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阪神・前川右京に刮目!高卒1年目でレギュラー狙う強気の原点

2022 3/20 06:35柏原誠
2021年12月に津市で行われた津ボーイズ主催のプロ入り祝賀会で前川右京と松本直也監督,ⒸSPAIA(撮影・柏原誠)
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ⒸSPAIA(撮影・柏原誠)

初球から強振、1軍戦力へ見極め

阪神に楽しみな逸材が現れた。ドラフト4位で智弁学園(奈良)から入団した前川右京外野手(18)。

高卒ながら3月にオープン戦デビューすると、甲子園で2安打。数試合限りの「お客さん」ではなく、そのまま1軍にとどまった。矢野燿大監も「見てみたい」と開幕直前にもかかわらず、1軍戦力になるか本格的な見極めに入った。

臆せず初球から強振するスタイル。追い込まれても変化球に食らいついてヒットゾーンにもっていく精神力の強さは、育った環境が下地になっている。

恩師が明かす「実はびびりです」

出身は三重県。中学時代は津ボーイズでプレーした。恩師である松本直也監督(49)は同チームの方針を明かす。

「津ボーイズは強気がキーワード。絶対に引かない。追い込まれて見逃し三振する選手じゃなくて、追い込まれても強気。もちろん、守備でも強気。チームとしても強気です」

心臓に毛が生えたようなプレーを高校でもプロでも見せているスラッガーだが、内面は普通の中学生だった。メンタル的に特段強いわけではなく「実はびびりです」と恩師は言う。

前川は弱い自分にムチを打ち、成長につなげてきた。筋金入りの負けず嫌い。強豪の津ボーイズの中では前川よりセンスがある選手、打球を飛ばす選手もいたという。それが悔しくて仕方なかった前川は努力を重ねた。

やらされる練習は一切なし。強制的な休憩でない限り、わずかな時間を見つけては時間を見つけて筋トレをしたり、素振りをしたり。フリー打撃の順番待ちすらも無駄にしなかったという。

卒団後、越境入学した全国屈指の名門・智弁学園では1年春から4番を任された。1年夏の甲子園にも主砲として出場した。胸に刻んだ「強気」で、先輩たちと激しく争った。その後はスランプも乗り越えて、3年夏に甲子園準優勝まで上り詰めた。夢のプロ入りも果たした。

高卒野手のレギュラー少ない阪神

松本監督はこの冬、前川に、はなむけの言葉としてこう伝えたという。

「プロ野球は人気商売。自分の結果で稼ぎが変わる。1年目でも18歳でも堂々と勝負しなさい。あとで後悔するくらいなら、最初から強気で勝負しなさい。細く長くではなく、太く長くやってほしい」

前川は入団会見から一貫して「1年目から勝負」と言い続けてきた。2軍キャンプでアピールし、早くも1軍で高校生離れした技量を示した。

阪神では近年、高卒野手のレギュラーがなかなか現れない。大和(現DeNA)、北條史也、原口文仁、中谷将大(現ソフトバンク)らが一時期はレギュラーをつかんだが、定着までに至っていない。優勝を争った昨季メンバーも全員が大学・社会人卒だ。

今年もほぼ同じオーダーが予想される中、高卒ルーキーがどこまで食い込めるか。1年目のパフォーマンスは刮目(かつもく)に値する。

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