5位タイ浮上、首位まで「2.5」差
3月29日に開幕したプロ野球の2024シーズンも開幕から1カ月以上が経ち、各チームの試合数も30試合を超えてきた。徐々に好不調の差も見えてくる頃かと思いきや、今年のセ・リーグは現時点で抜け出すチームが不在の混戦模様となっている。
前日時点でリーグ最下位だったヤクルトが8日のDeNA戦に勝利し、中日と並んで5位タイに浮上。借金も「2」となり勝率5割が近付いてきたほか、上を見ても首位・阪神まで2.5ゲーム差と射程圏内に捉えている。
特に8日の試合は今後の逆襲を予感させるような好内容だった。
初回、9戦ぶりに1番でスタメン出場した塩見泰隆が安打で出ると、好調な2番・丸山和郁が二塁打で続いて無死二・三塁とチャンスを拡大。3番のホセ・オスナはきっちりとセンター返しで塩見を本塁に迎え入れ、あっという間の3連打で先制に成功する。
さらに4番・村上宗隆もライトへの適時打で続き、ドミンゴ・サンタナの大飛球は惜しくも右飛となるも、一死一・二塁から6番の長岡秀樹も適時打。初回先頭からの4連打、1イニング5安打集中の3得点で試合の主導権を握り、その後は詰め寄られながらも後半に突き放す展開で押し切った。
OBも期待を寄せる塩見の復活
今季のヤクルトは中軸が絶好調。サンタナは打率.339をマークして打率ランキングトップを独走中、打点21もリーグ3位の好成績となっており、オスナも打率.291と本塁打6が同3位、打点25は堂々のトップだ。
さらに昨季は不振に苦しんだ主砲・村上宗隆も、ここまで本塁打8は細川成也(中日)と並んでリーグトップタイ。打率も.2831は同5位で、打点16は同6位タイだが直近6戦連続で打点を記録中と量産態勢に入っており、爆発の予感が漂う。
「クリーンアップの打率」は.288でリーグトップ。それだけに、いかに塁上をにぎわせた状態で中軸を迎えるかというところが大きなポイントとなる。
その点、直近13試合のうち12試合で2番スタメンを任されている3年目・丸山和郁が好調を維持しているのは心強い。4月は月間打率.405と猛打でアピールした23歳は5月も6試合中5試合で安打をマークし、規定には未達ながらここまで27試合の出場で打率.369と打ちまくっている。
2~5番までの流れが固まりつつある中、残るピースは「1番打者」。打線にスイッチを入れ、塁上から相手にプレッシャーをかける。それを見事に体現したのが8日の試合の塩見だった。
今季もコンディション面の不安から休みを挟みながらの出場が続いているが、29試合の出場で打率.260、3本塁打で8打点。出塁率は.333で盗塁3つと、万全ではない中でもこれだけの成績を残している。
8日夜に放送された『プロ野球ニュース』(CSフジテレビONE)に出演した野球解説者でヤクルトOBの坂口智隆氏も、「塩見選手の存在が非常に大きい」「彼が1番にいることが打線を締める」と塩見の存在感について言及。ヤクルト打線のキーマンとして名前を挙げた。
「.228」待たれる本領発揮
そこで今季の塩見の打順別成績を見ると、「1番」出場時は.228と物足りない成績。リーグ連覇時と比較すると2021年は.272(390-106)で2022年は.281(441-124)だから、大きな開きがある。
ちなみに、チームが5位に沈んだ昨季は.306(144-44)の好成績だったが、これは年間出場数51試合での成績。そもそも不在の時間の方が多かった。
「1番・塩見」の体調と出来がヤクルトの命運を握る、と言い切るのは少々乱暴かもしれないが、数年前の強いヤクルトには「1番」で躍動する塩見の姿があった。これは間違いない。
直近は27日の試合で先頭打者本塁打を放った直後に交代となり、以降は途中出場が続いていたが、8日の試合でフル出場できたのは収穫。このまま定位置に戻り、パフォーマンスを上げていくことができれば、チームの一気の上位進出も見えてくる。
強力打線にスイッチを入れる男、「1番」に帰ってきた塩見泰隆の今後に注目だ。
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