4月24日の支配下登録から2度目の登板で白星
こみ上げるものをこらえながら、本拠地・京セラドーム大阪のマウンドに上がった。育成選手からはい上がり、一軍の舞台に戻って来たオリックスの近藤大亮(30)。ファンが待ちわびた瞬間が、ついに訪れた。
4月24日の支配下登録から2度目の登板となった30日の西武戦。出番は2―2で迎えた八回に巡ってきた。近藤の名前がコールされると、ひときわ大きな拍手が場内を包み込んだ。
「すごくうれしかったです。緊張しっ放しだったので、皆さんに背中を押してもらいました」。ダイナミックなフォームから、自慢の直球を投げ込んだ。初球は152キロ。2球目も152キロを計測し、3球目は154キロと球速が上がり、最後は147キロで先頭のオグレディを三振に仕留めた。続く外崎修汰も二飛に打ち取る。だが、簡単には終わらない。
好調の山川穂高、呉念庭に連打を許し、ピンチが広がった。ここで打席に迎えたのは代打・中村剛也だ。「全力でぶつかろうと。それだけでした」。百戦錬磨のベテランにも真っ向勝負を挑んだ。
初球は149キロ。渾身の直球はしかし、はじき返され、打球は快音を残して中堅方向へ伸びた。歓声と悲鳴が交錯するなか、フェンス手前まで下がった佐野皓大が落下点に入り、足が止まった。グラブに打球が収まるのを見届けると、近藤は右手で小さくガッツポーズ。その裏、吉田正尚が六回に続く2本目のソロ本塁打をスタンドにたたき込み、九回は平野佳寿がきっちりと締めた。
「先発のサチヤ(山崎福也)が(6回1失点と)すごくいいピッチングをしていて、中継ぎ陣は(今季未勝利の)サチヤに勝ちをつけようと必死に投げていた。たまたま、僕に勝利がついただけだと思う。正尚に感謝です」
ドラフト同期の吉田正尚と初のお立ち台
大阪・浪速高、大阪商業大から社会人野球のパナソニックを経て2015年のドラフト2位でオリックスに入団。1年目の16年はわずか1試合の登板に終わったが、17年から3年連続で50試合以上に登板して計56ホールドをマーク、抑えにつなぐセットアッパーとしての地位を確立した。
だが、その後は試練が待ち受けていた。20年9月に右肘の手術を受け、育成契約を結び直した後、背番号124のユニホームで再起に向けて懸命にリハビリを続けてきた。
近藤が入団した時のドラフト1位が吉田正尚だ。その吉田正尚とともに、「人生初」というお立ち台に上がり、開口一番、こう言った。
「ただいま!」。大きな拍手が降り注ぐ中、思いの丈を言葉にした。「苦しい2年間でしたが、この球場で、皆さんの前で投げることを目標に、一日一日頑張ってきました。本当に、支えてくださった皆さんに感謝したいと思います」
隣にいた吉田正尚は「僕らじゃ分からないような苦しみを味わって、この舞台に戻ってきてくれたので、これからチームに絶対貢献してくれると思います」と笑顔を見せた。
母・鈴美さんの誕生日「ここからがスタート」
約3年ぶりの白星を手にしたこの日は、偶然にも母・鈴美さんの誕生日と重なった。「人生で一番いいプレゼントができたと思います。一生、忘れられない日になりました」。平野佳寿から受け取った記念球は母親に届けるという。
支配下登録が発表された日、近藤は球団広報を通じコメントを出した。「けがでリハビリを行っている間にチームがリーグ優勝するなど、自分の居場所がなくなってしまうのではないかという不安な気持ちもありました。でも、またあの舞台に戻りたいという一心で、前を向いて一日一日やるべきことをやってきました。ここからがスタートになりますが、これまで支えてくださった方々に少しでも恩返しできるよう投げていきたいと思います」
背番号20のユニホームに袖を通した苦労人が、第二章の一歩を力強く踏み出した。
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