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ヤクルトの顔は絶望シーズンのドラフトにあり? 2017年に村上宗隆、1970年には若松勉獲得

2022 8/13 08:00勝田聡
ヤクルトの村上宗隆,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

村上宗隆に膨らむ三冠王への期待

昨シーズンからヤクルトが大きく変わった。2020年シーズンの最下位からセ・リーグ制覇、そして日本一。今シーズンも開幕から首位を走っている。7月以降、新型コロナウイルスの影響もありやや停滞しているが、それでも2位とのゲーム差は6もある。

チームの中心にいるのはもちろん村上宗隆だ。昨シーズンは全試合4番として出場し本塁打王のタイトルを獲得。さらにはシーズンMVPも受賞した。今シーズンも4番としてチームを引っ張り、本塁打王と打点王は独走状態。首位打者も射程圏内としており、三冠王への期待も膨らんでいる。

そんな村上は2017年のドラフト1位でヤクルトに入団した。村上は別格だが、その他の同期入団の選手たちも4年目の昨シーズン以降、チームに欠かせない存在となりつつある。

塩見泰隆がリードオフマンに定着

ドラフト4位の塩見泰隆は昨シーズンからリードオフマンに定着した。初めて規定打席に到達し2桁本塁打、2桁盗塁を記録。中堅の守備でも走力を生かした守備範囲、そして肩で幾度もチームを救った。今シーズンも不動のレギュラーとしてチームを牽引しオールスターゲームにも出場。チームを代表する選手になりつつある。

その他の野手では6位の宮本丈、7位の松本直樹もレギュラーではないが控えとして結果を残した。

昨シーズンの宮本は主に代打で出場。代打打率.313(32打数10安打)と好成績を残した。川端慎吾(代打打率.366)が神懸かっていたこともあり2番手的な存在だったが、切り札と言ってもおかしくはなかった。松本も今シーズン序盤に2試合連続本塁打を放つなど、中村悠平が不在時を支えている。

投手陣では2位の大下佑馬が昨シーズン30試合に登板し、6位の金久保優斗も昨シーズン4勝を挙げた。目立った活躍ではないものの昨シーズンの優勝には欠かせなかった。

村上だけでも十分な成果といえるドラフトだが、それ以外の選手たちもこれだけの結果を残しているのである。同一年度の指名選手でこれだけの選手が揃うことは非常に稀だ。現に2017年のドラフト指名選手を見返してみると、現時点で複数のレギュラーが存在しているのはヤクルトだけしかない。

ドラフトの成否がわかるのはもっと先のことかもしれないが、現時点でみても2017年のヤクルトの指名は大成功だったといっても差し支えないだろう。

2017年ドラフト・ヤクルト指名選手,ⒸSPAIA

球団史上最低勝率の1970年ドラフトでは若松、杉浦ら指名

ドラフトが大成功となった2017年を振り返ってみると、シーズンはとんでもなく苦しかった。球団史上ワーストとなる96敗(45勝)を喫し、首位からはなんと44ゲームも離されていたのだからそれも当然だ。2年前にリーグ優勝したとは思えない低迷ぶりだった。

そんな年のオフに行われたドラフト会議で指名された選手たちが、5年でチームを支える存在となったのは感慨深い。実はヤクルトにとって苦しかったシーズンのオフに指名された選手が、チームの骨格となることは初めてではない。

今から52年前にあたる1970年がそうだった。1970年は130試合制だったこともあり92敗(33勝)だが、勝率はなんと.264で96敗した2017年の.319を大きく下回っていた。

しかしこの年のドラフトでは、3位で後のミスタースワローズこと若松勉、10位では通算224本塁打の大砲・杉浦享を揃って指名。この2人だけでも大成功だが、その他にも内野全ポジションをこなし引退後も2005年までコーチとして支えた渡辺進、通算273試合に登板したアンダースローの会田照夫も指名している。

1970年ドラフト・ヤクルト指名選手,ⒸSPAIA


1位の山下慶徳だって目立った成績ではないものの、855試合(南海での93試合含む)に出場している。多くの選手が後のチームの骨格となったのだ。

村上をはじめとした”2017年ドラフト入団組”はまだ5年目。プロ野球人生はまだまだ続く。 一時の輝きで終わるのではなく、”1970年ドラフト入団組”のように多くの選手が長くチームを支える存在となることに期待したい。

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