将来に不安抱える先発陣、離脱者続出のリリーフ陣
今季の西武は松井稼頭央新監督が就任し、4年ぶりのリーグ優勝を目指して臨んだシーズンだったが、5位と低迷した。特に、得点力不足は深刻で、正捕手・森友哉の流出、主砲・山川穂高の不祥事による離脱が響き、リーグワーストとなる435得点に終わった。
松井政権2年目となる来季は、打線のテコ入れが不可欠となる。10月26日に開催されるドラフト会議は、戦力強化において最重要の場となる。本稿では、現時点で在籍する選手のポジション・年齢等の分布表から戦力を考察した上で、指名候補も含め西武のドラフト補強ポイントを考えていく。
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投手陣はリーグ2位のチーム防御率2.93と、2年連続で2点台を記録。先発の防御率も3.00で同2位だった。エースの髙橋光成、今季から先発に転向した平良海馬、今井達也の3人が2桁勝利をマーク。2年目の隅田知一郎も昨季の1勝から9勝と急成長を遂げ、さらに松本航、與座海人、エンスと、2桁勝利経験者が並ぶ充実の布陣となっている。
ただ、今季の10勝トリオはメジャー志向が強く、数年後には3人とも海を渡っている可能性も考えておかなければならない。大学生投手が豊作と言われている今年のドラフトで将来のエース候補を確保しておきたいところだ。
リリーフ陣は守護神・増田達至と昨季の最優秀救援投手・水上由伸が不調に陥るも、佐藤隼輔や新人の青山美夏人ら若手が台頭。シーズン終盤には途中加入のクリスキーが代役守護神を務め7セーブを挙げるなど、ブルペン全体で2人の穴埋めに成功した。
ただ、今季のブルペンを支えた森脇亮介と佐々木健が手術の影響で、来季は育成契約の見込み。さらに、セットアッパーの平井克典が国内FA権を取得しており、他球団へ移籍する可能性も否定できない。即戦力の補強は必須だろう。
将来の4番候補とレギュラー不在の外野手
捕手では森が抜けた影響は大きく、打力が大幅に低下した。ただ、2年目の古賀悠斗が90試合でスタメンマスクをかぶり、リーグ1位の盗塁阻止率.412を記録するなど守備で貢献。打撃でも8月以降はOPS.700以上をマークし、急成長を見せた。
守備に定評のある柘植世那、育成出身の古市尊と来季の成長が期待できる若手も揃っている。欲を言えば、打撃型の捕手が加わると起用の幅も広がるだろう。
続いて内野手。正一塁手の山川がシーズン序盤に離脱する中、新助っ人のマキノンと渡部健人がその穴を最小限に食い止めた。レギュラー不在だった三塁にはシーズン終盤に打撃が開花した佐藤龍世が定着し、明るい兆しも見えている。
フェニックスリーグで実戦復帰を果たした山川の復帰も来季は期待される。ただ、謹慎処分はまだ解除されておらず、国内FA権も今季取得見込みで今後の動向は不透明。また、40歳の中村剛也もDH専任となっており、彼らの後釜となる将来の4番候補を指名しておきたい。
二遊間には不動のレギュラー、源田壮亮と外崎修汰が君臨。さらにシーズン序盤に源田不在の穴を埋めたルーキーの児玉亮涼、プロ初安打&初本塁打を記録した山村崇嘉と若手も台頭しつつある。下位から育成で好素材が残っていれば、指名するくらいで十分だろう。
問題なのが外野手。鈴木将平がレフトで57試合にスタメン出場したのが、3ポジション合わせてチーム最多と、レギュラー不在が続く。昨年のドラフトで蛭間拓哉、古川雄大と外野手2人を1位、2位で指名したが、今年も上位指名を使ってでも早急に補強する必要があるだろう。
1位指名はレギュラー不在の即戦力外野手?
以上のことから、以下の3つを優先補強ポイントとして挙げたい。
1.レギュラー不在の即戦力外野手
今年は大学生投手が豊作な一方、即戦力外野手の候補は少ないため、外野手を優先して1位指名したい。その筆頭候補がENEOSの度会隆輝だ。昨年の都市対抗では4本塁打で優勝に貢献し、橋戸賞(MVP)と若獅子賞(新人王)をダブル受賞。今年の都市対抗は不調に終わるも、打撃センスは抜群で1年目から活躍が期待できる。
もし、先発候補を1位指名する場合は、2位以降で山梨学院大の宮崎一樹やJR東日本の山内慧といった身体能力に優れたアスリートタイプを狙いたい。高校生なら前橋工高の星野ひのでもプロからの評価が高い。
2.将来のエース候補
2位指名が全体16番目の西武は、ここでもエース候補を拾える可能性がある。桐蔭横浜大の最速153キロ左腕・古謝樹や亜大・草加勝、専大・西舘昂汰ら伸びしろ十分の本格派が揃う。将来性重視で霞ケ浦高・木村優人、滝川二高・坂井陽翔の本格派右腕を狙うのもありだろう。
もし1位指名で入札するなら最速158キロ左腕の東洋大・細野晴希、今年の大学選手権決勝で完封勝利を飾った青学大・常廣羽也斗らが候補となる。
3.将来の4番候補
今季のチーム本塁打数は90本でリーグワーストだったこともあり、長距離砲も補充しておきたい。高校生では佐々木麟太郎が米国の大学留学を表明したため、左の真鍋慧(広陵高)と右の明瀬諒介(鹿児島城西高)が双璧。ともにプロで長距離砲として活躍できるパワーを備える。大学生では、太成学院大・田中大聖、皇学館大・村田怜音が大砲候補の呼び声高い。
松井政権1年目は戦力が整わず苦しい戦いを強いられたが、逆に出場機会を得た若獅子たちが一軍で貴重な経験を積んだ。このドラフトではさらにチーム内の競争を刺激する選手を加え、来季の躍進につなげたい。
※表の年齢は2023年12月31日時点
※育成選手、引退及び退団が発表された選手は含まず(10月11日時点)
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