データが証明する見事な広角打法
2022年は優勝候補にも挙げられ、一時は首位に立ちながら最終的には4位に終わった楽天。オフには涌井秀章との交換トレードで中日から阿部寿樹を獲得し、打線のテコ入れを図った。
阿部は一関一高から明治大、Hondaを経て2015年ドラフト5位で中日に入団した33歳。7年目だった2022年は133試合に出場して打率.270、9本塁打、57打点、出塁率.338、OPS.735をマークした。
本職はセカンドだが、チーム事情でサードやレフトも守っていた。楽天のセカンドには主軸の浅村栄斗がいるため、阿部のユーティリティ性は活きるだろう。
打撃面での最大の特長は広角打法。2022年の打球方向データは下の通りとなっている。
右打者にもかかわらずレフト方向への打球が最も少ない15%。最多は左中間の24%だが、センター方向も23%、右中間も21%、ライト方向は17%と見事に打ち分けている。9本塁打のうち3本はライト方向に放り込んでいるのも見逃せない。
コースに逆らわない打撃
広角打法を支えているのはコースに逆らわない打撃だ。ストライクゾーンを9分割した2022年コース別の打率は下の通りとなっている。
打率3割以上を示す赤色は内角低め、ど真ん中、外角高め、外角ベルトラインの4コース。甘い球はもちろん、内外角問わずコースに逆らわない打撃をしていることが分かる。
外角低めと内角高めは打率2割未満を示す青色に染まっており、阿部がプロキャリアで達成したことのない打率3割をマークするためには苦手コースを克服することがカギになるだろう。
岩手出身、地元で心機一転
岩手県一関市出身で東北は地元と言える。高校時代は甲子園出場を果たせず、プロ入り後も優勝の味を知らない。故郷に近い球団に移籍し、心機一転を図る気持ちが強いことは容易に想像がつく。
また、長年レギュラーを張っている浅村にとっても、いい刺激になるはずだ。涌井を放出してまで獲得した球団も阿部への期待は小さくないだろう。内外野を守れ、打撃でも渋い働きをする阿部は首脳陣も使い勝手がいいに違いない。
口ひげを蓄えた風貌から「マスター」の愛称で親しまれる。高校、大学、社会人を経てプロ入りし、様々な経験を積んできた「苦味の分かる男」が10年ぶりの優勝を目指す楽天に新味を加えるか注目だ。
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