首位攻防3連戦で連投なし
8月26日から28日にかけて行われたDeNA対ヤクルト(横浜スタジアム)の首位攻防3連戦は、ヤクルトが3連勝を飾った。これで首位ヤクルトと2位DeNAのゲーム差は7となった。
この3連戦、個人で見ると村上宗隆(ヤクルト)が際立っていた。16打席に立ち11打数9安打、4本塁打、9打点、5四球と圧倒的な成績を残したのだから当然だ。まさに4番としてチームを勝利に導いた。
チームで見ると中継ぎ陣の奮闘が光った。3試合で中継ぎ投手は10回を投げたが、失点はわずかに1。試合終盤、DeNA打線をきっちりと封じ込めた。また、2戦目が試合中盤に大差となったこともあるが、連投した投手は1人もいなかった。石山泰稚、清水昇、マクガフの3人が2試合に登板しているものの、1戦目と3戦目であり連投にはなっていない。
勢いのある2位のDeNA相手だっただけに、大差であったとしても勝ちパターンのうち1人くらいは起用したくなりそうなもの。しかし高津臣吾監督は大差となった2戦目で勝ちパターンを1人も起用していない。結果、7回に登板した木澤尚文は1点を失ったものの、勝敗に影響はなかった。
この徹底した投手起用は、中継ぎ陣の登板試合数にも表れている。
30試合以上登板がリーグ最多の8人
8月28日終了時点でチーム最多の登板数はマクガフの44試合。これはセ・リーグで9位タイになり、トップのエスコバー(DeNA/57試合)とは13試合もの開きがある。
一方で30試合以上に登板している投手は合計8人いる。これはセ・リーグのなかで最も多い。特定の投手の登板を偏らせることなく、複数の投手に分散して起用してきた裏返しだ。試合中の負傷や新型コロナウイルス陽性判定を受けた影響で、中継ぎ投手の意図せぬ登録抹消もあった。だからこそ登板数が嵩んでいないともいえる。
それでも大きく崩れることなく運用ができたのは、試合を大きく壊さない実力を持っていたからだろう。一時期より防御率が悪化したとはいえ、ベンチに入る8人ないしは9人の中継ぎ投手全員が、防御率3点台以下をキープしているのが大崩れしていない証拠でもある。
60試合以上登板が今季0人の可能性大
ここまでヤクルトは116試合を消化しており残りは27試合。マクガフがこのペースで登板しても54試合にしかならない。これは驚異的な”少なさ”だ。
近年のプロ野球では上位進出を目指す上で、守護神、セットアッパーをはじめ7回以降を任される”勝ちパターン”を確立することがあたりまえとなった。
優勝するチームは当然勝ち試合が多いため、勝ちパターンの投手に登板が集中する。2010年以降のセ・リーグ優勝チームを見ても、短縮シーズンとなった2020年を除いて60試合以上に登板した投手が不在のチームはひとつもない。
昨シーズンのヤクルトも清水昇(72試合)、マクガフ(66試合)、今野龍太(64試合)と60試合以上に登板した投手は3人もいた。それが今年はゼロとなりそうなのだ。中継ぎの起用は先発投手の調子や試合展開に大きく左右される。また今年は新型コロナウイルスの影響もある。それでも60試合以上の登板がひとりも出なさそうなのは驚異的だ。
今年のヤクルトは、先に記したとおり意図せぬ登録抹消があったとはいえ、”絶対的な勝ちパターンを作る”というよりも、”中継ぎ陣全体の底上げをする”方針にも見える。
残り27試合。ヤクルトは60試合以上の投手が0人でリーグ優勝を勝ち取ることができるだろうか。もしかしたらこれが新しいブルペンの運用方法となるかもしれない。
※数字は2022年8月28日終了時点
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