2021年は隅田知一郎に4球団競合
プロ野球のドラフト会議が10月20日に開催される。プロ志望届を提出した高校生や大学生、指名を待つ社会人選手らは気が気でないだろう。まさしく野球人生を大きく左右する「運命の一日」だ。
ドラフトをよりドラマチックに演出するのが1位指名が重複した場合の抽選。担当スカウトが足しげく通い、実力やポテンシャルを見極めた上で指名しても、抽選ばかりはどうしようもない。当たるも八卦当たらぬも八卦、運を天に任せるしかない。
過去最多の重複は1989年の新日鉄堺・野茂英雄と1990年の亜細亜大・小池秀郎の8球団。野手では1995年のPL学園・福留孝介、2017年の早稲田実・清宮幸太郎の7球団が最多となっている。
今年はそこまでの「超大物」は見当たらないものの、指名が分散すると見られていた2021年も西日本工大・隅田知一郎(現西武)に4球団が競合した。各球団が水面下の情報戦で駆け引きした結果、指名が重複することもあれば、逆に意外な大物を一本釣りできることもある。
重要になってくるのが「くじ運」だ。過去には、左手で当たりくじを引いたことから「黄金の左」などと呼ばれた球団社長や監督がいたのも、それだけ当たりくじを引いた喜びが大きいからだ。
では、高校生ドラフトと大学・社会人ドラフトを再統合して一括開催になった2008年以降で、各球団のくじ運はどうなっているだろうか。ランキングが下の表だ。
佐々木朗希、藤原恭大ら引き当てたロッテは10勝5敗
栄えある1位はロッテ。2021年は市和歌山高・松川虎生を無抽選で指名したが、2019年の佐々木朗希、2018年の藤原恭大、2015年の平沢大河、2013年の石川歩らをことごとくゲット。仮に1位が外れても、外れ1位は2020年の鈴木昭汰、2017年の安田尚憲、2016年の佐々木千隼らを引き当てている。
抽選は10勝5敗と驚異的な勝率。特に外れ1位は5戦5勝と勝率10割だ。佐々木朗希の当たりくじを引いた井口資仁監督は退任。今年のドラフトで抽選になった場合は吉井理人新監督がくじを引くのだろうか。仮にくじを引く場合は、最初の大仕事となりそうだ。
6年連続くじを外している巨人
2位・中日が6勝4敗、3位・西武が5勝4敗で、勝率5割を超えるのは3チームのみ。逆にドラフトで苦戦しているのが巨人とオリックスだ。
巨人は昨年も隅田知一郎を外し、外れ1位で関西国際大・翁田大勢を指名。結果的にはクローザーとして37セーブを挙げたため大きな補強となったが、2016年の田中正義から清宮幸太郎、根尾昂、奥川恭伸、佐藤輝明と6年連続で外している。
外れ1位も2016年の佐々木千隼から村上宗隆、辰己涼介、宮川哲と4年連続外れ。当たりくじを引いたのは2008年の大田泰示と2011年の松本竜也のみで、2勝12敗の勝率.143とくじに泣き続けている。
2022年は高松商・浅野翔吾の1位指名を公表済み。高校通算68本塁打のスラッガーは競合必至だけに、早期の公表は他球団を牽制する意味合いもあるだろう。当たりくじを引けるかどうかはドラフトの成否を大きく左右しそうだ。
オリックスはドラ1抽選で1勝10敗
巨人以上にくじ運の悪いのがオリックスだ。2010年に大石達也、伊志嶺翔大、山田哲人と3回連続で外して、外れ外れ外れ1位で後藤駿太を獲得したことがあり、2018年からは小園海斗、石川昂弥、佐藤輝明と3年連続で外れ。2017年の田嶋大樹が唯一の当たりくじで、通算1勝10敗と勝率は1割を切っている。
ただ、くじ運の悪さを考慮してか、偶然なのか、単独指名も多い。2014年の山崎福也、2015年の吉田正尚、2016年の山岡泰輔は現在も主力として活躍しており、2021年1位の椋木蓮も今年7月20日の日本ハム戦でノーヒットノーランまであと1人という快投を見せた。
また、昨年から2年連続2桁勝利を挙げている宮城大弥は、2019年の外れ外れ1位。石川昂弥(中日)、河野竜生(日本ハム)と比較しても、現状では「残り福」と言えるだろう。
当然ながらアマチュア時代の評価とプロでの活躍が比例するとは限らず、くじ運がチーム強化に直結するわけではない。それでも、ドラマを演出する舞台装置として「くじ」は重要な役割を果たしている。今年はどんなドラマが待っているだろうか。運命のドラフト会議は20日17時から始まる。
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