機動力野球の担い手
現在リーグ3位の阪神。首位のヤクルトとのゲーム差は8.5と未だ大きいが、シーズン序盤の低迷を考えれば、ここまで驚異的な巻き返しを見せている。エース・青柳晃洋の絶対的な安定感、主軸の大山悠輔、佐藤輝明が好不調の波はありながらもそれぞれ打点を稼ぐなど、投打の柱の活躍は大きな要因だ。
一方、リーグ随一を誇る機動力も阪神の武器。チーム盗塁数80はリーグ断トツで、スタメンには足を使える打者が並ぶ。ここまで自己最多の87試合に出場し、リーグ4位タイの15盗塁を決めている島田海吏の存在も大きい。
課題は対左投手
プロ入り5年目の島田の一軍での最多出場試合数は昨季の57試合。今季は後半戦が始まったばかりの段階で既に出場試合数を大幅に更新している。6月1日に1番に抜擢されると、そこから10試合連続で1番で先発出場。2番・中野拓夢、3番・近本光司との快足トリオが幾度となく好機を作り、交流戦の2位などチームの快進撃に貢献した。
6月22日からは中野が1番、島田が2番にまわるも、依然として上位打線の一角として出場を続けている。しかし、レギュラーの座を確固たるものにするためには、左投手を克服しなければならない。対右投手に対しては.294と打てているが、対左投手の打率は.197。島田の足は捨てがたい武器だが、左の好投手が先発の際には先発出場させるかいなかを躊躇してしまう。
7-5と勝利した8月7日の広島戦では、同点の8回2死二塁の場面で左腕・森浦大輔の直球を左中間へ弾き返し、左投手でも打てることを印象づけたが、こうした打撃の積み重ねが首脳陣からの信頼を得るための近道だろう。
初球をとらえた安打が多い
7月は打率.197、出塁率.246と低迷していたが、8月に入ってからは7試合中5試合でマルチ安打をマークするなど好調。打率.342(38打数13安打)、出塁率.359と大幅に上昇している。得点圏打率も.600と高く(シーズン通算でも.350と高い)、チャンスメイクだけでなく、走者がいる場面での打撃も期待できる状態だ。
際立つのは積極性。初球をとらえた安打が目立ち、カウント0-0での打率は.361(36打数13安打)。浅いカウントでの打率も高く、カウント1-0では.346(26打数9安打)、カウント1-1では.364(22打数8安打)のハイアベレージを残している。積極的に振っていく打撃は、足同様に相手にとってはやっかいだ。
対直球の打率が改善
いい打者の条件として、直球をしっかりと打てるかどうかも指標となるが、島田は対直球の打率が.330と高く、昨季の.259から大きく改善されている。対スライダーが.250、対カーブが.067、カットボールが.273、ツーシームが.231と、これといって得意な変化球は見られないが、現状は直球をしっかりととらえることが第一。変化球にも徐々にアジャストしていくことが、当面の課題になるだろう。
島田が2番に定着することで、チャンスに強い近本(得点圏打率.321)を3番に置くことができ、1番の中野を含め、足を使える3人が並ぶ嫌らしい上位打線が完成する。島田が引き続きアピールを続けて結果を残し、レギュラーの座を大きく手繰り寄せることができる頃に、阪神打線は今よりも脅威になっているはずだ。
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