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ヤクルト優勝への使者は高橋奎二 初タイトル獲得で燕のエース襲名なるか

2022 9/6 06:00勝田聡
ヤクルトの高橋奎二ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

エース不在の先発ローテーション

勝負の9月に入りペナントレースも佳境を迎えつつある。セ・リーグでは快進撃を続けていたヤクルトが失速。時を同じくしてDeNAが猛追を始め、最大17.5ゲーム差あった両チームのゲーム差が一時4差に縮まったことで混沌としてきた。

8月下旬の直接対決でヤクルトが3連勝し再びゲーム差は開いたものの、直接対決は6試合残っている。まだ優勝の当確ランプは灯っていない。

ヤクルトは村上宗隆をはじめとした強力打線、そしてマクガフと清水昇を中心とした強固な中継ぎ陣がチームを支えてきた。一方で先発投手は、やや苦しんでいる。

その顔ぶれはこうだ。高橋奎二(8勝/防2.63)、サイスニード(8勝/防3.98)、原樹理(7勝/防4.64)、高梨裕稔(7勝/防3.34)、小川泰弘(6勝/防3.18)、石川雅規(5勝/防3.90)、小澤怜史(2勝/防3.73)。

崩壊はしていないが、絶対的な存在もいない。誰しもが認めるエースがいないのが現状だ。奥川恭伸の離脱も響いている。この状況の中で、エース”候補”と呼ばれてもおかしくないのが左腕の高橋だ。

石井一久以来となる最多奪三振の可能性も

昨年のシーズン終盤、高橋は奥川とともに大事な試合を任され、結果を残してきた。優勝が決まった試合では中継ぎとして登板し、たすきをつないだ。巨人とのクライマックスシリーズ・ファイナルステージでは6回2失点の好投。日本シリーズではプロ入り後、初完封を達成するなど一気に飛躍した。

その勢いのままに今シーズンはここまで17試合の先発でチームトップタイとなる8勝をマークし、規定投球回には到達していないものの113奪三振はリーグ4位タイ。奪三振率も9.91を記録している。100投球回以上を投げているセ・リーグの投手でトップの数字。近年のヤクルトにはほとんどいなかった先発型の本格派だ。

奪三振数トップの戸郷翔征(巨人)は131個とやや離れているものの、ヤクルトは巨人よりも4試合消化が遅い。チームとしては2000年の石井一久(現楽天監督)以来、22年ぶりとなる最多奪三振のタイトルへの期待もかかってくる。

一方で与四球は37個。与四球率3.24は同じく100投球回以上を投げているセ・リーグの投手でワースト2位。奪三振は多いものの、与四球も多く長いイニングを安定して投げられない傾向があった。

しかし、8月以降は3試合連続でQS(6回以上自責点3以下)を達成し、2勝0敗、防御率1.89と安定。与四球率3.32と、この部分の改善はされていないものの、奪三振率は9.47とほぼ変わらず試合を作ってきた。3試合連続QSは躍進を遂げた昨シーズンもなく、自身3年ぶりのことであった。まさに一皮むけた感がある。

勝負どころでの先発起用

高橋は8月25日の広島戦で登板後、8月29日に登録を抹消された。故障などの報道や公式発表もなく次回登板は不透明ではある。しかし故障でなければ、これから先に迎える優勝へ向けた大事な試合での先発起用が予想される。

6試合残っているDeNAとの直接対決。9月11日、12日に行われる2連戦、さらには同23日から25日の3連戦、勝負どころとなりそうなDeNA戦に2試合登板することも可能だ。

安定して試合を作ることができるようになった高橋が、この大一番で快投を見せることは大前提。さらに最多奪三振のタイトルを奪取することができれば”エース候補”ではなく”エース”と呼ばれるようになっても不思議ではない。

圧倒的なエース候補だった奥川が戦列を離れている今シーズン、高橋がチームを優勝に導きエースを襲名するかもしれない。

※数字は2022年9月3日終了時点

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