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「村神様」村上宗隆vs「神様仏様」バース様、令和と昭和の三冠王をデータ比較

2022 12/29 06:00SPAIA編集部
ヤクルトの村上宗隆,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

「村神様」が2022年の流行語大賞

2022年の新語・流行語大賞「年間大賞」に選ばれたのは「村神様」だった。「きつねダンス」や「青春って、すごく密なので」などスポーツ関連の流行語を抑えての受賞。サッカー日本代表の長友佑都が連呼した「ブラボー」ももう少し早い時期なら候補に挙がっただろうが、いずれにしてもヤクルトの若き主砲・村上宗隆は2022年のスポーツシーンの中心にいた。

打率.318、56本塁打、134打点の非の打ち所がない成績。村上を含めて三冠王に輝いた8人の中で、同じく「神様」扱いされたのが元阪神のランディ・バースだった。

1985年、打率.350、54本塁打、134打点と打ちまくり、21年ぶりのリーグ優勝に貢献。日本シリーズでも西武を破って日本一に輝いた猛虎打線を、掛布雅之や岡田彰布とともに牽引した。

誰が呼んだか「神様仏様バース様」。その昔、西鉄の大エースだった稲尾和久につけた敬称を引用した。大阪ミナミのケンタッキーフライドチキンの店前にあったカーネル・サンダースの人形を、興奮したファンが「バースや!」と絶叫しながら胴上げ。そのまま道頓堀川に放り投げ、2009年まで24年間も発見されないという都市伝説のような逸話が残る。

それほどバースは虎党から崇められていた。では、「令和の神様」村上とどちらが凄いのだろうか。バースは2年連続三冠王に輝いたが、1985年のデータで比較してみたい。

パワーでは村上がバースを凌駕

2022年の村上と1985年のバースの打撃成績を比較したのが下の表だ。

村上宗隆とランディ・バースの比較表


1985年は130試合制、2022年は143試合制で、本塁打数など積み上げ式の数字だけでは単純比較できないため、セイバーメトリクスも用いて比較した。一見似たような両者の成績だが、項目別に見ると、打者としてのタイプの違いが浮き彫りになってくる。

村上は56本塁打、バースは54本塁打で村上の方が試合数も多いことを考えると大差ないように見えるが、細かく見るとパワーでは村上が上回っているのが分かる。本塁打を打つまでにかかる打数を表す指標「AB/HR」は村上が8.7、バースが9.2。長打率は単打も含むため、「長打率-打率」で算出され、より純粋な長打力を示す「IsoP」は村上が.392、バースが.368なのだ。

バースは江川卓から後楽園球場の場外に放り込んだこともあり、決してパワーがないわけではないが、甲子園の浜風は左打者にとって逆風となることもあって広角に打ち分ける打撃だった。それもあって、単純にパワーを示す項目では村上がバースを凌駕している。本拠地球場の広さなど条件が違うとはいえ、村上の力強い打撃は「史上最強」と言っても過言ではないだろう。

もうひとつ村上が上回るのが四球の多さ。四球数も118で、67のバースの倍近い。「出塁率-打率」で算出され、選球眼を示す「IsoD」は村上が.139、バースが.078だ。バースの四球が少ないのは後ろに掛布、岡田という強打者が控えていたことも大きいだろう。

四球の多さに伴い、出塁率も.458の村上が.428のバースを上回る。ちなみに2022年の村上同様、1985年のバースも最高出塁率に輝いている。「出塁率+長打率」で算出する「OPS」も1.168の村上が1.146のバースより上だ。

確実性ではバースが村上より上

一方、バースが上回るのは打率。村上はシーズン終盤で打率を落とし、最終的には.318だったが、バースは.350の高打率。翌1986年には.389と現在もNPB記録の史上最高打率をマークしている。

もうひとつバースが優れているのは三振の少なさだ。バースは61三振だったが、村上は128三振。打席数÷三振数で算出される「PA/K」はバースの9.34に対して、村上は4.78。三振を1つ喫するまでに選んだ四球の平均数を示す「BB/K」はバースが1.098で村上は0.922となっている。

思い切りのいいスイングが持ち味の村上はその分三振も多いが、バースは三振が少なく広角打法のためレフト方向への単打も多かった。そういった打撃スタイルの違いもあって、併殺打は14と村上の2倍を記録している。

実は村上は足も遅くない。2022年は12盗塁で、3年連続2桁盗塁をマークしている。同じ左打者で併殺打が半分しかないのは、この点も影響しているだろう。

犠飛はバースが3で村上が0。裏を返せば、村上は打球が上がればフェンスオーバーすることが多いとも言える。

総合的に見ると一発長打のパワーでは村上が上、確実性ではバースが上といったところか。村上が三振を減らし、確実性をアップさせれば、間違いなく「史上最強打者」となりそうだ。

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