打線が不振…チーム打率はリーグ最下位
プロ野球は開幕から1カ月がたった。2年連続リーグ優勝を目指すオリックスは、エース山本由伸の好投で開幕戦の連敗を10で止めたものの、2戦目からまさかの5連敗。他球団同様、新型コロナウイルスの陽性判定を受けた選手の離脱もあり、中嶋聡監督もやりくりに苦労している。一進一退の戦いが続く開幕1カ月の通信簿は……。
29日現在の戦績は、14勝14敗。28試合を終えた時点の昨季の成績は10勝13敗5分だから、勝ち星では今季の方が上回っている。ただ、リーグ連覇を期待するファンは「調子が今ひとつ」と、物足りなさを感じているのではないか。理由は、状態が上向かない打線にあることは間違いない。それは数字にもはっきりと表れている。
チーム打率2割5厘、70得点、8本塁打はいずれもリーグ最下位だ。今季は2桁得点が一度もなく、連勝も3止まり。山本由伸が球団記録に並ぶシーズン17連勝を飾った4月2日の日本ハム戦での7得点が最多。14敗のうち6度が零封負け(西武、楽天、ソフトバンクに1度、ロッテに3度)を喫しており、チームに勢いが生まれないのもうなずける。
本塁打王・杉本裕太郎はわずか1本塁打
打線が上向かない理由の一つは、長打力不足だろう。昨季は28試合を終えた時点で、19本のホームランが出ているが、今季は半分にも満たない。特に昨季の本塁打王・杉本裕太郎は、「2年目のジンクス」にどっぷりとはまっている。
ここまで25試合に出場して打率1割3分3厘、6打点、1本塁打で、打順も開幕の4番から、8番まで降格。新型コロナウイルスの陽性判定を受けて27日に一軍選手登録を抹消された。
「杉本は去年が実質、1年目。相手チームも研究してくるし、攻め方も厳しくなる。外国人次第だが、4番は吉田で、杉本を6番ぐらいに置けるような打線が組めたら十分に戦える」。開幕前、そう話していた球団関係者の懸念は図らずも的中してしまった。
オリックスで規定打席以上の打者は吉田正尚、福田周平、紅林弘太郎、杉本裕太郎の4人だけ。打線の中心にいなければならないはずの2年目のランヘル・ラベロも、新外国人のブレイビック・バレラも調子の波が激しく、出たり出なかったりの試合が続いている。
前出の球団関係者は「打線がふるわないのは杉本だけの責任じゃない。主軸の調子が悪い時こそ、脇を固める選手たちが頑張ってチームの調子を上げていかないといけない」と奮起を促す。
山本由伸、平野佳寿ら投手陣は安定
一方の投手陣は奮闘している。チーム防御率はリーグ4位の2.80。他球団の関係者は「オリックスが今の位置で戦えているのは投手力のおかげでしょう。先発がある程度、試合を作っているから、どうにもならないような試合がない」と言う。
ここまで山本由伸は3勝1敗、防御率1.22とエースの役割を果たし、4月26日の日本ハム戦で日米通算200セーブを達成した抑えの平野佳寿は防御率1.38をマーク。規定投球回には到達していないもののすでに2勝を挙げ、右肘手術からの復活を期す山岡泰輔が投げるたびに調子を上げているのは心強い。
救援陣でも、昨季チーム最多の51試合に登板した富山凌雅がようやく一軍に合流し、セットアッパーとして期待通りの活躍を見せる新外国人のジェシー・ビドル、平野佳寿につなぐ勝利の方程式も、そう遠くない時期に形作られるだろう。
昨年は交流戦優勝で弾み
気がつけば、4番でチームを牽引する吉田正尚の打率は3割を超えた。「もう少し打球に角度がつけば、いい打席が増える」と言っていた通り、27日の日本ハム戦では今季2号を東京ドームの右翼席に運んだ。
「杉本は(不振の)底を抜けた感じがする。コロナによる離脱も心身をリフレッシュする機会と前向きにとらえ、元気に帰って来てくれればいい」。そう話す球団関係者は、開幕1カ月の通信簿について「ここまでは70点ぐらい」とし、「攻撃陣では宗、投手陣では宮城の状態が上がってくれば、いい形で(5月24日からの)交流戦に入れる」と期待を込める。
昨季のオリックスは交流戦の優勝(12勝5敗1分け)がものを言い、リーグ制覇への道が大きく開けた。「チームのベストをずっと探っていくシーズンになると思う」。開幕前、そう語っていた中嶋聡監督の想定は現実になったが、交流戦までにはある程度、投手陣の負担を軽減できるような打線を構築したいところだ。
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