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佐々木朗希が完全試合で見せた”4球以内奪三振数”と終盤のトップギア ロッテの育成が結実

2022 4/11 17:37浜田哲男
千葉ロッテマリーンズ,佐々木朗希,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

20歳5ヶ月での達成は史上最年少記録

4月10日、本拠地ZOZOマリンスタジアムで行われたオリックス戦で、ロッテの佐々木朗希がプロ野球史上16人目となる完全試合を、20歳5ヶ月の史上最年少で達成した。初回から5回まで新記録となる13者連続三振をマークすると、その勢いを持続したまま最終回へ。

最後の打者、杉本裕太郎から空振り三振を奪うと球場のボルテージは最高潮に。バックスクリーンには「PERFECT」の文字が映し出され、詰めかけた多くのファンからの盛大な拍手が鳴り止まなかった。

わずか105球の“省エネ投球”で19奪三振

さまざまな記録が打ち立てられた同試合では、日本最多タイとなる19奪三振も達成。何よりもそれだけの三振を記録していながら、わずか105球での“省エネ投球”だったことに驚きだ。仮に27のアウトをすべて三球三振でも81球であることを考えると、その凄さがわかる。

内訳を見ると、三球三振が2個、四球三振が9個。105球は単純計算で一人平均4球以下で抑えていることになる。ストライク率は約78%。見せ球や釣り球などを使わず常に空振りがとれる上、これだけの球速がありながら制球力も優れていることを証明している。

その制球力は昨季と比べても、向上している。2021年は与四死球率(9イニングあたりいくつの四死球を与えるかを示す数値)が2.28だったが、今季は1.17。9回を投げて四球は1個程度の計算だ。投じた105球のうち160km超えの直球が34球もあり、打者はバットに当てることも四球を選ぶことも難しい。これ以上の投球があるのか、というほどの圧巻の投球で完全に試合を支配した。

オリックスの先発・宮城大弥も初回の1失点以降は粘投していたが、佐々木朗の投球の前では霞んでしまうほどに。昨季新人王を獲得した同級生・宮城の前で実力を証明した。

松川虎生の好リードも光った

投じた球種の内訳を見ると、直球が64球、フォークが35球、スライダーが3球、カーブが3球。直球とフォークを組み立ての軸とし、終始テンポのいい投球を続けた。

今季この試合まで1三振で、三振の少ない吉田正尚からは3三振を奪った。2打席目には、初球、2球目に今季から時折織り交ぜているカーブを連投し、意表をつかれた吉田はその後のフォークで三振。打者の裏をかく捕手・松川虎生の好リードも光った。

7回に味方打線がつながり、6-0とリードを広げた後も小気味のいいテンポで投げ続け、特に8回からはテンポがさらにアップ。4番のラベロから続く3人の打者を空振り三振に切ってとった。

完全試合や19奪三振といった記録が先に立って霞んでいるが、昨季10月14日のオリックス戦からの34イニング連続奪三振も継続中(同一シーズンではオリックス・山本由伸の25イニングが最長記録)。ソフトバンクのサファテがマークした43イニング連続奪三振が最長記録だが、その記録を超えていくのかにも注目だ。

「完全試合」と「19奪三振」の因縁

パ・リーグでは、1978年8月31日に阪急(現オリックス)の今井雄太郎が完全試合を達成して以来44年ぶりの快挙となったが、その時の相手がロッテだった。また、1995年4月21日にオリックス・野田浩司がマークした19奪三振に27年ぶりに並んだことにもなるが、その時の相手もロッテであり、尚且つ今回と同じ千葉マリンスタジアム(当時の名称)だった。奇しくも、ロッテ対オリックス戦で達成されたこれらの記録に、因縁を感じざるをえない。

連続奪三振の記録は、1957年に阪急(現オリックス)の根本隆夫、1958年に東映(現日本ハム)の土橋正幸がマークしていた「9」がこれまでの記録だったが、64年ぶりに更新。それも「13」と大幅に更新した。

育成が正しかったことを証明

プロ入り1年目は、1軍に帯同しながら基礎体力作り・肉体強化に専念し、実戦での登板を一度もさせなかった。高卒の同級生・奥川恭伸が2年目のシーズン早々から結果を出してブレイクの予兆を見せる一方で、「過保護」という批判も見られるなど育成プランには一時期賛否があった。

しかし、昨季5月16日の西武戦でデビューすると、特に後半戦は6試合に登板して防御率1.22(シーズン全体では2.27)とポテンシャルを発揮し始め、今季は初登板から二桁奪三振を続けるなど快投を継続。今回の完全試合達成に結実した。

これまで完投経験がなかったため、唯一気がかりだったのが9回を投げ抜く体力面だったが、ストライクゾーンでどんどん勝負していく省エネ投球でクリア。特に7回表の吉田の3打席目で投じたインローの直球は、吉田がピクリとも動かずに見逃し三振を喫するほどで、凄まじいうなりを上げていた。終盤にギアを上げられることは、これまでの基礎体力作り・肉体強化の賜物だろう。

初夏を思わせる陽気と快晴の空の下、ZOZOマリンスタジアムに集まった大勢のファンの前で成し遂げた偉業。伝説は始まったばかりだ。

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