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阪神・藤浪晋太郎が安定した理由「迷ったら立ち返る場所」とは?

2022 3/15 06:00チャリコ遠藤
阪神の藤浪晋太郎,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

不穏な立ち上がりも…見事に修正

まさに“圧投”だった。3月12日、中日とのオープン戦(甲子園)に先発したタイガースの藤浪晋太郎は今春最長の5回を投げて無安打無失点、6奪三振。若手主体とはいえ、相手打線を完全に封じ込めて見せた。

先に記しておくと本人の感覚は決して良くなかったという。「調子自体は良くなったんですけど。自分の中では考えながら投げている感じだったので」。事実、立ち上がりの先頭打者・岡林勇希にはフルカウントから四球を献上し、すぐさま二盗も決められ、無死二塁とピンチを背負った。

制球が安定しないまま、ズルズルと失点を重ねて早期降板。近年、そんなシーンを見ることも少なくなかった。ただ、この日は違った。

「いろいろ工夫をしてタイミングが(フォームの)合いだしたところもあった」。根尾、平田をスプリット、カットボールで連続三振に仕留めると、ビシエドも二ゴロでピンチを脱した。2回以降は抜けていた変化球も落ち着き出し、直球も156㌔を計測。相手はもう的を絞れなくなった。

右腕を脱力して前で振る

記者席からマウンドで躍動する背番号19を見ながら、春季キャンプ中に聞いた言葉を思い出した。

「今は立ち帰れる場所があるというか。これさえやっておけばというのがある」

長年、試行錯誤を続けてきたフォームの安定感が今年は違う。具体的には、右腕を脱力して前で振ることを心がけているという。上半身が力めば体が突っ込み、腕の振りが窮屈になってボールを操作できない。

今春初実戦だった2月5日の紅白戦も先頭の近本光司にボールが抜け四球を与えたがその後、乱れはなくなっていた。今回も「原点」に立ち返り、与えられた5イニングの中で修正に成功したことが好投につながったのだろう。

ローテ入りは決定的!開幕2戦目へ

「良い意味でだましだましというか、ごまかせた。良く言えば修正、その辺りがうまくできて良かった。ヒットを打たれなかったのは良いこと。良く捉えて次に向かいたい」

前回5日の楽天戦では配球が単調になったところをつけこまれて4回7安打5失点と炎上していただけに、開幕ローテーション争いという意味でも価値あるハイパフォーマンスだった。

2月から結果を残し続け、このまま3月26日の開幕2戦目(ヤクルト戦)での先発は決定的な状況だ。

「もうちょっと状態を上げたいのもある。結果は良かったですけど、良かったでは終わらないように、求めるものを持ってシーズンを迎えたい」。上がり目を口にする姿が頼もしい。節目の10年目が大逆襲の1年となる気配は漂っている。

《ライタープロフィール》
チャリコ遠藤 1985年4月9日生まれの36歳。本名は遠藤礼。関西大学から2008年にスポーツニッポン新聞社入社。2010年から阪神タイガース担当で2018年から「チャリコ遠藤」のアカウント名でTwitterで積極的に情報を発信中。フォロワーは2万8000人。趣味は海釣り。

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