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オリックス山岡泰輔が好調、優勝した昨年の「悔しさ」が原動力

2022 5/28 06:00大島大介
オリックスの山岡泰輔,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

昨季3勝止まりも今季は防御率リーグトップ

右肘手術からの完全復活を期すオリックスの山岡泰輔が好調だ。防御率はリーグトップの1.08。エース山本由伸と並ぶ活躍でチームを牽引している。

昨シーズン、背番号「19」は失意の底にいた。6月22日の日本ハム戦で右肘の違和感を訴えて途中降板し、そのまま出場選手登録を抹消。8月にウエスタン・リーグ4試合で登板したものの、「関節炎」の診断を受けた患部の状態が戻らず、9月にはクリーニング手術を受けた。

レギュラーシーズンの登板数は2017年の入団以来、最も少ない12試合で3勝止まり。19年に13勝4敗をマークし、最高勝率のタイトルを獲得した右腕のプライドは、ズタズタになった。

難しいとみられていたシーズン中の復帰登板は、救援という形で11月の日本シリーズ第5戦で果たし、初勝利も手にした。「うれしかったですし、たくさんのファンの方が待ってくれていたんだということを肌で感じた。あの場面で使っていただいた監督には感謝しかない」。だが、心の内は複雑だった。

「悔しい1年になった。チームはリーグ優勝したのに、自分は何もできなかった。優勝の輪に入りたいと思ったので、もう一度、イチからやりたい」。契約更改交渉後の記者会見で口にした思いが、今季への原動力になっている。

8試合中6試合がQSの安定感

中嶋聡監督は、山岡泰輔の復帰プランをキャンプから入念に練っていた。「先発か中継ぎか」。当初は肘への負担を考慮し、オープン戦では短いイニングでの起用が目立った。先発陣に比べ、中継ぎ陣は駒不足が指摘されていただけに、制球力のよさに定評のある山岡泰輔はセットアッパーにはうってつけの存在だった。

「先発なら(山本)由伸に追いつき、追い越せるくらいに、リリーフなら抑えの平野さんを追い越せるくらいに頑張りたい」。だが、実戦を重ねるごとに、手応えを感じ始めていた山岡泰輔の思いは先発ローテーションへと向かう。中嶋聡監督も腹を決めた。

開幕3戦目となった3月27日の西武戦に3番手で1イニングを無失点に抑えると、4月1日の日本ハム戦で今季初の先発マウンドへ。「カードの頭なので、チームに流れを持ってこられるような投球をしたい」。言葉通りの投球で6回途中を無失点に抑え、勝ち投手になった。

内容は、投げるたびによくなっている。4月8日のロッテ戦はマーティンの2ランに泣いたが、7回を2失点の好投。6回を無失点に抑えた4月16日の西武戦で2勝目を挙げると、今季最長となる8回を2失点に抑えた5月10日の日本ハム戦で3勝目を挙げた。

17日の日本ハム戦では危険球退場したが、先発登板した8試合のうち、6試合がクオリティースタート(6イニング以上で自責点3以内の内容)と安定した投球を続けている。

体重68キロも強気の投球スタイル

山岡泰輔は、交流戦初戦となった24日の巨人戦の先発マウンドに上がった。縦に大きく割れる得意のスライダーに直球も走り、三回までは1安打無失点。ところが四回、警戒していたはずの4番岡本和真にバックスクリーンへ2ランを運ばれてしまう。

「全体的には、空振りを取れるボールもありましたし、ある程度まとまったピッチングはできていたと思います。それだけに、ホームランを打たれてしまった、あの1球が悔しいです」。勝ち負けはつかなかったが、6回2失点の投球内容に唇をかんだ。

身長1メートル72、体重68キロの体を目一杯使い、他球団の強打者に立ち向かっていく攻めの投球スタイルは、いつ見ても気持ちいい。反省を糧に、次回登板が有力な31日のDeNA戦では、どんな投球を見せてくれるのか。胸のすくようなピッチングでねじ伏せる姿を、ファンは期待している。

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