昨年は開幕3カード終了時点で首位
阪神が開幕9連敗と泥沼から抜け出せない。セ・リーグでは1979年のヤクルトが記録した開幕8連敗が最長だったが、とうとうワーストを更新。NPB記録は1955年トンボと1979年西武（2分け挟む）の開幕12連敗だが、このままでは球団史に汚点を残してしまうのではと危惧するほどの惨憺たる状況だ。
矢野燿大監督は今春キャンプイン前日に今季限りの退任を明言し、自身の退路を断ってシーズンへの意気込みを示した。賛否両論あったことからも分かる通り、それがマイナスに働いた可能性も否定できない。とはいえ、昨季終盤まで優勝を争い、今季も優勝候補に挙げられていたチームが突然弱くなることなど、あり得るのだろうか。
昨季と今季の開幕9試合の成績を比較してみよう。昨季は開幕3カードを終えた時点で6勝3敗で首位に立っていた。
昨年も開幕投手は藤浪晋太郎だった。ヤクルトとの開幕戦（神宮）は藤浪が5回2失点の後、岩貞祐太、石井大智、加治屋蓮、岩崎優、ロベルト・スアレスと6投手の継投で4－3と接戦を制した。
開幕戦を制した勢いに乗ってヤクルトに3連勝すると、広島には負け越したが、中日にも2勝1敗と勝ち越し。9試合を終えた時点で総得点36（1試合平均4点）、総失点25（1試合平均2.78点）だった。
昨季143試合の1試合平均3.78得点、同3.55失点よりも良く、投打ともに好スタートを切っていたことが分かる。特に岩貞、岩崎、スアレスのリリーフ陣の働きが大きかった。
9敗のうち逆転負けが5回も
それに対して今季の開幕9試合の成績が下の表だ。
記憶に新しい今季開幕戦。阪神は昨年の日本シリーズ覇者相手に4回終了時点で8－1と一方的な展開でリードしていた。藤浪は7回3失点で勝ち投手の権利を持ったまま降板。最高のスタートを切るかと思われた。
しかし、8回に齋藤友貴哉と岩崎を投入しながら4点を失って1点差。9回に新守護神としてマウンドに送ったカイル・ケラーが山田哲人に同点ソロ、サンタナに勝ち越し2ランを浴びて8－10でまさかの逆転負けを喫した。
その後ヤクルトに2試合連続完封負け。広島との初戦では9回まで2－1とリードしながら、またもケラーがリリーフに失敗し、最後は湯浅京己が西川龍馬に逆転サヨナラ打を浴びた。この時点で昨年なら勝っていたであろう試合を2つも落としたことになる。やはりスアレスの穴は極めて大きい。
続く広島2戦目は先制しながらも、先発の伊藤将司がリードを守り切れず6失点。3戦目も昨季10勝を挙げた秋山拓巳が逆転を許した。4月2日の巨人戦でも初回に2点を先制したが、先発の小川一平が5失点で逆転負け。今季の9敗のうち5敗は逆転負けなのだ。
ここまで9試合の総得点29（1試合平均3.22点）、総失点54（1試合平均6点）といずれも昨年より悪化している。負けるべくして負けていると言わざるを得ないだろう。
課題の失策数は減少
阪神のここ数年の課題のひとつは、昨季12球団ワーストの86個を記録した失策の多さだったが、今季はここまでセ・リーグ最少の3失策（最多は巨人とDeNAの6個、12球団最多は西武の11個）。中野拓夢のタイムリーエラーなどもあったものの、単純計算すると年間48失策ペースで、課題は少しずつ修正できていると言えなくもない。
チーム打率.239は巨人、広島に次いでリーグ3位。4番・佐藤輝明の一発が待たれるが、野手陣はそこまで責められる数字ではないだろう。
延長12回制となった今季、絶対的な守護神が不在の現状では、先発投手にも目に見えない負担があるのかも知れない。チーム防御率は12球団ワーストの5.85。やはりリードを奪っても守り切れない投手陣を立て直さない限り、白星はついてこない。
昨季13勝を挙げて最多勝と最高勝率の二冠に輝き、今季開幕投手に一度は決まりながら新型コロナウイルス感染のため回避した青柳晃洋は、4月2日の二軍オリックス戦で実戦復帰した。2回無安打無失点で4月中の昇格を目指しているが、すぐに一軍復帰するのは難しそうな状況だ。
5日から甲子園でDeNA、広島と6連戦。熱狂的なファンの声援を背に巻き返せるか。流れを一変するような快投、快打が期待される。
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