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中継ぎ転向で才能開花! ホークス・岩嵜翔は歴史に残る投手になれるか

2018 4/3 19:27Mimu
年度別成績
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ⒸSPAIA

投手王国の中でひときわ優れた成績を残した岩嵜翔

2017年シーズン、圧倒的な強さで日本一に輝いた福岡ソフトバンクホークス。特に投手陣の充実は、他のチームの追随を許さない。だがその中でも、この男の活躍は、長年のホークスファンからすれば、喜びもひとしおなのではないだろうか。

岩嵜は、2017年シーズンはパリーグ最多の72試合に登板。やはりパリーグ最多の46ホールドポイントを記録し、最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得。防御率も1.98と、これらの数字だけを見ても、かなりの安定感を誇っていたことがわかる。守護神のデニス・サファテが日本新記録となる54セーブを記録できたのも、岩嵜の存在が非常に大きかった。

189cmの長身から放たれる威力のあるストレートに、落差のあるフォーク、さらにカーブやスライダーにもキレがある完成度の高い投手だ。しかし実をいうと、これだけの活躍をした岩嵜でも、ここまで順調というわけではなかった。昔から高いポテンシャルを持っていたものの、いまいち殻を破ることができていなかったのだ。

年度別成績

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高い能力を持ちながら便利屋という立ち位置に落ち着いていた

岩嵜は千葉県の船橋市立船橋高校から、2007年の高校生ドラフト1位で入団した。当時から長身本格派右腕として知られ、順位からもわかるように首脳陣大きな期待を寄せられていた。

2011年には頭角を現し始め、13試合で6勝2敗。翌2012年には5勝10敗と負け越してしまったが、120イニングを投げた。2013年には中継ぎに転向して、47試合に登板するなど、一定の結果を残している。

しかし、彼のポテンシャルを考えると、いまいち物足りないのだ。当時から良いボールを投げていたのだが、立ち位置としては「先発と中継ぎの両方をこなせる便利屋」というもの。一時的に先発ローテーションや、勝ちパターンの一角を担ったりすることはあったが、定着とまではいかず。たいていのシーズンでは中継ぎもこなしつつ、時期によってはローテの谷間として投げるような選手に落ち着いていたのだ。

そして、その立ち位置でもそれなりの成績を残してしまっていたのが、岩嵜の悩ましいところでもあった。便利屋なのに、ある程度計算できてしまう。貴重な存在ではあるのだが、どこかもどかしさを感じさせる選手でもあった。

転機が訪れた2016年

もともと、岩嵜は先発での起用にこだわっていた。中継ぎとして結果を出していても、岩嵜自身は先発を希望し続けた。だが、先発ではローテーションに定着するほどの十分な結果を出すことができず、結局便利屋の立ち位置に収まってしまうことが多かったのだ。

先発であれば、ペース配分を意識しなければならず、彼の持ち味である豪速球やキレのある変化球も、やや抑え気味になってしまっていたからだ。加えて、ランナーが出ると急に不安定になるなど、メンタル的な不安が露呈することも多かった。

しかし、そんな岩崎に転機が訪れたのが2016年だ。工藤監督から直々にトレーニング法を伝授してもらい、ボールが力強さを増した。そのボールで結果を出すと、さらに自身も深まっていく。いつしかプレッシャーのかかる場面になっても、堂々と投げられるようになっていった。

中継ぎ1本で勝負する覚悟ができた2016年

岩嵜の変化を象徴する試合が、9月19日のオリックス戦だという。2016年シーズン、チームは序盤から首位を走っていた。しかし、夏場から日本ハムの猛追にあい、8月にはとうとう首位陥落。チームが首位を奪い返すためにも、9月は1試合も落としたくない状況での試合であった。

そんな中、この日の試合で延長11回に登板した岩崎は、1死満塁でバッターはT-岡田という絶体絶命のピンチを迎えてしまう。それまでの岩嵜であったら、変化球で何とか交わすことを考えていたかもしれない。

しかし、この日の岩崎は違った。150km/h越えのストレートをどんどん投げ込んでいって、T-岡田を力で抑えたのだ。力強さを増したボールに、自信を積み重ねて成長したメンタル。その両方が出た試合であった。

歴代最高の投手になる可能性は十分

2016年の9月以降、岩嵜はすべての試合で中継ぎとして起用されている。中継ぎであれば1イニングを全力で投げることができるので、岩嵜の能力の高さを存分に生かすことができる、最高のポジションだ。それまで断ち切れなかった先発への未練も捨てた。そして2017年シーズンの活躍は、冒頭で紹介したとおりだ。

先発で芽が出ずに、中継ぎで開花した選手というと、阪神タイガースの藤川球児が思い浮かぶ。彼も素晴らしいストレートを持ちながら、先発では芽が出ず、2004年に中継ぎに専念してから大ブレイクを果たした。2006年の途中からはクローザーも務め、歴代6位となる223セーブを記録している(2017年シーズン終了時点)。

岩嵜にも、藤川と同じくらい、あるいはそれ以上のポテンシャルが秘められているように思う。今はまだ1シーズンだけしか結果を残していないが、これからの活躍次第では、歴代でも最高のセットアッパー、あるいはクローザーになる可能性は十分にあるのではないだろうか。その答えは、数年後に自ずと出ているだろう。その時を楽しみにしておこう。