「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

DeNA・楠本泰史が辿る佐野恵太の足跡 代打の切り札から首位打者へ

2022 4/28 11:00林龍也
横浜DeNAベイスターズの楠本泰史,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

昨シーズンは代打の切り札から強力外野陣の一角へ

また一人、DeNAのバットマンが開花のときを迎えようとしている。5年目の外野手・楠本泰史だ。昨シーズンは代打で好成績を残した男が、今シーズンはスタメンで輝きを放ち、なくてはならない存在へと成長しつつある。

埼玉県の名門・花咲徳栄高から東北福祉大へと進んだ楠本は、2017年ドラフト8位でプロ入り。1年目から開幕一軍入りを掴むも、3年目までは思うような成績が残せずにいた。

しかし昨シーズン、開幕こそ二軍で迎えたが、5月に昇格すると代打で好成績を残す。シーズン終盤には故障のオースティンに代わりスタメンの機会を掴むと、自己最多の76試合に出場した。

迎えた今シーズンは春季キャンプから猛アピール。オープン戦11試合で打率.464と結果を残し、激しい競争を勝ち抜いて開幕スタメンを手にした。

3番・右翼で出場すると、第1打席で中前打を放つ。そこから安打を量産し、3月は25打数8安打で打率.320をマーク。4月に入ってややペースを落とし、新型コロナウイルスの影響で離脱もあったが、打率3割前後をキープしている。

代打の切り札から首位打者へと駆け上がった先輩・佐野恵太

先にも触れたが、楠本はドラフト8位でプロ入りしている。侍ジャパン・大学日本代表の4番まで務めた男だが、いわゆる「下位指名」での入団となった。

しかしDeNAには、下位指名から打撃一本で道を切り開いた良き手本がいる。2016年ドラフト9位でプロ入りし、現在は主将を務める佐野恵太だ。

佐野は広島の名門・広陵高から東京六大学の明治大へと進学。リーグ戦通算6本塁打を記録し、4年時には主力として秋の明治神宮野球大会優勝を経験している。ドラフトでは守備面での不安から指名を見送られそうだったところを、当時の高田繁GMの鶴の一声で指名が決まったという経緯がある。

当時のアレックス・ラミレス監督のもと、佐野は1年目から代打で起用され、勝負強さを発揮。4年目からは筒香嘉智のメジャー移籍にともない、4番・左翼・主将を一手に引き継ぎ、レギュラー定着1年目に見事首位打者を獲得した。

楠本は昨シーズン、代打で打率.295(44打数13安打)、2本塁打、10打点と結果を残し、レギュラーとして臨む今シーズンも3割近い打率を残している。バットが湿る気配はまだまだなく、首位打者の可能性も充分。佐野の足跡を辿るように、バットで道を切り開こうとしているのだ。

オースティンの復帰までに外野の一角に定着なるか

本来、DeNAの外野手は佐野恵太、桑原将志、オースティンの3人が有力視されていた。そこに日本ハムをノンテンダーになった大田泰示も加わり、楠本のレギュラー獲りは決して簡単なものではなかった。

しかし、ソトが右手首の張りで開幕一軍を外れたことにより佐野が一塁へ回り、さらにオースティンが右肘故障で離脱したため、オープン戦で結果を残した楠本にチャンスが回ってきた。そして楠本も起用に応え、ここまではガッチリスタメンを掴んでいる。

しかし、楠本自身も感染した新型コロナウイルスにチームが苦しむ間に、オープン戦では不調だった大田が調子を上げてきた。ソトの復帰により佐野が左翼へと戻り、桑原の復帰も近い。手術をしたオースティンはもう少し時間がかかりそうだが、シーズン終盤での復帰を目指している。

楠本にとって、レギュラーはまだまだ安泰ではない。桑原、大田との競争を制しつつ、オースティンが復帰しても試合に出続けられるだけの実力を、三浦大輔監督に見せつけなければならない。

また、DeNAには佐野、楠本の他にも下位指名で入団しながら強烈な輝きを放つ大卒外野手がいる。12日の巨人戦でプロ初出場、初安打を本塁打で飾り、さらに4安打の離れ業をやってのけたルーキー・梶原昂希と、2020年のルーキー時代に代打で出場し、やはりプロ初安打となる本塁打を放った蝦名達夫の2人だ。

梶原は2021年ドラフト6位指名、蝦名は2019年ドラフト6位指名と、佐野、楠本と同じ「下位指名」組だ。まだまだレギュラーを奪う立場の楠本だが、同時に下からの突き上げにも耐えてポジションを守らなければならない。

これまで以上に激しい外野争いが、楠本の成長を、引いてはDeNAの成長を促進していく。目指すのは代打の切り札ではなく、外野の一角だ。楠本が1年間ポジションを守ったその先には、先輩の佐野同様、首位打者の栄光が待っていることを楽しみに待ちたい。

【関連記事】
元プロ野球選手からお茶の世界へ、下窪陽介さんが“淹れ込む”セカンドキャリア
リーグ屈指のDeNA外野陣で大田泰示が果たす大きな役割
プロ野球セ・パ交流戦の通算成績、年度別優勝チームとMVP、パの貯金131