オープン戦のPA/Kは8.8と大幅に改善
2年連続2位に終わり、今季こそ届きそうで届かない頂点を狙う阪神。矢野燿大監督が今季限りの退任を明言して退路を断って臨むシーズンは、開幕4番が有力視される佐藤輝明の成績が大きく左右するだろう。
昨季、球団新人記録を更新する24本塁打をマークした佐藤は、オープン戦の成績を見る限り、ひとつの変化がある。1年目は歴代ワースト6位タイの173個も喫した三振が減っているのだ。
オープン戦11試合で44打席に立ち、37打数12安打の打率.324、5三振(3月15日現在)。三振を1つ喫するまでにかかる打席数を示すPA/Kは8.8となっている。昨年は規定打席到達者でワーストの2.63だったから、どれだけ減っているか分かるだろう。
昨季リーグトップだったヤクルト青木宣親で11.39、PA/Kが8.8以上の打者はセ・リーグで5人しかいなかったことからも、佐藤の成長は一目瞭然だ。
今春キャンプの紅白戦や練習試合でも空振りが少ないと話題になっていたが、継続して取り組んできたことが実りつつあるのだろう。まだオープン戦とはいえ、結果として残っていることは本人の自信にもなる。昨年8月から10月にかけて59打席連続無安打と苦しんだことは決して無駄ではなかったはずだ。
2019年に184三振を喫した村上宗隆
同じ左のスラッガーとして参考になる打者がいる。昨季39本塁打でタイトルを獲得したヤクルト村上宗隆だ。
九州学院高から入団2年目の2019年、19歳だった村上は36本塁打を放って大ブレイクしたが、一方で歴代ワースト4位のシーズン184三振を喫した。
村上にとって幸運だったのは、当時の小川淳司監督が三振には目を瞑って起用してくれたこと。143試合にフル出場し、昨季の佐藤よりはマシではあるが、PA/Kはリーグ最下位の3.22だった。
長距離打者にとって、実戦でバットを振る経験は何ものにも代え難い。体で覚えた村上は翌2020年は115三振(PA/Kは4.48)、2021年は133三振(PA/Kは4.62)と年々向上している。
昨年9月に史上最年少の21歳7カ月で通算100本塁打をマークしたのは記憶に新しい。今や巨人・岡本和真と並んでリーグを代表する4番に成長した。
佐藤の4番定着が優勝へのポイント
年齢では佐藤が1つ上だが、プロで右肩上がりの成長曲線を描く村上は、貴重な道しるべとなるだろう。15日のソフトバンク戦では左腕・笠谷俊介から待望のオープン戦1号。この一発をきっかけに波に乗れば、開幕に向けてさらに調子も上がっていきそうだ。
これまで阪神が優勝した1985年は掛布雅之、2003年は桧山進次郎、2005年は金本知憲と名だたる強打者が4番を務めた。大山悠輔との4番争いを制した佐藤はその有資格者だ。
ジェフリー・マルテでもメル・ロハス・ジュニアでもない。佐藤が不動の4番としてシーズンを通して活躍できれば、17年ぶりのペナントに近付くことは間違いない。
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