2018年ドラフト1位の元「東洋大三羽烏」
9日に行われたプロ野球の現役ドラフトでDeNA・上茶谷大河投手(28)をソフトバンクが指名し、来季から移籍することになった。
2018年ドラフトで甲斐野央(西武)、梅津晃大(中日)とともに「東洋大三羽烏」と呼ばれ、1位でDeNA入団。1年目から先発で7勝を挙げた実力派右腕の移籍に驚いたファンも少なくないだろう。
プロ6年間で通算20勝。今回の現役ドラフトで指名された投手の中では最多勝利の実績を持つ。
ただ、実績のある選手が新天地に移籍して活躍するとは限らない。逆に昨年の現役ドラフトでソフトバンクから日本ハムに移籍した水谷瞬のように、一軍出場のなかった選手がブレイクする例もある。各球団には、現在の実力やコンディションを見極める眼力が求められる。
ここ2年は中継ぎとして登板していた上茶谷。本人は先発を希望しており、ソフトバンク側も先発ローテーション争いに加わってほしいようだが、再び先発として輝きを取り戻せるだろうか。1年目の2019年と中継ぎに転向した2023年、2024年の成績は下の通りとなっている。
被打率、空振り率とも悪化したストレート
2024年はケガもあって18試合登板にとどまり、2勝2敗1ホールド、防御率4.37と不本意な成績に終わった。与四球率は昨季の3.66から1.45に良化したものの、奪三振率は7.59から6.35、防御率は2.11から4.37に悪化している。
推定年俸は今季の5100万円から来季3900万円にダウン。現役ドラフトの指名対象条件のひとつに「来季年俸5000万円以上(1人は5000万円以上1億円未満も可)」があり、今季の年俸なら対象外だった可能性もある。
今オフは濵口遥大、関根大気とともにメキシコ・ウインターリーグに派遣されており、異国の地で奮闘中。海外の若手選手に交じって腕を磨いている。
今季でプロ6年目とはいえ、大卒のため28歳。年齢だけで言えばピークを迎える時期で、ここから5年くらいが働き盛り。逆に言えば肉体的には大きな成長を見込めない年齢でもあり、現状を見極める必要がある。
そこで球種ごとに2019年、2023年、2024年のデータを比較してみた。まずは投球の根幹であり、45%前後の投球割合を占めるストレートから見ていこう。
まず、2019年は先発で投球回数が多く、中継ぎ転向した2023年と2024年は少ないことが前提だ。中継ぎは短いイニングで思い切り腕を振れることもあってか、2023年は被打率.146と優秀。2024年は逆に2019年の.277より高い.306で、空振り率も1.1%と低かった。
とはいえ、平均球速は145.1キロで、2023年の146キロとほとんど変わらない。先発だった2019年の142.8キロより速く、単純にストレートが衰えたとは言えない。ケガの影響があった可能性もある。
被打率、空振り率、平均球速がアップしたフォーク
次にストレートに次いで投球割合の高いカットボールも比較してみよう。
投球割合は2024年が33.5%と3シーズンで最も高いが、被打率も.400でワースト。平均球速は139キロと2019年、2023年より速いものの、カットボールを痛打されたことが今季の成績悪化につながったのかもしれない。
続いてスライダーも見てみたい。
スライダーも被打率.357と悪化。ただ、空振り率は11.1%と良化しており、スピードも125.3キロで2023年とほぼ変化はない。
最後にフォークも見ておこう。
実は最も良化しているのがフォーク。被打率.000、空振り率、平均球速も3シーズンで最高の18.2%、137.1キロをマークしている。
それにもかかわらず、投球割合はわずか2.7%。少ないから数字が良いのか、捕手のサイン通りなのか分からないが、来季はフォークを増やすのも一考ではないか。実際、先発していた2019年は9.2%と高かった。
上茶谷は来季に向けて、シュート系とチェンジアップの2種類を課題に挙げている。いずれの球種も投球割合が5%に満たないため現時点ではサンプル不足だが、使える変化球が増えれば投球の幅も広がる。
中継ぎなら平均球速150キロを超える剛腕も珍しくない昨今、上茶谷は先発の方が向いている期待もある。フォークやシュート、チェンジアップに磨きをかけ、投球割合を増やすことができれば、ストレートやカットボールも活きてくるだろう。
ソフトバンクは今季14勝で最多勝に輝いた有原航平、最優秀防御率1.88のモイネロに加え、スチュワート・ジュニア、大関友久、大津亮介、東浜巨ら先発ローテーションを争うライバルは多い。上茶谷はその一角に割って入ることができるか。新天地での活躍が期待される。
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