開幕戦でプロ初安打初打点を記録
ヤクルトの若燕たちが開幕戦で輝いた。スタメンに抜擢され4安打を放った長岡秀樹。強烈な代打アーチを見せた濱田太貴。そしてプロ初安打と初打点を記録した内山壮真だ。いずれも数年後のチームを支える存在として、高津臣吾監督をはじめとした首脳陣はもちろんファンの期待も大きい。
なかでも内山は高卒2年目の19歳。捕手というポジションを考えると──ロッテの高卒ルーキー松川虎生という存在はいるものの──2年目のこの時期に一軍のベンチにいることさえ驚異的だ。
初めて参加した一軍の春季キャンプでも目立っていた内山。キャンプ序盤の打撃練習では、柵越え3連発を見せた。古田敦也臨時コーチのもとで捕手面、打撃面の指導を受けたことも連日のように報じられていた。一軍キャンプを完走して迎えたオープン戦では17試合中16試合に出場し打率.273(33打数9安打)、1本塁打、5打点と結果を残した。
一方で守備面では課題も浮き彫りになっている。ワンバウンドするような落ちる球の処理に手こずり、失点を喫する場面も見受けられた。失点に結びついていないものの投球を捕球しそこねることも多くあった。コンディション不良で離脱した中村悠平と比べるとその差は歴然。攻守に渡ってすべてがうまくいったわけではない。それでも高津監督は内山を開幕一軍に抜擢した。
近年の高卒2年目捕手は打撃で苦戦
内山は開幕一軍に抜擢され、なおかつ開幕戦で適時打も放った。とはいえ高卒2年目の捕手だ。いきなり日本シリーズでMVPを受賞した中村からレギュラー奪取を求めるのは酷というもの。まずは打撃面で結果を残すのがレギュラーへの第一歩となる。
さて過去の高卒捕手は、2年目に一軍でどれくらい出場機会を得ていたのだろうか。現役の高卒捕手で、規定打席に到達経験のある選手たちの2年目の成績を調べてみた。なお栗原陵矢(ソフトバンク)は、年間10試合以上捕手で出場したシーズンがないまま外野手に登録変更されたので除外した。
やはり森友哉(西武)の突出ぶりが目立つ。森は1年目から41試合(捕手として24試合)に出場し打率.275(80打数22安打)、6本塁打を記録。2年目には早くも規定打席に到達している。しかしこの年の森は捕手登録ではあったものの、1試合もマスクをかぶっていない。指名打者と外野での起用だった。
その他の選手は打撃面で苦戦していた。田村龍弘(ロッテ)、近藤健介(日本ハム)、炭谷銀仁朗(当時西武)、坂倉将吾(広島)が打率1割台に終わっている。中村は打率3割を超えているが、安打数はわずかに2本だけであり参考程度だろう。また會澤翼(広島)、伊藤光(当時オリックス)、甲斐拓也(ソフトバンク)の3人は一軍での出場機会がなかった。捕手であれば30試合以上に出場し、打率2割を超えれば上々と言えそうだ。
オープン戦では遊撃の守備にもつく
他球団の高卒捕手を見ても2年目の段階では、少しずつ試合に出場しながら攻守ともにレベルアップを図っていくのが自然な流れだ。中村が復帰すれば、一軍ではなく二軍でマスクをかぶる選択肢も出てくるだろう。それに加えてもうひとつの選択肢がある。森のように捕手以外のポジションにつくことだ。
内山はオープン戦で遊撃手としても試合に出場した。その試合では打球も無難に処理し、センスの良さを見せている。もっとも星稜高時代に遊撃手の経験があり、まったくの未経験ではないということもある。正式にコンバートするかはさておき、可能性のひとつとしてありえない話ではないだろう。
ただ、簡単に遊撃でレギュラーを奪えるかというと、もちろんそんなことはない。新進気鋭の長岡がおり、西浦直亨や元山飛優もいる。それでも捕手一本より出場機会が増えることは間違いない。また、今シーズンは延長12回制であり、遊撃手兼第三(二)捕手は非常に重宝される。
春季キャンプの時点では考えられなかったが、オープン戦で遊撃手として出場したことによって”そんなことは絶対にない”とは言い切れなくなった。その他の選手起用の例もある。先発起用を明言されていて、オープン戦でも長いイニングを投げていた梅野雄吾が開幕後は中継ぎで登板した。それも緊急登板ではなく3試合とも、である。そういった経緯もあり、高津監督の起用法は正直、予測がつかない。
はたして高津監督ら首脳陣の頭の中で、高卒2年目の内山の今シーズンの起用法、そして将来像はどのように描かれているのだろうか。
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