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両親に変身誓ったオリックス椋木蓮、ドラ1右腕が七夕に最高の贈り物

2022 7/11 06:00大島大介
オリックスの椋木蓮,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

6回2安打無失点で初登板初勝利

七夕の7日。本拠地・京セラドーム大阪で行われた西武戦で、オリックスの新人・椋木蓮投手(22)が6回2安打無失点の好投を見せ、プロ初登板を初勝利で飾った。

「遅れた分、調整もしっかりできたので、ベストピッチをやってやるぞという気持ちで臨んだ」。その言葉通り、磨き上げてきた直球と多彩な変化球で強力打線を封じ、オリックスの女性ファン「オリ姫」に最高の贈り物を届けた。

山口・高川学園高から東北福祉大を経てドラフト1位で入団した右腕は、目標にしていた開幕1軍入りを果たせなかった。2月のキャンプで左脇腹を痛めて調整が遅れ、オープン戦は1試合も登板できなかった。

ファームでは5月3日の巨人戦に初登板し、中継ぎで3回を投げて白星を手にした。2度目の登板となった5月14日のヤクルト戦から先発に回ったが、勝ち星は遠かった。

そんな中、1軍昇格に向けて決意を新たにした試合がある。地元の山口で行われた広島戦だ。内容は5回6失点だったが、観戦に訪れた両親に、こう伝えたそうだ。

「しっかり頑張って出直す」

軸足の使い方など投球フォームを見つめ直して左肩が早く開く癖を修正できたことで、ボールに力が伝わるようになったという。6月15日の広島戦から先発で3連勝。自らの力で、一軍昇格のチャンスをつかんだ。

山川穂高から3三振

試合開始の30分前。椋木蓮はグラウンドで遠投を始めた。これは、目標にするエース山本由伸が登板前に行うルーチンだ。「体のしなやかさ、柔らかさをずっと見て来た投手なので、いろいろ教わりたい」。ドラフト会議後の記者会見で、そう話していたエースの調整法を取り入れ、ファンが見守るマウンドに上がった。

西武の先発マウンドは、今季初登板の今井達也(24)。高校時代、栃木・作新学院のエースとして全国制覇を果たした右腕に対峙しても臆することなく、一回から持ち味を発揮した。

スリークオーターから投げ込む直球は一回から150キロを超えた。先頭の川越誠司をフォークボールで捕ゴロ、続く源田壮亮を同じフォークボールで空振り三振に。プロでの対戦を切望していた3番・森友哉には粘られて四球を与えたが、本塁打王争いでトップを走る4番・山川穂高はフォークボールで見逃し三振に仕留めた。

イニングごとに、プレート板をロージンバックできれいにする「験担ぎ」も新鮮に映った。直球は常時140キロ台後半を計測し、スライダーやナックルカーブなどの変化球も冴え渡った。

「スライダーが一番よかった。困ったらスライダーでカウントを稼げたので、その分、高めの真っすぐが生きたんじゃないかと。ゾーンに入っていた球は全部振ってくるし、1球も置きに行く球は投げられないなあという感じで投げていた」。山川穂高から3打席全て三振を奪ったのは、そのたまものだろう。

目標の100勝100セーブへ第一歩

「もう少し荒れるかなと思っていたが、すばらしい投球を見せてくれた。真っすぐには強さがあり、軌道も独特。どれもリードのしがいがある球だった」。捕手だった中嶋聡監督はそう評価し、「チームが連敗している状況で、責任を負わしてしまったが、本当にしっかり投げてくれた」と落ち着き払ったマウンドさばきにも感心しきりだった。

この試合で2安打3打点の活躍をみせた杉本裕太郎とともに、お立ち台に上がった椋木蓮は言った。「ここまで来るのに時間はかかったが、ファンの皆さんの前で投げられてよかった」。大きな拍手を浴びるなか、ウィニングボールを手に「ここまで育ててくれてありがとう」と試合に招待した両親に感謝の気持ちを伝えた。

開幕から約4カ月。「ようやくスタートラインに立てた気持ち。一軍の戦力としてチームの勝利に貢献できるよう頑張りたい」と決意を新たにした。入団記者会見で掲げた「100勝、100セーブ」という大きな目標に向けて力強く、その一歩を踏み出した。

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