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オリックス吉田正尚がこだわる「イエローバーチ」とは?令和初の三冠王へいざ出陣

2022 3/24 11:00大島大介
吉田正尚,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

リーグ連覇に向け、チームリーダーとして責任と決意

プロ野球は25日、セ・パ両リーグとも2022年シーズンが開幕する。昨季25年ぶりにパ・リーグの頂点に立ったオリックスは、1995、96年以来のリーグ連覇に挑むシーズンになるが、高い壁を越えるには、昨季18勝を挙げたエース山本由伸と3年連続首位打者を目指す吉田正尚の活躍は欠かせない。打のキーマン吉田正尚はオフに両足首の手術を受けており、万全の状態で臨めるかが大きなポイントになる。

開幕前、最後のオープン戦となった20日の阪神戦(京セラドーム大阪)。試合後、「出陣式2022選手トークショー」と銘打って開催された球場内でのファンイベントに、選手会長の吉田正尚が姿を見せた。

青学大の先輩で昨季の本塁打王・杉本裕太郎のほか、リードオフマンの福田周平、ゴールデン・グラブ賞を受賞した宗佑磨の主力3選手とともに参加。インタビュアーから開幕へ向けた心境を聞かれると、吉田正尚はこう答えた。

「楽しみと不安が入り交じっている」

規定打席に到達した入団3年目の18年から4季連続で打率3割をマーク。20年には自己最高の打率3割5分で初の首位打者に輝いた。今や押しも押されもせぬ球界を代表するスラッガーとなった左打者に、浮かれた様子はない。

「前年最下位から優勝した僕たちのように、パ・リーグはどこが優勝してもおかしくない。体の方はしっかり試合に臨める状態まで来ている。当然、シーズンに入れば違う緊張感や体の張りも出てくると思うが、1年間、きっちり戦えるよう調整していきたい」。その言葉には、チームの命運を握るリーダーとしての責任と決意がにじんでいた。

メープルとホワイトアッシュの中間にある木材「イエローバーチ」

昨年は、死球による右手首の骨折や脚の故障などシーズン終盤にアクシデントに見舞われ、18年から続けてきた全試合出場が途切れて110試合の出場にとどまった。2年連続首位打者のタイトルを獲得したとはいえ、満足のいくシーズンではなかったのかもしれない。

それだけに春季キャンプではじっくりとバットを振り込み、開幕に合わせて調整を続けてきた。オープン戦は8試合に出場し、24打数4安打(打率1割6分7厘)に終わったが、豪快なスイングは健在で手術の影響は今のところ感じられない。

吉田正尚と言えば、フォロースルーの大きなスイングから広角に打ち分ける打撃スタイルに特徴がある。高い打撃技術を支えるのは、筋力トレーニングで鍛え上げた強靱な肉体だけではない。安打を量産してきたバットには、人一倍のこだわりがあるようだ。

毎年、オフには契約を結ぶスポーツ用品メーカーが提携するバット工場に足を運び、自らの手で新しいシーズンに使う木材を選ぶのだという。材質は多くの選手が使っている硬質の「メープル」ではない。カバの木の一種で、メープルとホワイトアッシュの中間にある木材とされる「イエローバーチ」だ。

関係者によると、イエローバーチ材のバットは、吉田正尚が柔らかい打感(打った時の感触)を好んだことからメーカーの担当者が提案し、入団2年目から使い始めたという。

「職人さんが手作業でやるので、わずか数ミリを削る技術を直接見ることで思いも変わってくる。バットに対する気持ちは年々変わってきているので、自分に合うものを作りたい」。バットのしなりを使ってボールを遠くに飛ばす吉田正尚にとっては、手放せない相棒なのだろう。

あと38本で通算150本塁打

今季から、選手の顔とも言うべき背番号を34から7に変えた。背番号に関し、先のファンイベントではこう語った。

「もっと活躍して、浸透していけたらいいと思うし、新しい番号でいい数字を残せるようにやっていきたい」

吉田正尚は、個人成績について聞かれても、口ごもることがない。「打撃部門のタイトルは一つでも多く取りたい。それは今年も変わらないし、数字に関しては一番を目指してやっていきたい」

今季達成されそうな記録に、残り38本になった通算150本塁打がある。自己最多は19年の29本だが、区切りのアーチをかけた時、令和初の三冠王も見えてくる。

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