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覚醒前夜?日本ハム清宮幸太郎が本物のスラッガーへ、同期・村上宗隆との違い

2022 7/12 06:00SPAIA編集部
日本ハムの清宮幸太郎,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

5年目で初の2桁本塁打

日本ハムの清宮幸太郎がプロ入り5年目で初めて本塁打数を2桁に乗せた。7月7日のロッテ戦(ZOZOマリン)、織姫と彦星を橋渡しするかのごとく、七夕の薄暮の空に天の川のような美しいアーチを架けた。

今季10号。ドラフトで7球団競合したスラッガーとしては、「遅ればせながら」と言わざるを得ないが、初の2桁本塁打はひとつの節目だ。

ここまで73試合に出場して、打率.245、11本塁打、23打点。7月はすでに4本塁打と調子を上げている。新庄剛志ビッグボスから時には厳しい言葉もかけられながら一歩ずつ着実に成長していると言える。

ピンポイントで捉えた時の飛距離は天性のものだ。力みのないスイングながら、打球は無重力空間にあるかのように伸びていく。スラッガーとしての素質は疑いようがないだろう。

新庄剛志ビッグボスの一言が転機?

史上最多の高校通算111本塁打をマークした早稲田実時代。通算65本塁打の履正社・安田尚憲(現ロッテ)、通算52本塁打の九州学院・村上宗隆(現ヤクルト)とともに「BIG3」と呼ばれ、夏の甲子園で広陵・中村奨成(現広島)が大会史上最多の6本塁打を放った後は「BIG4」となったが、いずれにしてもその中心は清宮だった。

しかし、プロ入り後は村上に大きく先を越され、甲子園を満員にした天才スラッガーは話題に上ることも少なくなった。2021年は一軍出場なし。イースタン・リーグで19本塁打を放って本塁打王に輝いても、本人も含めて誰も満足はしなかった。

昨秋、監督に就任した新庄ビッグボスに「ちょっと痩せない?」と減量を指示され、ようやく尻に火がついたのだろうか。春季キャンプには見違えるようにスリムになった清宮がいた。今季初出場となった開幕2戦目の3月26日ソフトバンク戦で、9回に藤井皓哉から放った2年ぶりの一発が、清宮流の反撃の狼煙だったのかも知れない。

4月は月間打率.175、1本塁打と苦しんだが、5月は.262、4本塁打、6月は.246、1本塁打と結果を積み重ねた。打順を固定しない新庄ビッグボスの方針で清宮は2番から7番まで幅広く起用されているが、何より一軍でプレーするという貴重な経験が血肉となりつつある。プロ5年目でようやく一皮剝けたと言えるだろう。

センターから右方向への打球が74%

とはいえ、まだまだ改善の余地は多い。そのひとつが打球方向データに表れている。清宮の打球は計74%、つまり4本に3本はセンターから右方向。左中間からレフト方向への打球があまりにも少ないのだ。

かつて広島にランスという「引っ張り専門」の左打者がいた。1987年に39本塁打でタイトルを獲得したが、打率は規定打席到達者で最低の.218だった。

引っ張った方がボールに力を伝えやすいのは当然だが、それだけでは相手投手が攻めやすい。歴代の一流スラッガーには逆方向にも長打を打てる打者が多くいる。村上しかり、巨人の岡本和真しかり、ソフトバンクの柳田悠岐しかりだ。

いかに普段の練習から意識して逆方向へ打つか。左中間へ強い打球が打てるようになれば、自然とスイートスポットも広がるはずだ。現状の清宮は真ん中低めと外角ベルトラインしか打てていない。

清宮幸太郎のゾーン別データ


相手投手が誘うように清宮の好きなコースからわずかに外した外角低めを狙ったものの、コントロールミスして内に入った球を清宮が捉えているパターンは少なくないだろう。

加えて11本塁打が全てソロという現実。今季の得点圏打率が.183と低いことも中軸を打つ打者としては物足りない。

とはいえ、それらも長い目で見れば、成長する過程に過ぎないだろう。清宮の持つ素質はこの程度ではないはずだ。

来年の話をするのはまだ早いが、北広島市に建設中の新本拠地に移転する日本ハムにとって、清宮のかけるアーチは集客面での夢も運ぶ。かつて甲子園を満員にしたように「清宮のホームランを見たい」と足を運ぶファンを増やせるか。今後のさらなる成長が期待される。

※成績は7月11日現在

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