。試合の時は自分の仕事をやるのがチームワークにつながると思います。場面場面でやることを考えたら、それがチームのためになるんです。

「トリの性格は知ってるから」

市川:ショートをやりたいと言っている鳥谷選手が禁酒してるそうです。今季にかける思いは本気なんでしょう。競争ということは福留選手や糸井選手もフラットに見てるんですか?

矢野:そこまでフラットにはできません。実績があるから。ランディ(メッセンジャー)も開幕を4年やってきてるから今季も開幕投手をやる可能性は高いです。

監督という立場で考えると、みんなをよくしたい。全員を上げたいんです。ショートだけでも鳥谷、北條、植田海、木浪、糸原、ダークホース的に熊谷、森越とかも出てくるかも知れない。鳥谷がショートをやるって言った時は、今年38歳でもう一度チャレンジするって凄いことやなと思いました。トリの性格も知ってるから、オフに凄い練習してくるやろなと。公言したことでモチベーションは上がってると思います。だから禁酒と聞いてもやっぱりなと思いました。びっくりしない。トリやったらするやろなと思います。

市川:ファンからの質問なんですが、シーズンが始まって一番楽しみにしてることは何でしょうか?

矢野:すごくいいイメージしかないんです。トリがこれだけやって、北條が全試合出ると言って、(植田)海も可能性は持っています。コーチングの基本で、相手を信じる。信じるからこそ相手は言うことを聞いてくれます。無理やと言った時点で諦めてしまうんです。ショートやローテーション投手を考えるとすごく楽しいです。


■矢野監督サイン入りグッズをプレゼント
抽選で矢野監督サイン入りの阪神タイガース「シートポケット付折りたたみクッションVer.2」を5名様、「色紙」を2名様にプレゼントいたします。
応募はSPAIA公式「Twitter」か「Instagram」から。ぜひアクセスして詳細をご確認の上、ご応募ください。締切は2月7日です。
◇Twitter(@SPAIAJP)で応募
 プレゼント応募詳細
◇Instagram(@spaia_official)で応募
 プレゼント応募詳細

プレゼント,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

〜 阪神・矢野監督×SPAIA④「楽しくやるって究極やと思うんです」に続く