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ヤクルト・小澤怜史が奮闘も…トライアウトを突破した選手たちの「その後」は?

2023 11/16 07:00SPAIA編集部
髙山俊,GettyImages
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ⒸSPAIA

かつての新人王や最多勝投手がアピール

NPBの球団から自由契約となった選手たちが生き残りをかけて挑む『プロ野球12球団合同トライアウト』が15日、ファイターズ鎌ケ谷スタジアムで行われた。

今オフに戦力外通告を受けた選手だけでなく、かつてNPBの舞台でプレーをした選手も含め、今年は総勢59人が参加。その中には2015年のドラフト1位で阪神に入団し、2016年のセ・リーグ新人王に輝いた髙山俊や、同じく2015年のドラフト1位でソフトバンクに入団した髙橋純平の名前もあった。

髙山は最初の打席で右中間突破の二塁打を放つと、三振を挟んで第3打席でもライトへのヒット。盗塁も決めて足でも存在感を放つなど、3打数2安打で1盗塁と躍動した。

髙橋も打者3人に対して被安打1に死球が1つとなったものの、最速148キロを計測して三振も1つマーク。ほかにも、2018年のパ・リーグ最多勝投手で現在は軟式野球チームでプレーしている元西武・多和田真三郎が打者3人に対して1四球・1奪三振で無安打ピッチと良いアピールを見せた。

古くはトライアウトへの参加、その後の入団テストの末に掴み取ったチャンスでプロ16年目にしてオールスター初出場を果たし、ベストナインも受賞した「リストラの星」こと宮地克彦のような大成功例もあった一方で、近年ではそういったケースも少なくなっている。

直近3年を見ても、2020年は56人が参加して5人がNPBの球団との契約(育成含む)を勝ち取っていたものの、2021年は33人と参加者自体が少なかったこともあるが、NPBの球団から声がかかった選手は1人だけだった。

昨年も49人の参加に対して、新たに契約を結ぶことができたのは4人。近3年の合計では138人が参加して突破は10人、突破率はわずかに「7%」だから想像以上に厳しい戦いだ。

今回はその2020年から2022年のトライアウトにおいて、立ちはだかる壁を打ち破った選手と“その後”を振り返ってみたい。

新庄剛志が話題の中心だった2020年

今から3年前、無観客の神宮球場で行われた2020年の12球団合同トライアウト。この年の話題をさらったのが、当時48歳にして現役復帰を目指した新庄剛志(現・日本ハム監督)の参戦である。

2019年秋に自身のインスタグラムで現役復帰を目指す旨を表明し、宣言通りにトライアウトの舞台に登場すると、凡退・四球・凡退で迎えた第4打席にレフトへはじき返す適時打。持ち前の勝負強さを見せつけた。

アピールも実らず、現役復帰の夢を叶えることはできなかったが、その11カ月後に待っていたのが日本ハムの監督就任という衝撃のニュースだった。BIGBOSSとして再びユニフォームを身にまとい、NPBのグラウンドに戻ってきたエンターテイナーは来季の続投も決まり、就任3年目のシーズンに挑む。

その新庄と同じ日本ハムのユニフォームを着て、神宮で躍動したのが宮台康平だ。

2017年のドラフト7位で日本ハムから指名を受け、史上6人目の東大卒プロ野球選手として注目を浴びるも、3年間で一軍登板はわずかに1試合のみ。球団からは育成契約の打診を受けたが、支配下契約の可能性を求めて挑んだトライアウトで三者三振の快投。見事にヤクルトと支配下契約を結ぶことに成功した。

しかし、ヤクルトでは移籍2年目の2022年に一軍で2試合に登板を果たすも、2戦目で打ち込まれて防御率19.29と結果を残すことができず。その年の10月に現役引退を表明し、ユニフォームを脱いでいる。

この2020年トライアウト組の中で、現時点で最も成功を収めた選手といえるのが、宮台と同じくヤクルトに入団した小澤怜史だろう。

2015年のドラフト2位でソフトバンクに入団した右腕だが、一軍では2試合に登板したのみで5年目のオフに戦力外通告を受けてしまう。それでも、トライアウトで見せた三者三振の猛アピールが実り、ヤクルトから育成契約のオファーを勝ち取った。

その後、2022年のシーズン途中で支配下登録されると、10試合の登板でプロ初勝利を含む2勝をマーク。今季も29試合の登板で6勝4敗2ホールド、防御率3.02という成績を残し、先発・リリーフにフル回転でチームを支えた。

2020年のトライアウトを経て移籍した選手たち

2021年唯一の合格者はBIGBOSSの下で飛躍の気配も…

2021年にメットライフドーム(現・ベルーナドーム)で行われた12球団合同トライアウトでは、1カ月前に監督就任が発表されたばかりのBIGBOSS、日本ハム・新庄剛志監督が視察に訪れたことが話題に。この年は参加者が33人と少人数での開催となった中、唯一NPB球団との契約を掴んだのが古川侑利だ。

2013年のドラフト4位で楽天に入団も、2019年のシーズン途中で巨人へトレード移籍。しかし、新天地では思うような結果を残すことができず、2021年のオフに戦力外通告を受けた。

トライアウトでは3人と対戦して安打を1本許したものの、12月ながら最速149キロを計測した球威抜群のストレートが目に留まり、日本ハムとの育成契約を掴む。すると翌年の開幕前には支配下登録を勝ち取り、加入1年目から一軍で34試合に登板して0勝1敗3ホールド、防御率4.08という成績を残した。

ところがその年のオフ、初開催となった現役ドラフトでソフトバンクから指名を受け、通算3度目・4球団目の移籍が決定。迎えた今季は一軍登板9試合に留まり、自身2度目となる戦力外通告を受けている。

なお、報道では現役続行希望が伝えられていたが、15日のトライアウトには参加がなかった。

2021年のトライアウトを経て移籍した選手たち

野手3人が突破した2022年

そして昨年、楽天生命パークで3年ぶりの有観客開催となった12球団合同トライアウトでは、49人が参加して4人がNPB球団と新たな契約を結んだ。

特徴的だったのは、2020年と2021年は投手に合格者が偏っていた一方で、この年は突破した4人のうち3人が内野手という構成になったこと。唯一の支配下契約となった三ツ俣大樹は代打や内野のユーティリティとして加入1年目から18試合に出場した。

また、DeNAと育成契約を結んだ西巻賢二も4月中に支配下登録を勝ち取り、一軍で7試合に出場。今秋はフェニックスリーグにも参加し、来季の飛躍に向けた準備を進めている。

崖っぷちから這い上がり、新天地で奮闘を見せる選手たちが出てきている一方で、この数年の間で再び非情な宣告を受けた選手もいるというのは事実。小澤や三ツ俣、西巻はもちろんのこと、今年のトライアウトから新天地にたどり着いた選手には、ぜひともその先の息の長い活躍に期待したい。

2022年のトライアウトを経て移籍した選手たち

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