両軍の指導者は2002年ドラフト同期入団
兵庫県西宮市の野球専門校「関メディベースボール学院」中等部と、同明石市の「明石ボーイズ」のエキシビションマッチが1月16日、大阪・舞洲の大阪シティ信用金庫スタジアムで行われた。
関メディベースボール学院のスラッガー・金本貫汰外野手と明石ボーイズの最速142キロ右腕・福田拓翔投手の対決が注目された中、実はもうひとつの「対決」があった。
関メディの井戸伸年総監督(46)と明石ボーイズジュニア(小学生)の総監督で中学生もコーチとして指導している筧裕次郎氏(38)は、2002年ドラフト同期入団の元近鉄戦士。ともに球団合併に伴ってオリックスに移籍したものの、9位・井戸氏は2005年、3位・筧氏は2008年に引退した。
その後、時を経て、同じ兵庫県内でアマチュア野球の指導者となり、ともに毎年のように全国の強豪高校へ有望選手を輩出。中学野球を盛り上げようと改革を進めるアイデアマンの井戸総監督の呼びかけで、この日の対決が実現した。
3月4日の引退試合へ「1万人プロジェクト」
関メディは3月4日に金本ら3年生の引退試合を予定しており、この日も使用した大阪シティ信用金庫スタジアムに観客1万人を動員しようという「1万人プロジェクト」が進行中。各選手やスタッフ、保護者らがSNSや口コミで集客を図り、3年生の花道を飾ろうと動いている。
明石ボーイズとのエキシビションマッチもその一環で、将来有望な中学生が集まった舞洲には大阪桐蔭や智弁和歌山など強豪校の関係者も視察に訪れた。
さらにスタンドでは、近鉄バファローズを応援していた当時の応援団がトランペットと太鼓で熱烈に応援。ウグイス嬢も手配し、野球YouTube番組で有名な「トクサンTV」も取材、撮影に訪れるなど、中学野球の域を超えたド派手なイベントとなった。
変わりつつある中学野球
井戸総監督は「中学野球を変えたいんです」と熱く語る。学生野球では今も暴力やパワハラなどの問題が明るみになることがあるが、関メディではそういった旧態依然の体質を一掃。保護者のお茶くみ当番もなく、自由闊達な雰囲気が漂う。
「いてまえ打線」で人気を博した近鉄バファローズの雰囲気が受け継がれているのだろうか。選手は失敗を恐れず、思い切ってプレーする。それを正しい方向に導くコーチ陣も井戸総監督が自らの人脈をフル活用して佐藤義則氏、伊藤敦規氏ら元プロのハイレベルな指導者を揃えている。
さらにデータトラッキング機器「ラプソード」や、流行りのリズムトレーニングなども導入。良いと思ったことは全て取り入れるのも、あくまで野球を追究するためだ。
この日の試合には、株式会社日本トリム、株式会社スポーツフィールド、からだ整骨院が協賛。公式戦でもない中学野球に協賛企業がつくなど異例中の異例だろう。全ては井戸総監督の情熱が人を動かし、普通ではあり得ない環境が整ったのだ。
11-7の乱打戦を制して関メディが勝利
試合は初回に2点を先制した明石ボーイズが優位に進めたが、6回に関メディが金本の逆転タイムリーなどで一挙7得点。7回に明石が2点を返して8-7まで追い上げたが、その裏に関メディが3点を奪って突き放し、結局11-7で勝利した。
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両チーム合計28安打、9失策と荒れ気味の試合となったが、ナイターで応援団の大声援を受けながら約3時間の熱戦を演じた両チームの選手にとっては、いい経験となっただろう。
「3月4日はもっといろいろな企画を考えていますよ」。井戸総監督は満面の笑みを浮かべてそう言うと、舞洲の夜空を見上げた。
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