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中日のエースナンバー「20」の後継者は誰だ?柳裕也か、高橋宏斗か、それとも…

2022 4/25 06:00糸井貢
中日ドラゴンズの柳裕也と髙橋宏斗,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

19歳の背番号「19」高橋宏斗

放つオーラは、19歳の域を完全に超えている。ボールの質も、マウンドさばきも、プロ2年目のキャリアとは、到底思えない。中日先発陣に彗星のごとく現れた右腕。高橋宏斗は十分なインパクトとともに、快進撃を続けている。

プロ初勝利は4月7日のヤクルト戦(神宮)だった。舞台をバンテリンドームに移し、中12日で「再戦」となった20日の先発マウンド。昨年の日本一を相手にしても、背番号19は臆せず、MAX153キロのストレートを投げ込んでいく。

4回1死二塁のピンチでは、昨年の本塁打王、村上宗隆を内角低めの150キロで見逃し三振。データが少ない「初顔」なら不確定要素が好投をアシストすることがあっても、プロが対策を練った2度目の対戦で出した結果は、実力の証明だ。6回を投げ、被安打4、1失点。8三振を奪う快投で、本拠地初白星をマークした。

「試合前くらい緊張しています。うまくしゃべれるか心配です」

大胆不敵な投球と180度違う、ヒーローインタビューの第一声にスタンドは沸いた。もちろん、初々しい言葉はポーズに過ぎない。決勝2点適時打を放った先輩の京田陽太とお立ち台で掛け合いを披露。強心臓はトークにも生かされていた。

12球団完封一番乗りの背番号「17」柳裕也

新戦力の台頭は、常に有形無形の効果を生む。柳裕也が開幕から見せる安定感は、有望株から受けた刺激と無縁なはずがない。

今季初登板の巨人戦(3月27日)こそ7回5失点(勝敗なし)と不本意な内容も、続く広島戦(4月3日)で12球団完封一番乗りのベストピッチ。阪神戦(同14日)も1失点完投と、一皮むけた投球内容が続く。

2人が1年間、期待通りの働きを見せ、チーム浮上の原動力になれば、今オフ、新たなテーマに直面するのは間違いない。背番号「20」の後継者は誰か――。

杉下茂、権藤博、星野仙一、小松辰雄が背負った「20」

中日のエースナンバーが輝きを失って久しい。振り返れば、「20」の歴史が、そのまま竜の足跡だった。

1954年(昭29)に初優勝した時、杉下茂は32勝を挙げ、日本一にまで導いた。「フォークボールの元祖」の後を継いだ権藤博は、「権藤、権藤、雨、権藤」と表現されるほどの登板間隔で酷使されながら、チームのために投げ抜いた。

1971年(昭46)からは、ご存じ「燃える男」星野仙一(故人)が栄光の番号を背に奮闘。闘志を前面に押し出した投球で、1974年(昭49)のリーグ優勝では立役者になった。

「スピードガンの申し子」小松辰雄が「34」から「20」に変更したのは1984年(昭59)。150キロを超えるストレートが竜党のハートを鷲掴みにし、一時代を築いた。

生え抜きエースの象徴だった「金看板」は1996年(平8)、韓国から来た助っ人、宣銅烈の手に渡る。守護神として4年間活躍し、1年置いた2001年からFAで加入した川崎憲次郎が背負った。ただ、川崎は右肩の故障で、在籍4年間で1軍登板がわずか3試合にとどまり、04年ドラフト2位の中田賢一(現ソフトバンク3軍投手コーチ)に「20」の復活を託された。

待望久しく出現したエース候補も、制球難が災いし、絶対的な存在になれないままソフトバンクにFA移籍。2015年(平27)にドラフト1位で入団した野村亮介は、1勝もできず、たった3年でユニホームを脱いだ。

2018年から空き番号となり、今年で5年目。低迷が続く中日の風景を変える大黒柱の登場をだれもが待っている。

超大穴は背番号「18」梅津晃大

候補者が出現し、機が熟した2022年シーズン。継承者の「本命」は、やはり柳だ。過去に2度、2ケタ勝利を挙げ、昨年は最優秀防御率と奪三振の2冠に輝いた。制球力と球のキレで勝負する実力派。22日で28歳と、年齢的にも投手陣の中心としてふさわしい。

将来性を考慮するなら、やはり「対抗」に高橋宏斗を挙げる。フォームに力感があり、身体ができてくれば、球速は確実に上がる。この先、10年以上、ローテーションを任せられる逸材で、地元出身のスターとしても期待は大きい。

そして、「超大穴」に、梅津晃大の名前も記しておきたい。プロ4年目の右腕。入団から故障続きで、3月に右肘のじん帯を再建する「トミー・ジョン手術」を受けた。復帰は早くても来年以降。とはいえ、前述の2人に勝るとも劣らない潜在能力、スケールの大きさを秘めており、2019、20年シーズンに一瞬だけ放った「輝き」は、このまま忘れてしまうには惜しい。

右の本格派が受け継いできたエースナンバーの系譜。激化する争奪戦は、竜投全体のレベルアップも意味している。中日の長い冬は、新しく「20」を背負う男の登場で終わりを告げる。

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