横浜スタジアムに戻ってきた「ヤスアキジャンプ」
横浜スタジアムの9回に、「ヤスアキジャンプ」が戻ってきた。
ここ数年間は不振に喘ぎ、ルーキーイヤーから守ってきた守護神の座を明け渡すなどもがき苦しんできた山﨑康晃。しかし今シーズンは圧巻の投球を見せ、史上最年少での通算200セーブも達成。完全に守護神の座を取り戻してみせた。
山﨑はここまで47試合に登板して31セーブを挙げ、防御率1.57と圧倒的な投球を披露。見るからにストレートの力強さが増し、ツーシームで空振りを奪うシーンも増えた。三振の数も増えているのだろうと思いきや、今季ここまでの奪三振率は6.65。最多セーブに輝いた2018年(同10.07)、2019年(同8.10)ほどの奪三振率は記録していない。むしろ奪三振率だけで言えば、キャリア最低の6.38だった2021年とあまり変わらない。
そんな中でもキャリアハイ級の成績を残せている要因とは何なのだろうか。
不振脱却、キャリアハイ級の成績マーク
今シーズンの成績を見ると、防御率1.57という数字は、このままいけばキャリアハイとなる。その大きな要因として、1イニングあたりに出した走者の数を示すWHIPが0.70と抜群の数字を残していることが挙げられる。
これは12球団で40投球回以上のリリーフ投手で3位の好成績だ。2018年は1.03、2019年は1.05で最多セーブに輝いていることから、今シーズンどれだけのハイパフォーマンスを見せているかがうかがえる。
このWHIPが、2020年は1.74、2021年は1.31だった。与四球が増えていたわけではないが、とにかく被打率が悪かった。平均で2割台後半~3割打たれている状態では、抑えることの方が難しい。
今シーズンはこの被打率が大幅に改善され、さらに与四球も減っている。被打率.155はキャリアハイの数字で、40投球回以上のリリーフ投手では7位。BB%(四球数を対戦打者数で割ったもの)もキャリアハイの4.2%で同3位の数字。これがそのまま、成績にも表れているのだ。
ストレートとツーシームの被打率が劇的に改善
続いて、勢いを取り戻したように見えるストレートとツーシームについても見ていこう。2021年と2022年で、平均球速、空振り率、被打率をまとめたものが下記の表だ。
ストレート、ツーシームとも球速が上がり、空振り率が向上、被打率は劇的に改善されていることがわかる。ただ、球速が2キロほど上がっただけでここまでの劇的な変化が起こるとは考えづらい。制球力や回転数、フォームの変更、身体のコンディションなどの要因もあるのだろう。
また、今シーズンのDeNAは、リリーフ陣の運用がうまくいっている。勝ちパターンを見ると、伊勢大夢、エスコバーに2年目の入江大生が加わったことで、9回の山﨑につなぐまでの道筋がつけやすくなった。
さらに連投が続いたり、球数が多くなった日の翌日などは、ベンチ外の日が設けられるようにもなった。当然山﨑も当てはまり、その日は残った投手で勝ち試合を死守している。こういった運用もあり、フレッシュな状態を保つことができているのではないだろうか。
一つひとつは小さなことで、劇的な効果は期待できない。しかしそれらを積み重ねたことで、今シーズンの山﨑の復活があるのかもしれない。
愛嬌満点の男が見せた鬼のような形相
8月20日、マウンド上の山﨑は鬼のような形相を見せていた。
横浜スタジアムで行われた広島戦、6-5の9回に登板。一死から安打を許し、盗塁と送球エラーで一死三塁のピンチを迎えたときのことだ。堂林翔太を三ゴロに打ち取り、本塁アウト。最後は羽月隆太郎を全球ストレートで空振り三振に打ち取り、雄たけびを上げた。
入団時から愛くるしい笑顔でファンの人気をさらい、時には人目もはばからずに涙を流す。そんな男が見せた表情に、今シーズンに懸ける想いの強さを感じた。
かつてのように三振の山を築く山﨑はいない。しかしここにきてストレートは自己最速を更新する155キロを計測。制球力や投球術も磨かれて、パフォーマンスとしてはここからが全盛期とも言える。
シーズンも残りあとわずか。DeNAにとっては超過密日程ということもあり、逆転優勝は簡単なことではない。しかし、ヤスアキが、そしてDeNAがここから見せる「反撃」に期待したい。
※成績は全て9月4日終了時点
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