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阪神・村上頌樹は「右の井川慶」?完全試合未遂で一気にスターダムへ

2023 4/15 06:00SPAIA編集部
阪神・村上頌樹,ⒸSPAIA
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巨人戦で7回パーフェクト

阪神の村上頌樹投手(24)が4月12日、東京ドームで行われた巨人戦で7回パーフェクト投球を見せた。

立ち上がりから力強いストレートとツーシーム、カットボール、フォークを織り交ぜ、巨人打線を寄せつけない。智弁学園高の先輩にあたる4番・岡本和真も第1打席で空振三振に斬って取った。

4回先頭のオコエ瑠偉を空振り三振させた時点で、打者10人から5奪三振。以降は三振をひとつも奪えなかったことから徐々に巨人の打者陣のタイミングが合っていたのかも知れない。7回には丸佳浩に左翼フェンス手前まで飛ぶ大飛球を打たれ、肝を冷やすシーンもあった。

岡田彰布監督はその辺りを察知したのか、8回表、村上に打順が回ってくると原口文仁を代打に送る。7回84球を投げて一人の走者も許していない24歳の大偉業の夢はあっけなく散った。

8回裏、代わった2番手の石井大智がいきなり岡本に同点ソロを被弾。結果的には延長10回に勝ち越して勝利を収めたからよかったものの、逆転負けでもしていたら大ブーイングは避けられなかっただろう。

佐々木朗希とは背景が違う継投策

岡田監督は試合後のインタビューで「勝ったからよかったものの、頭の中では完全試合いけたんかなというのは残ってますね」と正直に吐露。「6回も(交代を)考えたけど7回に打順回ってくるし、後ろ(リリーフ陣)も投げてなかったし、初めてやったんで、完全試合の継投は」と迷いがあったことをにじませた。

昨季も同じような議論を呼んだことがあった。ロッテの佐々木朗希が完全試合を達成した次の登板、4月17日の日本ハム戦で8回までパーフェクト投球を続けていたにもかかわらず、井口資仁監督は投手交代。試合は延長10回、西野勇士が万波中正にチーム初安打となるソロ本塁打を浴びて0-1で敗れた。

メジャーでも例のない2試合連続完全試合という偉業を目前にした投手交代には賛否両論が沸き起こった。ただ、今回と違うのは佐々木の場合、まだ体が成長途上で無理に投げさせて球界の宝を壊すわけにはいかないという井口監督の責任感から来た降板だった。

村上は大卒3年目で、佐々木の降板とは事情が違う。あくまで岡田監督が勝つために考えた末の継投だった。「あそこまで投げたら合格点。みんなで完全試合というのもよぎった」と指揮官は村上の快投を称え、完全試合リレーも視野に入れていたことを明かしている。

ゆったりしたフォームから力感のあるストレート

いずれにしても、村上の名前が日本中に轟いたことは間違いない。ストレートの平均球速は145.5キロだが、ゆったりしたフォームから力強い腕の振りで投げ込む速球は、スピード以上に速く見えるだろう。

力感のあるストレートは、阪神で最後のノーヒットノーラン達成者となっている井川慶と似ており、「右の井川」と言ってもいいかも知れない。

巨人打線を封じ込んだ84球のうち、40球はストレート、19球がツーシーム、16球がカットボール、7球がフォーク、2球がカーブだった。今後は他球団のマークが厳しくなるのは確実。球種はそれほど多くないためストレートのキレが生命線だろう。

智弁学園時代にセンバツ優勝投手となり、東洋大を経てプロ入り後、2021年は二軍で10勝1敗、防御率2.23をマークして投手3冠、2022年も二軍で最優秀防御率、最高勝率の2冠に輝くなど着実に地力をつけてきた。

パーフェクト投球で一躍「時の人」となったが、実はまだプロ未勝利だ。まずは初勝利、そしてローテーションに定着し、今度こそ首脳陣から試合を託されるほどの信頼を勝ち取ることができるか。今季は大きく飛躍するシーズンとなりそうだ。

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