昨季までわずか1安打、長岡が規定打席目前
昨シーズン日本一に輝いたヤクルトは、オフシーズンにFA選手の獲得や大物外国人選手の獲得はなかった。補強はドラフト指名選手と新外国人選手でコールとスアレスを迎え入れたのみ。つまり投手・野手ともに日本一メンバーから”ほぼ”入れ替え無しで今シーズンを戦っていることになる。しかし、だからといって新戦力がいないかというとそんなことはない。
昨シーズンは一軍の戦力として貢献できなかったが、今シーズン欠かせない戦力となっている選手は多くいる。
その筆頭格が長岡秀樹だ。昨シーズンまでの2年間でわずか11試合の出場しかなく安打も1本だけ。それもルーキーイヤーに放った1本で、昨シーズンは打率.000(9打数0安打)に終わっており、一軍の戦力としては貢献できなかった。それが1年で内野の要として欠かせない存在になっている。
新型コロナウイルスの陽性判定を受け一時離脱期間があったものの、ここまで遊撃のポジションを守り続けてきた。主に8番打者として7本塁打、41打点の成績を残しているのは、“当てにいく“のではなく”強く振る”ことを心がけているからだろう。レギュラーの証でもある規定打席到達も目前に迫っている。
8月に入って打率.159と調子を落としているのが気がかりではあるが、打率.177と不調だった4月を乗り越え5月には打率.314と調子を上げた。勝負どころの9月に再度、盛り返すことができるかは、チームの得点力に大きな影響を与えそうだ。
また、高卒2年目の捕手・内山壮真は昨シーズン6試合の出場にとどまっていた。しかし今シーズンはすでに57試合に出場。正捕手・中村悠平の63試合と遜色ない。もちろん中村に離脱期間があったためではあるが、それでも高卒2年目の捕手がこれだけの出場機会を得るのは”お試し”の域を超えている。
ルーキーの丸山和郁も主に試合終盤の守備固めとして45試合に出場。売りである守備や走塁でミスが見受けられるが、それでもベンチは一軍で起用し続けている。成長を促すためだけではなく、戦力として見ているからだろう。
昨季一軍未登板の木澤と久保で中継ぎ陣に厚み
投手では木澤尚文と久保拓眞の2人。2020年ドラフト1位で指名を受けた木澤だが、昨シーズンは一軍で未登板に終わった。一軍に昇格したのも優勝が決定したあとの1試合だけと苦しい一年だった。
しかし、今季は開幕一軍入りを果たすと中継ぎで一軍に定着。ここまでチームトップの42試合に登板し7勝3敗、5ホールド、防御率3.18の成績を残している。勝ちパターンの一角ではないためホールドやセーブ数は多くないものの、僅差のリードや同点の場面での火消しや、先発投手が早期降板した際のロングリリーフなど出番は多岐にわたる。登板後に味方が逆転して勝利投手になることも少なくないことは、チームトップの7救援勝利に表れている。
一方の久保は貴重な中継ぎ左腕として16試合に登板して4ホールド、防御率3.68。一見すると防御率は良くないが、7月以降の14試合に限れば失点したのはわずか1試合のみ。防御率0.71と圧倒的な成績を残している。田口麗斗頼みだった左のカードが2枚になった。
久保は大卒4年目になるが、1年目と2年目はともに防御率5点台。3年目の昨シーズンは一軍未登板。今シーズンはまさに崖っぷちのシーズンだった。そのなかで4月1日に登録されると2試合の登板でいずれも失点。4月11日には登録を抹消された。それから3ヶ月の二軍調整期間を経て7月12日に一軍へ再昇格を果たし、その後は防御率0点台の快投を続けている。
ブルペンに左の切り札として起用できそうな久保が加わったのは、運用面で非常に大きい。試合の序盤や中盤でも左打者に対し“左のカード”を切ることができるようになった。開幕からフル回転を続ける木澤と、左のカードになりうる存在の久保はキーマンとなってもおかしくはない。
ヤクルトは前半戦の快進撃から一転、後半戦ではかなり苦しんでいる。残り31試合。最後の最後で勝ち切るためには”新戦力”の力が欠かせない。
※数字は2022年8月24日終了時点
《関連記事》
・長打力は山田哲人以上? 底知れぬ可能性見せるヤクルト長岡秀樹が持つ運と実力
・2016年「高校BIG4」今井達也、寺島成輝、藤平尚真、高橋昂也の現在地
・ヤクルトの顔は絶望シーズンのドラフトにあり? 2017年に村上宗隆、1970年には若松勉獲得