K%“最低”は日本ハム加藤貴之
プロ野球の投手がファンを魅了するシーンのひとつが三振を奪った瞬間だろう。打者としての華が本塁打なら、投手としての華は三振だ。
しかし、逆に巧みな投球術で打たせて取るのもプロならではのテクニック。日本プロ野球界で「匠の技」を誇る投手を紹介しよう。
対戦打者に占める奪三振の割合を示す「K%」という指標がある。12球団の規定投球回に到達している投手で最も低い11.5%を記録しているのが日本ハムの加藤貴之だ。
三振が少ないということは三振以外でアウトを取っている裏返しであり、実際、加藤は106.2イニングで48三振しか奪っていないが、防御率2.62という好成績を残している。
加藤のコントロールは折り紙付きで、9イニングあたりで与える四球数を示す「与四球率」は12球団トップの0.68だ。左腕から多彩な変化球を駆使して打ち取る投球術は、まさに「匠の技」。4月に国内FA権を取得しており、オフの去就が注目される一人だ。
広島・床田寛樹、日本ハム鈴木健矢も「匠の技」
セ・リーグでK%が最も低い14.7%を記録しているのが広島の左腕・床田寛樹。中部学院大からプロ入りして7年目の28歳だ。
床田の特長のひとつはパームボール。近年ではめっきり投げる投手が減った変化球を巧みに操る。ただ、現状は被打率.440と持ち球の中では最も打たれている。
それでもツーシームとスライダーという真逆に曲がる変化球で的を絞らせない投球は一級品。与四球率1.43とコントロールも良い。すでに7勝を挙げており、今季は自身初の2桁勝利も期待される。
規定投球回には達していないが、日本ハムのサブマリン鈴木健矢はK%が1桁の8.1%と低い。
ストレートは平均123.3キロしかないが、スライダー、シンカー、カーブの3種の変化球をコーナーに投げ分ける。カーブは平均88.3キロながら被打率.250とプロの打者に通用しているのは驚きだ。
地を這うようなアンダースローはボールの出どころが見にくく、相手打者はタイミングが取りづらいだろう。今季はすでに6勝を挙げており、飛躍のシーズンとなっている。
楽天・田中将大は自身初の「無三振勝利」
熟練の投球術という点では阪神・西勇輝も球界を代表する一人だ。規定投球回には達していないものの、K%は加藤貴之を下回る11.5%。プロ通算115勝を積み上げてきた礎が、打たせて取る投球だ。
シュート、スライダー、チェンジアップを多用し、ストレートは全体の15%に過ぎない。的を絞らせず、左右の変化でバットの芯を外す投球は安定感十分だ。
かつてのイメージからは想像しにくいが、楽天・田中将大もK%は12.2%と低い。24連勝をマークした2013年は183奪三振でK%は22.3%だったから、時間の経過とともに投球スタイルをモデルチェンジしたことが分かる。
パワーで勝るメジャーリーグを生き抜く処世術でもあったのだろう。11日の日本ハム戦では自身初めて奪三振「0」で勝利投手となり、日米通算200勝まであと5勝に迫った。
こうして見ると、コントロールが良く、シュート系のボールを投げる投手が多い。カーブ、スライダー系やフォーク等の落ちる球だけではなく、シュート系を持ち球に加えることで投球の幅が広がるのだろう。プロならでは熟練の投球術にも注目したい。
※成績は7月11日現在
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