初めて盗塁阻止率3割を割った甲斐拓也
プロ野球のFA宣言選手が14日、公示され、いよいよ15日から全球団との交渉が可能になる。注目選手の一人がソフトバンクの甲斐拓也だ。
2010年育成ドラフト6位入団ながら「甲斐キャノン」と呼ばれる強肩でレギュラーをつかみ、通算1023試合に出場。今季も119試合で打率.256、5本塁打、43打点の成績を残し、ぶっちぎりのリーグ優勝に貢献した。
ソフトバンクは柳田悠岐、近藤健介、有原航平ら高給取りが多いため、甲斐はBランク(獲得球団は旧年俸の60%の金銭か、旧年俸の40%の金銭+人的補償が必要)と見られるが、推定年俸2億1000万円は安い買い物ではない。
それでも育成するのが難しいポジション柄、パ・リーグを代表する捕手がFA宣言すれば獲得に手を挙げる球団はあるだろう。すでに巨人が興味を示していると報じられている。
ただ、甲斐もプロ入りして14年が過ぎ、32歳となった今、今後避けては通れない衰えをどう考えるか。リード面や投手の力を引き出す面では経験がものを言うが、最大の売りである肩は加齢とともに衰え、ケガのリスクも高まっていく。
実際、今季の盗塁阻止率はレギュラーを獲得した2017年以降で初めて3割を割り込んだ。年度別の盗塁阻止率は下の通りだ。
日本シリーズで2盗塁を許し、13打数無安打
盗塁阻止率4割以上をマークした2018年(.447)と2021年(.452)はリーグ1位。それ以外のシーズンも阻止率3割以上をキープしていたが、今季はリーグ5位の.284だった。トップの若月健矢(オリックス)の.474には遠く及ばず、田宮裕涼(日本ハム)、古賀悠斗(西武)、太田光(楽天)の後塵を拝している。
DeNAに敗れた今年の日本シリーズでも第3戦で森敬斗、第4戦で梶原昂希に盗塁を許し、打席では13打数無安打。第2戦で右犠飛を打って1打点を挙げたのが、バットでは唯一の貢献だった。
これらのデータだけを見て、短絡的に「衰えた」と断定することはできない。ただ、年齢的に大きな成長は見込めないため、全盛期のイメージだけで判断すると、獲得球団はギャップに首をかしげることになるリスクもある。
興味を示していると伝えられる巨人を例にとると、今季88試合に出場した28歳の岸田行倫は盗塁阻止率.475でセ・リーグ1位。打撃面でも打率.242、4本塁打、26打点と甲斐と大きな差はない。
もちろん、リーグの違いや過去の実績も検討材料になるため一概には言えないが、高い資金を用意してまで獲得する価値があるかどうか、慎重に判断する必要はあるだろう。
2022年は3人がFA移籍した捕手の重要性
捕手は一度レギュラーを奪うと外されにくい。リード面など数字に表れない部分も多く、たとえ成績が上がっても下がっても監督やコーチによって評価が違うからだ。
最近では森友哉が西武からFA宣言してオリックスに移籍した2022年のように、伏見寅威がオリックスから日本ハムへ、嶺井博希がDeNAからソフトバンクへと3人も捕手が移籍した年もあった。それだけ捕手は重要で替えの利かないポジションであり、常にニーズはある。
甲斐にとっては間違いなく野球人生のターニングポイント。同じ2010年の育成ドラフトでソフトバンク入りした千賀滉大は海外FA権を行使して海を渡った。パ・リーグを代表する捕手の決断に注目が集まる。
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