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2022年ドラフトは不作…だからこそスカウトに出た指令とは?

2022 4/28 06:00柏原誠
イメージ画像Ⓒwituli/Shutterstock.com
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コロナ禍の影響か?「つぼみ」のままの高校生

「あんまり、いないんだよなあ」「やっぱりそうですか」。各地で行われている高校野球、大学野球の春季大会で会うNPBスカウトとの、あいさつ代わりのようになっている。

今年のドラフトは、例年に比べて現時点では「不作」と言われている。特に高校生が顕著。素材の良さそうな選手は例年通りにいる。ただ、ある西日本地区の担当スカウトは「つぼみのまま、ここまで来ている選手が多いんじゃないか」と指摘した。真実か否かはさておき「つぼみ」とは言い得て妙だなと首肯した。

センバツでは出場32校が出そろった時点で1本塁打。140キロ台を記録した投手も昨年の半分以下の12人と、選手のスケールダウンが指摘された。最終的には大阪桐蔭の記録的猛打の陰に隠れた格好になったが、看過できない数字だった。

2年生の秋から3年生の春にかけては、体力も十分につき、試合をこなしていく中で技術的にも格段に伸びる時期。甲子園組で言えば、3年春のセンバツは指名リストのたたき台を作るのに最適な大会でもある。甲子園という大舞台でいかなるパフォーマンスをできるのか、メンタル面を図るのにも最適だと聞いた。

センバツでは「体格ができあがっていない」「冬の練習で振り込めていない」と言った感想を複数のスカウトに聞いた。新型コロナの影響が陰を落としているのは間違いない。

感染対策で、対外試合が満足に組めなかったり、部活動自体を自粛して、トレーニング計画が停滞したり。もう2年以上が経つ新型コロナ禍。入学以来、影響を受け続けてきた3年生は心から気の毒に思う。

夏の大会終了後もギリギリまでマーク

一方で春季大会で話した別のスカウトが興味深いことも言っていた。「だから、余計にスカウトの見る目が問われているんですよ」。たとえば、目星をつけた選手が今後体力をつけて、実戦を積んでいったら、夏にはどんなパフォーマンスを見せるのか。将来を見通す力が問われてくる。

「今の高校生は夏が過ぎてからグンと伸びてくるケースも多い。夏の大会が終わったから目を離すのではなく、しっかりとドラフト直前まで追いかけ続けよう」

ある球団はスカウト陣にそう指令しているそうだ。高校生としての「完成」がコロナ前と比べて数カ月ずれていると仮定すれば、的を射た方針と言える。

実は多い「引退後に伸びる選手」

実際に高校3年生は最後の夏に向けて、日々厳しい練習を重ねて体を絞り、精神的にもプレッシャーのかかった試合をこなす。そのプレッシャーと運動量から解放された途端、サイズアップするのは自然なこと。次のステップに備えて、続けてグラウンドに出ていた球児でも、夏休み明けには数キロ増量している選手がほとんどだ。

夢中で突っ走っていた現役時代と比べ、頭の中もクリアに整理されている。自分と向き合える時間が逆に増え、打球の飛距離や球速が引退後に伸びる選手もざらにいると聞いた。つまり、つぼみが人知れず花開いている瞬間を見逃すな、というわけだ。

高校の春季大会はゴールデンウイークから花ざかり。各球団のスカウトたちにとっては、つぼみを見定める慧眼(けいがん)を競う季節になることだろう。

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