山下輝の初登板は5回途中2失点
9月22日、ヤクルトのドラフト1位ルーキー山下輝がプロ初先発のマウンドに上がった。毎回走者を許す苦しい内容で5回途中2失点、被安打9。5回を投げきることができず敗戦投手となった。決して好投したとは言えないが、プロ初登板の投手としては十分。2点を失ったものの大きく崩れた感じでもなく、将来的な活躍に期待が持てる内容だった。
身長188センチ、体重100キロの大型左腕である山下は、ドラフト指名後に疲労骨折したこともあり、春季キャンプは二軍スタート。即戦力候補ではあったものの、焦った起用はせず二軍での初登板も7月5日と開幕から3ヶ月以上が経過してからだった。そこから2ヶ月半で掴んだ一軍の舞台。敗戦投手となったのは悔しいだろうが、大きな経験となったはずだ。
今シーズンは残り試合も少なく、一軍での登板機会があるかはわからない。ポストシーズンでも起用はあるかもしれないが、現実的にはフェニックスリーグで登板しつつ、来シーズンを目指すことになるだろう。もちろん一軍の戦力として戦えるように、だ。
そんな山下に吉兆データがある。ヤクルトは2017年の村上宗隆以降、ドラフト1位選手は2年目に大ブレイクを果たしているのだ。
村上宗隆、清水昇、奥川恭伸は2年目に大ブレイク
ヤクルトが過去5年で指名し、交渉権を獲得したドラフト1位の選手は村上宗隆(2017年/九州学院高)、清水昇(2018年/国学院大)、奥川恭伸(2019年/星稜高)、木澤尚文(2020年/慶応大)、そして山下(2021年/法政大)となる。
このなかで唯一の野手である村上は1年目の終盤に一軍デビュー。初打席初本塁打の離れ業をやってのけた。しかしその後は本塁打どころか安打すら記録できなかった。1年目は打率.083(12打数1安打)にとどまっている。しかし2年目は全143試合にスタメン出場し36本塁打を放つ活躍で新人王を受賞。2年目に大ブレイクを果たした。
清水も1年目は苦しんだ。11試合(先発3試合)の登板で0勝3敗、防御率7.27。役割も定まっておらず戦力にはなれなかった。しかし2年目は中継ぎとして開幕すると、52試合に登板し30ホールドを記録。最優秀中継ぎのタイトルを獲得している。
3球団競合の末にヤクルトに入団した奥川は、1年目の最終戦に登板。3回途中5失点と打ち込まれプロの洗礼を浴びた。しかし昨シーズンは間隔を空けながらの登板ではあったが、1年間を走り抜きチームトップタイの9勝を挙げ優勝に貢献。シーズン終盤からは重要な試合を任され、ポストシーズンでもクライマックスシリーズ、日本シリーズともに第1戦の先発を任された。タイトルの獲得はなかったものの、新人特別賞を受賞している。
村上、清水、奥川の3人は1年目に苦しんだものの、2年目に戦力となりタイトル獲得、もしくは表彰を受けるほどの選手になったのである。
木澤は昨季一軍未登板も今季中継ぎで奮闘
木澤もルーキーイヤーの昨シーズンは苦しんだ。一軍での登板がなかっただけでなく、二軍でも22試合(先発11試合)で防御率6.07と振るわなかった。しかし今シーズンは中継ぎとして開幕一軍入りをつかむと、一度も登録抹消されること無く53試合に登板。8勝3敗、8ホールド、防御率3.07と中継ぎの柱になった。
開幕直後はプレッシャーのかからない場面での起用が多かったが、近頃は僅差の試合終盤での登板も増えている。今シーズンの中継ぎ陣を語る上で欠かせない存在と言っても過言ではない。
初打席初本塁打を放った村上でさえ、トータルで見ると1年目から成績を残すことはできなかった。清水、奥川、木澤の投手陣も1年目に一軍で初勝利を挙げるどころか、活躍することもできなかった。それでも秋のフェニックスリーグ、そしてオフから春季キャンプを経て、高校球児が一冬を超えて大きく成長するようにパワーアップ。2年目には一軍の戦力として大いに貢献している。
プロ野球の世界では「2年目のジンクス」という言葉があるように、活躍した翌年に成績が振るわないことも珍しくない。しかし近年のヤクルトのドラ1たちはこれに当てはまっていない。むしろ「ヤクルト版2年目のジンクス」とでも言えばいいのだろうか。1年目に結果を残せなかった彼らが、揃って2年目にブレイクしている。
投手陣の状況を見ると先発は手薄。なかでも貴重な左腕である山下には、来シーズンもチャンスは巡ってくるだろう。そこでドラ1入団の先輩たちのように、結果を残し戦力として貢献できるだろうか。
“ヤクルトのドラ1は2年目に飛躍する”この吉兆が継続すれば未来は明るい。
※数字は2022年9月23日時点
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