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【高松宮記念】本命候補は折り合い改善したオフトレイル 穴馬ペアポルックスとともに一発を期待

2025 3/29 18:30山崎エリカ
2025年高松宮記念のPP指数,ⒸSPAIA

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良馬場ならば内と前が有利に

高松宮記念が行われる中京芝1200mは、3~4角が鋭角でスパイラルカーブとなっており、内が有利なコース。2023年のように馬場が不良まで悪化すると外の方が伸びるが、良馬場ならば内有利の傾向だ。

また高松宮記念は中山芝1200mのスプリンターズSと比べると、前からでも押し切りやすいコースで、過去10年では逃げ1勝、先行6勝、中団2勝。2着でも逃げ~中団で6回、3着でも逃げ~中団で7回も馬券に絡んでおり、差し、追込馬は届きにくいのが特徴だ。まれに追い込みが届くこともあるが、それらは2022年のナランフレグのようなイン差しである。

今回は2024年のスプリンターズSを激流にしたピューロマジックは不在。芝1200mとしては逃げ、先行馬は手薄な組み合わせとなっただけに、ここは内と前が有利になる可能性が高いと見ている。


能力値1~3位+香港スプリント3着馬の紹介

2025年高松宮記念のPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位タイ トウシンマカオ】
昨秋のセントウルSで重賞4勝目を挙げ、2走前のスプリンターズSでも2着だった。2走前は2番枠から五分のスタートを切り、無理なく中団の最内を追走。道中ではママコチャをマークしながら進めた。

3~4角でもママコチャをマークしながら最短距離を通って、4角出口で同馬が外を選択すると、前のスペースが全開。直線序盤で最内からしぶとく伸びて3列目に上がり、ラスト1Fで捌いてルガルとの差を詰めたが、クビ差足りなかった。

前後半3F32秒1-34秒9の激流。ピューロマジックが飛ばしたことで縦長の隊列になった。4角出口で好位勢が外に広がったことで、中団から最短距離を通ることができ、100点満点の騎乗だった。

前走の香港スプリントでは9着。ここでは前有利な展開を5番枠から出遅れ、押して中団の中目まで挽回する形になった。3~4角で徐々に外に誘導したが、進路を作れずに後方列となり、直線序盤で下がってしまう。ラスト1Fで大外に誘導したが、さすがに届かなかった。

前走は進路を作り切れなかったことや、直線序盤で置かれて下がったことが敗因。2走前のスプリンターズSで好走した疲れで本調子ではなかったように映り、立て直されての今回では巻き返しが期待される。

本馬は極悪馬場で行われた2023年の高松宮記念では15着に敗れているように、道悪が苦手。重馬場でタフな状況だった昨年も6着だったように、時計の掛かる馬場よりも高速馬場でこそのタイプだ。今年は晴れ予報。良馬場で行われる点は好ましい。

また本馬はこれまでの重賞4勝が全て外差しだったように、外からエンジンをかけていく形がベストのタイプ。今回の12番枠も本馬としては好ましいが、GⅠ・6勝馬のグランアレグリアでも3~4角の外を回って3着(繰り上がり2着)に敗れていることを考えると、上位争いには加わっても勝ち負けに持ち込むのは簡単ではないだろう。

【能力値1位タイ ナムラクレア】
過去2年の高松宮記念で2着。2024年の高松宮記念は、3番枠からまずまずのスタートを切ったが、促してもあまり進まず、中団の中目からの追走。道中はビッグシーザーの後ろから、前のスペースを維持して進めた。

3~4角では前とのスペースを詰めて3列目の最内から直線へ。直線序盤で抜け出したマッドクールの後ろの最内から2列目まで上がり、ラスト1Fでしぶとく伸びてマッドクールを猛追したが、アタマ差で惜敗した。

ここでは3着のビクターザウィナーに3馬身差をつけており、自己最高指数を記録。ただし、内が圧倒的に有利な馬場で、逃げながらも最後の直線で外に誘導されたビクターザウィナーが自滅する形だった。一方、最短距離を通ったマッドクールと本馬は馬場傾向の恩恵を受けた面がある。

本馬は一昨年と比べて、ゲートと二の脚にやや甘さを見せており、テンがとても速い決着だったスプリンターズSはともかく、前走の阪神C(芝1400m)でも、16番枠と外枠ではあったが、促してもあまり進まずに中団やや後方から追走していた。

前走時は馬場の内側が悪化し、外差し有利の馬場となっていたために3~4角の外々から大外一気を決めて勝利した。

ただ、内有利の中京芝1200mで、14番枠から3~4角で外を回るロスを作った場合はどうか? 芝1400m以下では抜群の安定感を誇る本馬だが、2022年のスプリンターズSでは、3~4角で中団の外々を回るロスを作って5着に敗れていることを考えると危うい。

【能力値3位タイ ママコチャ】
2023年5月の安土城S(L・京都1400m)では、GⅠでも勝ち負けになる指数を記録して勝利した馬。同レースでは12番枠からまずまずのスタートを切り、二の脚で楽に先行。内のプルパレイを行かせて好位の外目を追走した。

3~4角でもペースが上がらず、ブレーキをかけつつ外々を回り、4角でさらに外へ進路を取りつつ直線へ。直線序盤で先頭とは1馬身ほど差があったが、追われるとグンと伸びて一気に抜け出し、ラスト1Fで外から迫るビーアストニッシドらを問題とせず、2着馬に3馬身差をつけて完勝した。

本馬は前で立ち回れて、最後の直線でもうひと脚使えることが魅力。同年のスプリンターズSでも6番枠からまずまずのスタートを切り、そこから押して好位中目を追走した。

3角手前で外に出て、4角で2頭分外から2番手のテイエムスパーダをかわし、先頭のジャスパークローネから半馬身差の2番手で直線へ。直線序盤でじわじわ伸びてラスト1Fでジャスパークローネを捉え、内から捌いて上がったマッドクールとの叩き合いをハナ差で制した。

このスプリンターズSは内と前が有利な展開。これを3角手前で思い切って外に出て、ロスを作りながら勝利した内容は濃い。

2024年の高松宮記念は、休養中に体調を崩したようで前哨戦を使えなかったのが誤算。マッドクールとは1秒差の8着に敗退した。しかし、本馬はその後に立て直されて、昨秋のセントウルSでは半馬身差の2着。強豪相手の昨年のスプリンターズSでも小差の4着に善戦している。

今年も前哨戦のオーシャンSを勝利。中山開幕日で前と内が有利の展開に恵まれての勝利ではあったが、2023年のスプリンターズS優勝時や昨年のセントウルS2着時などと同等の指数を記録しており、6歳になってもパフォーマンスの低下は感じさせない。

ただ年齢を重ねて連続好走が難しくなっている面があり、休養明けの前走オーシャンSで好走した後のここは、先週の阪神大賞典4着のショウナンラプンタのように、疲れが残って指数がダウンする可能性もある。

【能力値3位タイ ビッグシーザー】
2歳~3歳時にかけて4連勝でマーガレットSを勝利し、次走の葵Sでも断然1番人気に支持された。葵Sはロケットスタートのモズメイメイをかなり押して追いかけて3着に敗れたが、2022年2歳~2023年3歳春のスプリント路線では主役の存在だった。

古馬と対戦するようになってからはなかなか勝てず、昨年1月の淀短距離S(L・京都芝1200m)でようやく5勝目を上げた。その後も順風満帆ではなかったが、昨秋は京都芝1200mのオパールSと京阪杯で連勝した。

前走の京阪杯では3番枠からやや出遅れ、そこからかなり押して位置を取りにいった。内枠で枠の並びも良かったために、楽に2列目の最内を確保。道中では前のスペースを維持して3角へ。最内を通って4角出口で前のウインカーネリアンの外に出て直線に向いた。直線序盤で同馬と3/4馬身差の2番手。ラスト1Fでしぶとく伸びて、ウインカーネリアンを捉えクビ差で勝利した。

前走は京都芝1200m戦らしくペースが上がらず、前有利の展開。展開に恵まれたこともあり、ここでは自己最高指数を記録している。古馬になってからは、ペースが上がりにくい京都芝1200mで3勝を挙げているように、平均ペースでこそのところがある。

今回は休養明けで相手強化の一戦。それほどペースが上がらない可能性が高いと見ているが、今回のメンバーだと3番枠でも前走ほど良い位置が取れないだろう。昨年の高松宮記念でも1番枠ながら中団からの追走となっていたことも踏まえて、割り引きたい。

【香港スプリント3着 サトノレーヴ】
3歳4月と遅いデビューになった芝1600mの未勝利戦を勝利。その後は条件戦で一度も連対を外すことなく芝1200mで順調にキャリアを積んだ。昨年の阪急杯こそ4着に敗れたが、長期休養明けで距離延長、出走予定だったオーシャンSが除外濃厚のため1週間前倒しの出走となったのが背景にある。その後、函館スプリントSとキーンランドCを連勝した。

キーンランドCでは10番枠から五分のスタートだったが、二の脚が速く楽に先行。他馬の出方をうかがいながら好位の中目で進めた。3~4角で先頭のセッションの後ろから上がって、4角出口で先頭列2頭の外に出た。直線序盤ですっと伸びて先頭列に上がり、ラスト1Fでそのまま抜け出して1馬身半差で完勝した。

2走前のスプリンターズSでは、休養明けのキーンランドCで好走した反動もあって出遅れ、後方からの追走となり、3~4角では外から押し上げて7着だった。ここで初めて5着以下に敗れる結果となったが、前走の香港スプリントでは巻き返して3着に健闘した。

前走でも4番枠からやや出遅れたが、押して好位の直後の内目まで挽回した。3~4角では最内を通って3列目で直線へ。直線序盤で2列目からすっと伸びて3番手に上がり、ラスト1Fで外目に出ながら2番手に上がったが、ヘリオスエクスプレスに少し前に出られて3着だった。

前走は前後半3F34秒39-33秒76の平均ペース。香港のスプリント王者カーインライジングとは3/4馬身差だったが、ラスト1Fでは先に抜け出した同馬に対してしっかり差を詰めていた。

本馬は日本で超高速馬場や重馬場をこなしており、馬場不問。香港スプリントの指数はわからないが、算出した場合には間違いなく能力値上位にくる馬である。今回は前走を大目標にした後の始動戦になるが、警戒が必要な一頭だ。


本命候補は折り合いに改善見られたオフトレイル

オフトレイルは芝1800mのラジオNIKKEI賞優勝の実績があるが、その次走の毎日王冠で前に壁が作れず、かなり掛かって12着と崩れ、スプリント路線に転向した。その後は芝1400mのスワンSで2着、阪神Cで3着と健闘した。

3走前の阪神Cでは14番枠からやや出遅れて押していったが、テンに置かれて後方からの追走になった。道中は後方2列目の外で前のスペースを意識しながら3角を迎えた。

3~4角でも淡々と流れてはいたが、コントロールしながら中目を通り、直線で前の各馬が馬場の良い外に進路をとるなかで本馬は馬場が悪化した中目を選択。それでも前との差をしっかり詰めて、ラスト1Fで内を捌き3着に入った。

本馬は折り合いに難があり、4走前のスワンS時のように芝1400mでも極端なハイペースにならないと厳しいと見ていたが、京都芝1400mでペースが上がらなかった3走前でも折り合いがついていた。

どうやら前にスペースを作った方がコントロールしやすいタイプのようだ。これをテン乗りで一発回答を出した菱田裕二騎手は素晴らしいものがある。

初めての芝1200m戦となったオーシャンSでも後方の外目から前のスペースを意識し、コントロールして乗られていたが、中山開幕日で内と前有利な馬場と展開に泣く形で9着。それでも3~4角の大外から最後の直線でしっかり伸びて前との差を詰めており、はまった時が怖いと感じさせた。

また前走では前半3Fを35秒2で通過しており、多少なりともテンに置かれなくなってきているのもここへ向けて好材料だ。今回は2度目の芝1200m戦で、前走時よりもペースが上がることが予想される。本馬の一発に期待したい。


穴馬候補は大外枠でも逃げが可能なペアポルックス

前走オーシャンSの2着馬。前走では12番枠からまずまずのスタートを切り、すっとハナを主張した。内から好スタートを切ったママコチャの前に出ると、テイエムスパーダを行かせて2番手外を追走。道中はスローペースの2番手外で進めて、3~4角でも我慢した。

しかし、テイエムスパーダが下がってくるので、4角で先頭に立ち、2馬身差のリードで直線へ。直線序盤で追われて1馬身3/4差のリードを保っていたが、ラスト1Fでやや甘くなり、ママコチャに捉えられて半馬身差の2着となった。

前走は前有利の展開に恵まれての2着だったが、今回も案外と前が手薄。テンの速い内枠のウイングレイテストがある程度は抵抗するとしても、楽に逃げる可能性が高いと見ている。

今回は能力値上位馬の大半が休養明けの一戦。またママコチャは休養明け好走の反動で指数ダウンの懸念がある。成長期の4歳馬である本馬を穴馬に推したい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)トウシンマカオの2走前の指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値 =(前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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