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佐々木朗希「審判騒動」の教訓、プロ野球への理解を深め、怪物の経験値を高める契機に

2022 4/29 06:00楊枝秀基
ロッテの佐々木朗希,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

佐々木朗希に詰め寄った白井球審

注目度の高さが窺える。「令和の怪物」が渦中の人となった“騒動”は、瞬く間に日本中を駆け巡り世界にも届いた。

24日のオリックスーロッテ戦(京セラドーム)にロッテ・佐々木朗希投手(20)が先発。そこまで17イニング連続でパーフェクト投球を継続していた右腕に注目が集まった。だが、今回クローズアップされたのは、その投球自体ではなかった。

3点リードの2回二死一塁の場面、2ストライクから安達へ投じた外角低め158キロの直球は、際どいコースながらボールの判定。その間に一塁走者・杉本に盗塁を決められた。この間の一連の仕草や表情が判定への不服を示したと、球審・白井に判断される形となってしまった。

球審・白井はマウンドへ向かい歩き出し、怒気を含んだ表情で佐々木朗希に詰め寄った。捕手・松川が割って入り何とかその場は収まったが、この異様な光景は即座にネット速報と共に世間に広がった。

試合は進行中だった。その場ではロッテ・井口監督と白井球審が話し合う形でゲーム再開となった。試合自体は6−3でロッテの勝利となったのだが、試合終了の頃にはゲーム内容よりも佐々木朗希、白井球審の“騒動”が話題の中心となってしまっていた。

新庄ビッグボス「時間の無駄」

ネット上ではさまざまな意見が飛び交った。大多数は白井球審への批判だった。過去に起こった判定を巡ってのトラブルなどを引き合いに出し、攻撃的な言葉が並べられた。

実際、当該のプレー、一連の騒動と発展する間に白井球審からタイムは取られていなかった。自らマウンドへ向かい歩を進め、佐々木朗希を恫喝するような態度を取り、試合進行を止めてしまっていたことは映像から見ても明らかだった。

試合後に友寄審判部長から白井審判員に対し「(佐々木朗希の態度に注意を促すには)別の方法があった」と指摘されたことが、NPBから説明された。同様にビッグボスこと日本ハムの新庄監督もこの問題について質問を受け「試合を早く進行させようとしている中、あそこの場面で近寄る方が時間の無駄になる」との言及があった。

ダルビッシュ有は「不平等」

一方でパドレスのダルビッシュ有投手は白井球審を擁護する考えをSNSを通じて発信。「白井球審がマウンドに詰め寄ったこと、詰め寄るという行動に対して、一切肯定してません」と前置きした上で「選手が審判に対して態度を出す、退場になる行動や恫喝みたいな声を荒げて体をぶつけてとか、監督もそうですし、今までのプロ野球の歴史から多々ある」と過去を例示。

さらに続け「いざ審判が自分の感情を表に出したとき、仕事にクレームをつけられ、すごく言われてしまう。これに関して近年、不平等に感じてしまうというか、違和感を感じてしまうんですね。審判はこうあるべき、と自分の物差しで決めつけてしまう人が多々いて」と持論を展開した。

メジャーなら潰される?

審判はミスなく無事に試合を進行して当たり前。そこを称賛されるケースは少ない。ただ、誤審などがクローズアップされると一気に悪者に仕立てられる傾向にある。万人単位の観衆の前で、瞬時に難しい判断を迫られる過酷な職業。そこへのリスペクトを忘れてはいけないという意見だったが、それでもネット上のコメントには白井審判員を批判する声が止まなかった。

SNS上やスポーツ紙での評論、さまざまな形で今回の騒動が語られた。MLBの関係者も“参戦”し「もしメジャーを目指すなら、ルーキーイヤーにあの態度を取ると潰される危険性もある」などとの指摘もあった。

しかし、それもこれも20歳の右腕が13連続奪三振の新記録、1試合19奪三振のタイ記録を樹立し105球でのパーフェクトゲームを達成したからこその注目度アップの証しだ。

熱狂的な野球ファンはもとより、普段は野球を見ないような人々にも“騒動”が注目されたという事実は大きい。

今回の件を教訓として、ファンや野球に関心があるという程度の人々も納得できるようなプロ野球界への理解が深まり、佐々木朗希にはいい経験として今後のプラスになってくれれば問題ないのではないだろうか。

世界に注目される存在として、佐々木朗希をそれぞれにサポートしたい思いが世の中に存在する。その思いを受けどういったプレー、生き様を見せるのか。「平成の怪物」が引退した今、「令和の怪物」の重荷は増えてしまった。それでも期待を力に変えてほしい。そう思うファンは無数に存在する。

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