NPB記録は33試合、MLBは56試合
連続試合安打記録(Hitting Streak)は、MLBでは最も偉大な記録の一つとされている。ヤンキースの大スター、ジョー・ディマジオが1941年5月15日のシカゴ・ホワイトソックス戦から始まって、7月16日のインディアンス戦まで77日間に渡って記録した「56試合連続安打」は、アンタッチャブルな大記録だ。
これに続くのが、20世紀以降ではレッズのピート・ローズが1978年6月14日から7月31日までに記録した44試合。ディマジオの記録の偉大さがわかる。
NPBでの連続試合安打記録を見ていこう。記録した打者の通算打率とシーズン打率3割以上を記録した回数も載せる。
NPBでは1946年に阪急の野口二郎が記録した、31試合連続安打が長く最高記録だった。野口は投手として237勝、1942年には40勝を挙げたが、打者としても830安打を記録した「二刀流選手」で、1989年に野球殿堂入りしている。
この記録を野口の後輩の長池が25年ぶりに1試合更新、そしてその8年後に広島の高橋慶彦がまた1試合更新した。この年の高橋は22歳、レギュラーになって2年目、スイッチヒッターのリードオフマンとして55盗塁で盗塁王も記録している。
30試合以上の連続試合安打は6例しかない。いかにこの記録の難易度が高いかがわかる。
46試合連続を記録していたイチロー
21世紀になってからは、2015年の秋山翔吾の31試合連続安打が最高。32試合目の記録がかかった7月15日の楽天戦では、無安打のまま最終打席になった延長10回、四球を選び勝利を呼び込んだ。個人記録よりチームの勝利を優先したと称賛された。なお秋山の記録は左打者では最高。この年秋山はシーズン216安打のNPB記録も作っている。
ところで、連続試合安打の上位記録を見ていくと「6月」が絡む期間にこの記録を達成した選手が多いことに気が付く。MLBのディマジオ、ローズもそうだし、NPBの27試合以上の14人のうち10人が6月の絡む時期に記録を達成している。開幕からしばらくは試運転の時期が続き、6月になると調子が全開になるからかもしれない。出足好調な打者がいれば、6月に注目すべきだろう。
安打と言えば史上最高の「安打製造機」であるイチローの名前が浮かんでくる。NPB時代は、1994年の23試合連続安打が最長。MLBでは2009年の27試合連続安打が最長だった。しかしイチローはNPBで4回、MLBで7回も20試合以上の連続試合安打を記録している。これもまた破天荒な記録だ。
実は、イチローはオリックス時代の1992年6月20日から1993年8月7日まで、シーズンをまたいで46試合連続安打を記録している。ただしファーム、ウェスタン・リーグでのもの。一軍と二軍を往復しながら、とぎれとぎれの出場で、この記録を作ったのだ。
ちなみに、MLB最高の56試合連続安打を打ったジョー・ディマジオも、マイナー時代に61試合連続安打を記録している。
新記録に期待がかかる吉田正尚
昨年は巨人の松原聖弥が球団2位タイの27試合連続安打を記録したが、この分野で新記録への期待がかかるのはオリックスの吉田正尚だろう。デビュー以来の記録を見ていく。
吉田は3年目の2018年に初めて規定打席に到達し、打率3割をマーク。この年は13試合と12試合の連続安打を記録したが、翌年は10試合以上は1回だけだった。
2020年は120試合制にシーズンが短縮されたのにもかかわらず、8月11日から9月6日までに24試合連続安打を記録。チームの大先輩、イチローの持つ記録を破った。だが、21年は11試合連続が最高。吉田は2年連続の首位打者を獲得したが、左足の負傷、死球による手首の骨折で2回戦線を離脱。記録は伸びなかった。
吉田正尚は当代一のアベレージヒッターであるのは間違いないところだ。試合に出れば安打が出る可能性は高い。しかし安打を打ち続けるためには、試合に出続ける必要がある。吉田が先輩たちの記録を抜くためには「怪我、故障なく毎日試合に出ること」が一番重要だろう。
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